ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

建長寺探訪記(その2)

2007-05-15 01:11:00 | 能楽

ご祈祷の時間が迫っていたので、巨福能の会場である方丈(龍王殿)の拝見は後回しにして、はやる心を抑えてまずは法堂(はっとう)に向かいます。建長寺には境内のずっと奥、山の中腹に奥の院とでも言うべき「半僧坊」という建物があり、そこにはお寺の鎮守である「半僧坊大権現」が祀られていて、建長寺でのご祈祷はこの半僧坊で行われます。ぬえは東京でのスケジュールの都合からこの日にご祈祷のお願いをしていて、半僧坊にてご祈祷を受けるつもりだったのですが、ところが ぬえが希望したその日は偶然にも年に二回の半僧坊の大祭の日に当たっていたのでした。この日ばかりは信徒さんが大勢集まるので、大祭の会場は半僧坊から離れて広い法堂に定められ、導師や式衆の方々もみなさん法堂での法要に大忙し。そこで 本来門徒でない ぬえのご祈祷も、信徒さんに交じって法堂での法要の中でご祈祷を受ける事になりました。

もう初夏の日差しの鎌倉で、だんだんと日が高くなるにつれて気温も順調に上る中、この法堂の中はひんやりとした空気に包まれて、上着を持ってきて正解でした~。はっくしょん。法要はやはり「般若心経」から始まりました。あまり重く用いることをしない宗派もあるそうですが、建長寺が属する臨済宗では根本的なお経なのでしょう。やっぱり「般若心経」は王道ですよね。今回の巨福能でも冒頭に「諷詠」として「般若心経」が唱えられます。

およそ30分ほどの法要を終えて、ぬえは信徒さんに交じって昼食を頂きました。巨福能の会場・方丈(龍王殿)に隣接する「得月楼」というところで頂いたのですが、これはとってもゆったりと広くて清潔な建物で、おそらくここが巨福能の際に併せて催される「奉納・生粉そば」が饗される会場にもなるのでしょう。どうも主催者からしてもこの おそばは自慢であるらしく、今回の催しの交渉や相談で頂くメールにも幾度となく「十割そばでうまいですよ」と言われるし、どうやら出演者の楽屋弁当もこの そばだそうで。おそばの昼食をお申し込みになった方はラッキーだったかも知れませんね~。

昼食では建長寺が発祥の地とされる けんちん汁も振る舞われて、幸せな気分な ぬえ。食後にようやく会場の方丈をゆっくり拝見する事ができました。





まず目に付くのは見事な唐門(重文)。門の内側から方丈の階までには白砂が敷き詰められていて、これが方丈の正玄関なのでしょうが、唐門は解放されておらず、参拝者は得月楼と共通の別の入り口から入場する事になります。この入り口から方丈の側面に至るのですが、方丈は広い座敷で、正面の仏間を除いた三方の扉がすべて開け放たれていて とっても開放的な雰囲気。巨福能当日は座敷の前方は座布団のお席、後ろ半分は椅子席(椅子に背もたれはなし)になるそうです。



座敷よりも一段高くなった仏間が舞台となりますが、幅は四間あるようですが奥行きはほぼ2間しかなく、その前に所作台のような台を並べて三間四方の舞台の広さを確保する、とのことです。すると。。囃子方やワキ、そして地謡はみんな畳の上に座るのですね。そりゃ楽だ。唯一ワキツレだけが板の上に座り、そして ぬえは。。半分畳の上で、半分は板の上で舞うのか。。うう。。未知の領域だ。

でも、ぬえは正面にあの優美な唐門を見ながら舞うのだな。これはまた贅沢かも。ぬえが目にしながら舞う景色はこちら!