入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

    ’16年「秋」 (34)

2016年09月30日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

Photo by Ume氏(転載を禁ず)

 山は晴れてもよし、曇ってもよし、雨もまたよし。久しぶりに北アルプス、中央アルプス、そしてその間に乗鞍岳と御嶽山の独立峰を目にした。もう1週間もすれば天気は安定するらしいが、これだけ長期予報と実際の天気との違いに翻弄されたあとでは、明日雪が降ったとしても驚かない。
 雨や霧の天気に不満を言っているわけではない。ただ牧場管理の仕事もそうだが、外で仕事をする者にとっては、昨年や今年のようにこう雨の多い天気では、予定が立たなくなる。
 事実、里でも、あれほど見事な黄金色した多くの田の稲が、無残にも倒れてしまっている。肥料をやりすぎると生育し過ぎて稲が倒れやすいと聞くが、原因はそれとは違うようだ。最近は作柄よりもうまい米を重視する農家が増えてきている。大半は雨のせいで稲刈りが遅れ、稲が生育し過ぎた結果で、籾の中の米粒が割れてしまうことを心配する人もいるほどだ。
 
 I上殿、コメントの冒頭の部分は、これまで中高年の登山について書いてきたことへの反撥ですか。だとしたら、残念です。しかし、このことについては、考え直す気はありません。いくら「無理をせず、余裕を持って」などというお題目のようなことを耳にタコができるほど聞かされても、山岳事故の防止には何の効果もないからです。
 これからの時期、過去の遭難の記録が示すように、3千メートル級の山々においては天候、特に氷雨、霙、雪、そして風、による中高年の事故が大いに心配されます。それに対して例えば、「天候が不安な場合は、行動時間を予定の半分にする」といった具体的なことを助言するなら、それは一つの目安になります。そういう観点から、「落葉が始まったら、中高年(60歳前後、またはそれ以上)は森林限界を超える山域へは行くべきでない」と書いたのです。中高年が、中高年の登山について述べたのです。

  山小屋「農協ハウス」とキャンプ場の営業に関しましては、カテゴリー別の「H28年度の営業案内」及び「続・H28年度の営業案内」をご覧ください。


 
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    ’16年「秋」 (33)

2016年09月29日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


「クロよ、お前、何も考えてなどいないくせに、いかにもそれらしいふうをしているじゃないか」
「ズイブンな言い方ですね。まあそうですけど」
「昨日塩場で、塩をなめようとしたホルスの4番に、かち上げを喰らわしただろう。あれはお前の得意技か」
「アレ、見ていたんですか」
「相撲のかち上げは腕や肩を使うが、お前はその硬い頭で相手の首根っこにやったじゃないか」
「でも、アイツ、チビのくせに生意気なんすよ、違います?」
「塩を持っていけばいつもお前たち和牛だけで独占しようとする。ホルスはここで暮らすわずか4か月が、短い生涯の中で最良の時なんだと教えただろう。お前たち繁殖牛のように長生きができないんだ。ホルスで4,5年、お前たちが産む育成用の和牛はもっと短くて、大体2年と4か月だ」
「・・・・・・」
「もう山を下りるまでに1か月もない。もっと優しく面倒を見てやれよ。分かったな」
「ちょっと待って。でもそれって、みんな人間の勝手じゃない。一番残酷なのはあなたたちじゃないの。わたしの産む子はブクブクに育てられ、たったの28か月で人間に食べられちゃうなんて。あのホルスもさんざんに乳をしぼられ、2,3回子を産めばそれでおしまいだなんて・・・。ヒドーイ。優しそうなことを言って、あなたもそうなんでしょう。偽善者!」
「興奮するな、ワァー止めろ、オレは貧乏で牛肉は食べない、豚肉だけだ、ギャー」
 
 牛を見ていると、たまにこんな妄想が湧いてくる。妄想で済まない場合も、時にはあるらしい。
 

 今日も霧が深い。小鳥の声が霧の中からしばらく聞こえていたが、どこかへと去ったようだ。それにしても鳥たちは、こんなに深い霧の中をどうやってちゃんと飛ぶことができるのだろうか。いつもなら見える向いのコナシやヤマザクラも、今日は空白の中に隠れてしまっていいる。もう行くこともないアラスカの氷河で体験したホワイトアウトが思い出される。

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    ’16年「秋」 (32)

2016年09月28日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など



Photo by Ume氏(転載を禁ず)

 上ぼってくるとき、たった二日見なかっただけの沿道の風景にも、秋が一段とまた深まった感じがした。里ではあちこちの田で稲刈りが始まっていたし、オオダオ(芝平峠)を過ぎ、焼き合わせと来て、座頭沢や周辺の森を見れば落葉松はすっかり緑の色を失ない、全体にやわらかな浅葱(あさぎ)色に森の様相が変っていた。黄色く色付く前にすでにたくさんの葉を散らしたダケカンバの林は、大分スッキリとした感じになって、そのせいでクリーム色の樹幹がさらに目立つようになってきた。
 春先、そのダケカンバの林を流れる初の沢の源流で一人、水道管の補修をしていたときもそうだったが、今日も久しぶりに同じ場所でそのとき新しくした管の埋設作業をしていると、すぐ下から聞こえてくる渓を流れる水の音が、孤独な作業を慰めてくれるのには充分だった。
 もうそんなことをするのかと思うかも知れないが、凍結防止のため水道管を土の中に埋めたり、雪に流されないよう管を固定したりする仕事は、手間も時間もかかる。寒くならないうちに空いた時間を使って今から少しづつやらなければ、牛が下りればすぐに他の冬対策の仕事が待っている。
 まあ、こんなことを書いてみたところで、ここでの取水方法など誰も想像もつかないことだが、もしもそれを知れば、ただただ先人の知恵、努力、労力、忍耐に頭が下がることだろう。

