入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’24年「春」(58)

2024年04月30日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 午前3時ごろだったと思う、昨夜はかなり激しい雨音がして目が覚めた。今は止んでいる。咲き出したばかりの桜の花が気になるが、外の気温は10度を超えている、まずは花の盛りはこのまましばらく続くだろう。

 霧がゆっくりと流れていく。そうかと思って見ていると、急にそれが消えて視界が明ける。そういうことをさっきから何度も繰り返している。静かだ。鳥の声もしない。霧が晴れると、まだ芽吹き前の白樺の樹幹だけがよく目立つ。
 あっ、いまウグイスの声が聞こえた。
 
 連休の前半が終わり、昨日で人々は短い山の春を味わい帰っていった。きょうはもう、ここには誰もいない。明日からまた予約者が来るが、ノートのきょうの欄には誰の名前も載っていない。
 
 20年以上も前に一緒に働いたかつての若い同僚が28,29日、友人2名を伴い来てくれた。いや、若かった彼も今では50代、丁度、当時の自分の年齢になっていて、カネダワシのようなひげを生やし、元気そうだった。
 手先の器用な男で、本当はハンドバックなどを自主製作する工芸家・クラフトマンになりたかったようなのだが、なかなかそう簡単にはいかないようだ。ハーレーダビッドソンなどに乗りながら、地味な夢を見ている。
 写真は、土産に持って来てくれた彼自作のバックだ。実によくできている。この年齢、この仕事、こういう物を持ち歩く機会は少ないだろうが、大切にする。


 雨がまた激しく降ってきた。昼ごろには上がるようだから、午前中はこのまま外に出ないで中の仕事をすることにした。
 きょうで4月も終わる。上に来て10日、日の経つのが早い。すでに連休の後半の予約は締め切ってあり、「混雑させないキャンプ場」としてやっていきたい。

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 本日はこの辺で、

 
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     ’24年「春」(57)

2024年04月29日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 牧場内の指標木にしている山桜の花が咲いた。二日ほど前のことだ。落葉松の林の色も日毎に薄緑の色を塗り重ねるようにして、その色合いを濃くしつつある。森も草原も、冬の間の生気のなかった風景に代わって、新しい季節の息吹を感じられるようになってきた。
 これから約1ヶ月半くらいか、梅雨の始まるころまでの自然は美しい変貌を続け、その印象は生成と衰亡と真逆ながらも、1年の内では秋と競って最も見る者の心に沁みる。中でも、新鮮で多種多様な緑の色が一際目立つ。

 登山口へ行く道と、小黒川林道方面に分かれる三叉路の少し手前、右側の放牧地の真ん中に大きな落葉松が1本生えている。この老いた木が、この先の自らを案ずるかのように実生を撒き散らし、いつの間にか成長しかけた幼木が気になるようになってきた。恐らく、今後ここへ牛を出すことはないだろうが、放っておけばやがてそれらはさらに増え、背を伸ばし、草原は姿を消す。
 徒労のようなものながら昨日は刈り払い機とチェーンソーを使って、これらを始末した。今や無用に近い草原の同じく無用な老木の運命と、牧場の行く先とがどうしても重なる。

 便利と快適、それが牽引役となり、洞穴の暮らしからわれわれはここまで来れた。その恩恵は計り知れないが、より良きための評価がその過程で充分に行われていたかは分からない。というよりか、無いものをねだるようなもので、われわれにはそういう検証能力が元々備わってはいなかったかも知れない。
 この周囲の自然や牧場にも言えるだろう。

 今朝は早くから鳥の声がしていた。あの小さい生き物が、空を飛び、美しい声で歌う。正体は分からないままながら、それはそれでいい。仕方ない。
 灰色の樹幹からしなやかな枝を伸ばしたあの木も、目を吹き出したばかりながら、その正体を明かしてもらっていない。学ぶことにあまり熱心ではなかった18年と言えるだろう。

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 本日はこの辺で、

 
 
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     ’24年「春」(56)

2024年04月27日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 きょうから連休が始まる。今朝6時45分の外の気温8度、曇り。どうやら雨にはならないようだが、休み前半の3日間は生憎なことに好天を期待できそうもない。
 
 牧場から眺める遠くの山々は、北アも中アもかなりの量の残雪が目を惹く。かつてはあの輝かしい純白の峰々に憧れて都会から出掛けていき、短い熱狂や幸福や失意の日々を過ごした。そして、行く時よりか重いものを背負って再び都会へ帰ってきたものだ。新宿駅や上野駅に列車が滑り込むころには「旅人」という職業があればいいと、何度思ったことか。

 誰しもが自由に憧れる。しかしそれを手に入れることができた時、その無限大の広漠とした先に当惑し、結局は途方に暮れて何かに束縛されるまでは安堵できない。
 わが生涯においては、恥ずかしながら1年半ほど失業したことが3回くらいあった。それに、つい先日終わったばかりの5か月の「冬休み」を、これまでに17回経験してきてそう思う。
 今は古来稀なる年齢も過ぎ、炬燵の虜囚の身に安んじられるようになったとはいえ、所詮「小人・凡人」のできることは高が知れている。「不善をなす」ことすら難しいと分かった。多くの人にとって、人生はそんなものでござる。

 T君は連休の混雑する前、愛妻を連れて北海道へ行き、喧嘩ばかりして帰ってきたという。恐らくその実態は対等な喧嘩というよりか、奥方の尻に敷かれ、夫たる身で連日教育的指導を雨あられのように受けていたのだろう。ご苦労様。さぞかしいい思い出になっただろう。ん?

