ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

子どもたちの稽古@伊豆の国市

2007-05-20 01:26:08 | 能楽

最近、近況を書いていません。『隅田川』や建長寺、鎌倉についてとか、「翁附脇能」について考えていたら、どれも膨大になってしまって。。曲について考えるのは良い事だとは思うけれど、なんだか行き過ぎ感もあるなあ。まあ、ブログが「ウェブ日記」みたいに言われていたのは少し以前までの事だとも思うので、あんまりそこに拘泥する必要もないのでしょうが。。

もっとも、曲について漠然と考えていたような事も、いざこのようなところで書くとなると、やっぱりうろ覚えの事を無責任には書けないワケで、自分の中で曖昧な事を書こうとする際には、資料で確かめるクセはつきました。これは大きい。それと、やっぱり頭の中で考えているだけなのと、こういう場で書くのとは意味合いがずいぶん違いますね。発想が広がるし、思わぬ発見もある。また反面、こんな事ばっかり書いて、と、頭デッカチの舞台だと言われないように、と警戒もするから稽古も慎重になったりしています。

かつてニフティ・サーブのパソコン時代に両方向性だった書き込みもブログでは一方的にならざるを得ず(こんなコアな事ばっかり書いているから一方的なのは当然だけれど。。)、それじゃ、と始めたミクシイも、ニフティ時代の雰囲気とはちょっと違う。まだまだ能楽師として情報の発信の仕方は模索中ですが、パソコン通信のサービスが終了した時から一時ROM状態だった ぬえもようやくこのブログから社会復帰を果たしました。そして、再開してみると、やっぱり自分のためになるんですよねー。どうぞ模索中の ぬえを温かく見守って頂きたいと存じますー m(__)m

さて、このところの ぬえの周囲ではいろんな事が起こっておりました。地下鉄のエスカレーターでコケて左手の甲にキズを作ったり(『隅田川』で左手でのシオリが多出するのでビビッたけれど、公演はいまから2週間後なので、その頃にはなんとかキズも目立たないだろう、とひと安心。。)、ある公演でシテが体調不良になり、後見だった ぬえがもう少しでシテを代役するか!?という瀬戸際まで行ったり(結局シテが復調して無事に勤められました。ああ、良かった。)。

そして今日は伊豆の国市で真夏に行われる狩野川薪能のお稽古に行って参りました。この催しでは毎年「子ども創作能」を演じていて、出演者は(囃子方を除き)すべて小学生と中学生。地謡も含めてすべての役の指導を一人で行い、そのほかに薪能で ぬえが舞う玄人能(今年は『一角仙人』)の子方の稽古、それから建長寺の巨福能の『隅田川』の子方もここの子どもを抜擢してあるので、その稽古。さらに薪能に毎年参加して、いまは中学生になった子どもには創作能ではなくて、能の古典の曲にも挑戦させる、という ぬえのポリシーから指導している仕舞『東方朔』まで。建長寺の催しが近づいている今日の稽古は、なんと7時間半に及びました。なんせ昼食を摂る時間もなく、昼食の弁当は帰りの新幹線の中で夜の7時にようやく頂きました。。

それでも今日の稽古では子どもたちはみんな上達しましたね。創作能もようやく立ち往生する子がなくなって 、みんなそれぞれ自分の役に責任が持てるようになったみたい。仕舞も今日やっと形になりました。玄人能の子方も、前回の稽古以来それぞれかなりシッカリと自習をしてきていて、前回とは見違えるような上達ぶり。時間はかかっても、達成した彼らを見ると疲れも空腹も気になりませんね。もっとも帰りの新幹線では亡者のように弁当を喰らい、泥のように眠っておりましたが、ぬえ。(^^ゞ

また今日は ぬえの提案で、創作能の中で斬り組みをする武士役の子どもたちが身につける鉢巻を、その保護者の方々に作ってもらうようお願いしたのですが、保護者の方々は団結してくださって、あまつさえ稽古会場にミシンを持ち込んでくださった保護者までもあり。稽古の途中ですでに8人の武士役の子どもたちの鉢巻はすべて完成する、という離れ技まで見せてくれました。

この薪能では ぬえは毎年子どもたちにかなり大役を任せているので、毎年いろんなドラマが生まれます。公演の直前に涙する子どもも必ず出て、それでも ぬえは配役にはかなり神経を使っているので、彼らはそれを最後には克服して立派な舞台を勤めます。今年はどんなドラマが起きるのかなあ。。と思っていたら。。すでにそれは起こっていた。

でも、それはまだここでは言えないです。彼らも苦しんで、でも ぬえも一緒に苦しんで。。最後には一回きりの舞台を、ついに勤める事ができる。そこまで ぬえはおつきあいをするし見届けるけれども、その成果が出るまでは経過を公表する事はできません。。

どうぞこのブログの読者のみなさんも、ぜひ子どもたちの成功を祈ってやってください。。彼らが成功したとき、ぬえはこの場で誇らしく報告できるでしょう。がんばれ~~子どもたち。\(^^@)/