 昼を過ぎて雨脚が強まった。9月は所によっては日照時間が平年の25パーセントとか。例によって気象庁は、その原因を明快に説明してくれてるが、肝心の予報ではどうだったのだろう。止まれ、雨も小降りになったようだしまたあの谷へ行って、短気を起こさず仕事を続けよう。
 

 ブログ「海のおうち、山のおうち」を読んでいたら、キシャヤスデを話題に取り上げていて勉強になりました。お二人とも変わらず元気で暮らしているようですね。二匹の犬の写真、笑っています。
 
 今日もUme氏のPH。こういう作品を見れば読者各位におかれては、秋の牧場へ足を向けようという気になりませんか。 山小屋「農協ハウス」とキャンプ場の営業に関しましては、カテゴリー別の「H28年度の営業案内」及び「続・H28年度の営業案内」をご覧ください。
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    ’16年「秋」 (31)

2016年09月27日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

                                       Photo by Ume氏

  日曜日から来て2泊し、晴れた朝、小黒川林道へ小さな自転車で下るという大沢氏を見送ったばかりだ。長雨の後で、崩落の危険のあるこの林道を行かせたくはなかったが、谷の両側はかつての御料林で、氏はこの機会に何としても見ておきたいという。研究者の執念を尊重するしかなかった。
 あの谷は本当に美しい谷で、これからの紅葉が楽しみだというのに、いつのころからか県外からのオフロードバイクと釣師の跳梁ばかりを許す谷になってしまい、それを嫌ってか、以前のように地元の人は通らなくなってしまった。
 「石堂越え」と「法華道」という二つの古道、深く切れ込んだ谷や沢、原生林、それに縦横に走る林道がある。今ではGPSなどといった便利な道具もあるけれど、しっかりと地図を見て読んで、そのうちに自然の奥懐を訪ねてみたいものだ。

 一つ誤解していた。入笠山の登山口にある駐車場には、「御所平峠駐車場」という標識があるが、耳触りがいいというぐらいのことで、どこぞかで耳にした地名を最近になって勝手に使用するようになったのだと思い込んでいた。ところが違った。
 O沢氏から頂戴した資料によれば、「信濃教育会諏訪部会」が昭和6年に発行した宮地直一の著書(書名不明)に「神使巡行地図」なるものが載っていて、それを見ればすでに現在の登山口が御所平峠と表記されている。かなり以前の資料だが、だからと言って、これが正しいというわけではない。他にも、怪しい表記が目に付く。
 古い資料とくれば、神足勝記が明治17年に入笠周辺を踏査した時の記録では、「御所平」という地名は、本家・御所平峠を伊那側へ少々下った法華道周辺及び隣接する現在の入笠牧場の一部を指して言っている。また、この資料では「入笠山」が「雨請岳」となっていたことは、すでに書いた。
 どうやら山の名前は「入笠山」で落ち着いたが、御所平および御所平峠については二カ所存在していたことになる。北原のお師匠が忘れられかけていた古道復活の意気に燃えるまでは、”本家”の方は人の行き交う場所ではなかったから、それで格別不都合だったり、問題にはならなかったのだろう。
 現在は国有林となっているこの辺りの山林の元帳は、明治2,30年ごろの測量によるという。三角点でも見付かればよいのだが。

 久し振りにUme氏の作品、決まってます。

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    ’16年「秋」 (30)

2016年09月26日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 このブログにもたまに登場する、畏敬するあの人から電話がかかってきた。
「お前、昨日はエライ奥歯に物が挟まったようなことを書いていたな」
「それでござる。あれでもかなり気を遣ったのでござるが・・・」
「まあ、たまにはいいだろう。オレもあのことについてはかなり気になっていた」
「そうでござったか、どうも憎まれ役ばかりが回ってくるのでござる」
「そんな山の中のことなど、誰も詳しいことなぞ分からないからな」
「昨日からO沢氏が来たので、明治以降のこの辺りの林野について、またいろいろと教えてもらっているところでござる」
「ああ、例の神足勝記や御料地の研究家だな」
「そうでござる。ブログでも、また分かったことを随時書きます」
「分かった。大いに楽しみにしている。ところでKM子さんから貰ったクロッカワはどうだった」
「それでござる」
「それに、村祭りに食べる鯉料理にちなんで、TDSが一句ものしただろう」
「それらについては、本日お答えするたすもりでござる」

 先日ブログで、この辺りの人は村祭りに田圃で育てた鯉を料理して食べる風習があると書いた。TDS君の助言を受けてのことだが、そのとき次のような句が添えられていたにもかかわらず、作者が誰か分からずとりあえず保留にしておいた。

 銀鱗の ときどき混ざる 落とし水  ――TDS

 S氏とKM子さんのくれたクロッカワの、その奥ゆかしいまでの苦み・・・、熱い酒に運ばれて、深山の秋が口中から身体中に広まっていった。「神よ!」と3回ほど叫んでしまった。糠漬けもおいしゅうございました。

 花小金井のSさん夫妻名でも、コメントをいただいた。ありがとうございました。「新しい家族6人」、羨ましいほどでした。またお出掛け下さい。
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