MONAのフォト・ギャラリー

写楽・・話楽・・・な日々

蕗の薹をいただく

2020-02-11 22:40:20 | 自然

ピンポ ~ ン  

は ~~ い ! 

インタホーンの画面をみると  Mさんだった 

Mさんは70代半ばの男性 私の元畑仲間で 夫の釣り友でもある 

急いで出ると Mさんは「  ハイ! これ・・ 」と 手にした袋を差し出した 

中を見ると フキノトウ   

「  もう そんな季節なのね ありがとう 」 

昨夜遅く 東京の娘の家から帰って来た私は きっと疲れ果てた様子だったのだろう 

Mさんは さりげなく「 どう? 」と訊いてくる 

「 娘が病気で ちょっと忙しくしてます 夫は 今 娘の病院に行ってるの 」 

Mさんは 一瞬 沈黙・・ 

そこに ちょうど 夫が病院から戻って来た  

「 ああ どうも・・ 」 

Mさんに挨拶する夫をつかまえ 私は さっそく「 どうだった? 」 

「 だいぶ良くなっていたよ 」 

良かった・・! 

ホッとする私に 

いつもは長話をするMさんだが 「 また! 」と帰って行った 


私が 数年前のMさんとの事を思い出したのは 夫から娘の様子を聞き終えた後 

手にしていた袋に これ何だったっけ? ああ フキノトウ・・ 

それを冷蔵庫の野菜室に仕舞いながらだった  


数年前のその時 Mさんは 私に話を聴いてもらおうと必死だった 

話は丁寧なのだが 主語から述語までが長い・・ 

この話は 何を目的として 何処に辿り着くのだろうと途方に暮れてしまう 

状況説明が延々と続いたが やっと 小銭入れ?を落とした事が分かった 

でも お金は大して入っていない 

( 細やかな描写が続く・・ ) 

小さなポケット?が 幾つか付いている 

そこに  大切なものが入っていた 

( それは何なの? ) 

・・・・・ 

( 何なの? )

・・・・・ 

(  早く言って! 気が狂いそう! ) 


「 大事な写真なんだ!」 

「 どんな写真?」 

( 私 グッタリ・・

「 娘の写真 」 

「 娘さんがいらしたの? 知らなかった・・ 」 

「 俺に似ない 目の大きな可愛い子だった 」

「 まだ若かったのに 死んでしまったんだよ 」

・・・・・ 

「 だから 写真は肌身離さず持っているんだ それを落としたのが問題なんだ  」 


幸いにも 小銭入れは 拾って下さった方が届け Mさんの元に戻った 

大事な娘さんの写真も・・ 

Mさんに こんな辛い経験があった事を この時初めて知った 

Mさんには息子さんもいるが だからといって 娘さんの死を癒されるわけではない 

きっと 生きていたら 今はこうなって・・ と思うだろうな 

一人の死は 周りの人の人生も変えてしまう 


なぜ こんな事を考えるかというと 

今回 私は 娘が死ぬのではないかと思った時があったからだ 


Mさんから頂いたフキノトウは その晩 天ぷらにした 

ほろ苦い 春一番の味覚

コメント (4)
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