さて 次の日 大空の神が クナウを迎えに 中空の国へ降りてきました
ところが クナウの姿がありません
大空の神は たいそう怒って 大空の国へ帰っていきました
そして ひばりを呼んで こう言いました
「 ひばりよ アイヌの国に降り クナウを探し出してくるのだ よいか 日が暮れるまでに戻るのだぞ!」
「かしこまりました」
ひばりは 小さな羽をせわしなく羽ばたかせながら アイヌの国へ降りて行きました
それっきり その日も 次の日も 次の次の日も帰って来ませんでした
大空の神は けもののテンを呼んで 言いました
「 テンよ アイヌの国に降り クナウを探してくるのだ よいか 日暮れまでに必ず戻るのだぞ!」
テンは 大きなしっぽを振り振り アイヌの国へ降りて行きました
そして その素早い動きで アイヌの国中を走り回り とうとう 国の端にある まだ雪の残った岩陰に隠れているクナウを見つけ出したのです
けれど クナウは テンと一緒に 大空の国へ行こうとはしませんでした
テンは「 クナウよ お前は神に背き 親に背いた罰として アイヌの国の草になるがよい 」と言って しっぽでクナウを叩きました
すると クナウの姿は みるみるうちに 小さな草に変わりました
そして その先に小さなつぼみがついたかと思うと それはふっくらと膨らみ 美しい黄金色の花がひらきました
フクジュソウです
春 まだ雪の残る大地に 誰よりも早く花ひらくフクジュソウは クナウなのです
一目でも早く アイヌの国が見たいと咲くのです
そして 人々に 春が来るよと知らせているのです
*** つづく ***