むかしむかし 北の大地に アイヌの国がありました
アイヌの国の上には 風が流れ 雲がわきおこる「中空(なかぞら)の国」がありました
中空の国には 雨や 雪や 陽の光を 地上に届ける役目もありました
中空の国の上には どこまでも高く広がる「大空の国」がありました
青い青い空の世界です
ある日のこと 大空の国の神さまが 足もとの 中空の国を眺めていると キラキラ輝くものが目に留まりました
「何だろう?」 不思議に思い 大空の神が 中空の国へ降りて行きますと・・・
それは 中空の国の美しい女神「クナウ」だったのです
一目惚れした 大空の神は クナウのお父さんの「中空の神」に クナウをお嫁さんに欲しいと申し込みました
中空の神は つり合いの良い結婚を喜びました
そして クナウに 春までに 楡の木から採った糸で 嫁入りの晴れ着を織るようにと命じました
それからというもの クナウは 楡の木の皮を採るため たびたび アイヌの国へ降りて行くようになりました
行く度に クナウは アイヌの国の 美しい森や 湖や 野原が大好きになりました
そして 大空の国へいくのが 死ぬよりも嫌になりました
いよいよ明日は 嫁入りの日
クナウは 立派に出来上がった 黄金色の晴れ着を着て 別れを告げる為 アイヌの国へ降りて行きました
それっきり クナウは中空の国に戻っては来ませんでした
続く