 年に何回か訪れる短い自由を尊び、円安にめげずに勇躍機上の人となるもよし、ささやかな家族慰安を海辺の宿で過ごすのもよいだろう。あるいは、一流の山人になったつもりで、単独の山歩きをクマに怯えながら楽しむのもよしだ。
 いずれにしても、ほどほどの自由を手にした幸福な人たちで、列島は賑わう。ここへもそんな人たちが来るのだろう。

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 本日はこの辺で、明日は沈黙します。

 
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     ’24年「春」(55)

2024年04月26日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 霜が降りた。午前6時の気温0度、薄曇り。4月に零下を下回ることはそれほど珍しいことではないから、驚かない。水道の水は流しっぱなしにして、こうした急激な気温変化に備えるようにしている。
 そういえば、昨夜の8時ごろ鹿の様子を見に外へ出たら、春とは思えないような澄んだ夜空に、満月に近い月が丁度権兵衛山の上に昇っていた。
 鹿の姿は1頭も目にしなかったから、彼らもこの気温変化を予測できていたのだろうか。

 いや、1頭だけ見た。死んだ姿で、かなりの部分がすでにカラスやトビに食い荒らされた屍だった。下の初の沢の大曲がりの手前で、その近くで足を痛めた親鹿が昨春に産んだであろう2頭の小鹿を連れて渓から上がってきたところを見ている。あの場面では、逃げなかったというより、そうできなかったのだろう。
 そして何らかの原因で亡くなった。

 鹿はあの勢いで藪の中や、急な斜面を下っていく。足を挫いたり、鋭い木の枝で大きな目を突いたりすることはないのかと思ったりするが、そういう鹿にはまず出会わない。小鳥にしても、よくあの複雑に伸びたコナシの枝に羽を傷めずに搔い潜って行けるものだと感心する。
 しかし実際はどうなのだろう。われわれの知らない所で多くの動物が怪我をしたり、それが原因であの鹿のように命を落としているのかも分からない。人間だって世界中のどこかで、たくさんの生命が失われ、あるいは奪われている。

 以前、露天風呂の漏水を調べていた時、煙突を支える4本の針金のうちの1本にアリが登っていった。風呂釜には火が点いていたから、それ以上いくと火傷を負うぞと思いながら見ていると、案の定煙突近くから落下した。その場所は炬燵板程度の広さの釜の屋根だが、ここも炎熱地獄で、しかもアリにしたら野球のダイヤモンド並みの広さである。どこへ行けばいいのか分からずうろたえているように見えた。
 それで、まだそれほど暖まっていない風呂の水をかけてやった。その後アリは無事に地上に着地できたかは分からない。
 あんな小さな生き物たちにとっても、自然界は危険に満ちた世界なのかも知れない。その危険な対象には、当然ながらわれわれ人間も含まれている。

 混雑させないキャンプ場ながら、まだ連休前半の予約は大丈夫です。お早めに。
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 本日はこの辺で、

 
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     ’24年「春」(54)

2024年04月25日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

    
 朝霧が流れていく。コナシの枝に付着した無数の水滴が、日を浴びてキラキラと点滅しながら光る。時折、そんな静かな朝をキジの鋭い声が切り裂くように破る。
 外気温は午前7時の段階ですでに10度を超えた。同じ10度でも、やっとそこまで達したという場合と、これからまだまだ上昇していくというのとでは温度感が違う。当然今朝は後者で、窓を開け、鋭い朝の光をレースのカーテンで防いでいても、外気の暖かさが伝わってくる。
 コナシばかりか濡れた牧草も水蒸気を盛んに吐き出している。別の方角から聞こえていた鳥の声が、第2牧区の林の方に移ったようだ。



 昨日の午後、天気が悪いのできょうの予定を前倒しして里へ下った。連休中に行われる集落の行事には参加できないため、その穴埋めに準備の手伝いをするつもりだったのだが、すべて済んでいるから心配しなくてよいとのお達し、その言葉に甘えて、再び帰ってきた。
 
 写真は、庭の半日陰に咲いていたヤマシャクヤク、TDS君とカタクリ峠へ行った帰りにムラカミ君宅へ立ち寄り、その際に頂戴した野草だ。ちゃんと根が付いて、主不在の陋屋の一隅をミヤコワスレと一緒に飾ってくれていた。

 不思議なもので、山で暮らすようになってまだそれほど日が経っていないというのに、すっかり里は遠くなった。折角帰ったのだからその日ぐらいは家に泊まり、風呂にでもつかり山の疲れを癒そうと考えても良さそうなものだが、そういう気がしない。自分でもこの山への義理立てする気持ちはよく分からないでいる。
 
 アンテナのせいらしいがBSチャンネルが見られなくなって、ウクライナやパレスチナばかりか、テレビともご無沙汰したままだ。世の中とは縁遠くなるも、目のためにはその方がいい。
 まだ身体が肉体労働に慣れていないため疲れるし、風邪の名残りもあるから、寝るというよりか身体を安静にしているために8時を過ぎれば床に入る。
 昨夜は真夜中に目が覚め、1時間ほどビールを飲んで起きていたが、再び浅い眠りを繰り返し6時半ごろに起きた。
 訪う人もなければ恐らく、山の暮らしはこんなふうになるのだろう。

 混雑させないキャンプ場ながら、まだ連休前半の予約は大丈夫です。お早めに。
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