入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’22年「春」(21)

2022年03月31日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 ようやく、春らしい陽気になった。きょう、TDS君とM君と3人で予定通り例のカタクリ峠へ行ってきた。しかし、撮った写真はこんなもの2枚だけで、ここで使うつもりでいた写真のことをすっかり忘れていた。1枚目の写真は、前年の大雨でこれより先に進むのを諦めた際に記録として撮ったものだ。
 やむなくいったん里まで引き返し、帰路に予定していた林道を逆方向から向かってみた。今年は残雪が多く、まだ無理だろうと言いながら目的地へ着いたら、2枚目の写真のように律義な山野草が落ち葉の中から顔を出したばかりだった。



 帰りには、雪の残る林道の脇に蕗の薹の群落を見付け、これにも大いに喜んだ。(3月30日記)

 気が付いたら、3月もきょうで終わってしまう。この月は日の光にも季節の新しさ、初々しさを感じたが、4月ともなればその新鮮さにも慣れっこになるような気がする。
 昨日訪れた西山の裏側は、山肌こそまだ冬の名残を見せていたが、三方から落ちてくる尾根の広大な空間に、まるで集中したかのように暖かい日の光が満ち溢れ、灌木が主体の落葉樹はまさにこれから芽吹きが始まるばかりだった。清流は岩を噛み白濁し、時に速く、時に緩やかに流れ、冷たさが薄れ見る者を爽快な気分にさせてくれた。
 それがはしなくも3月との別れとなり、きょうは雨でも降りそうなすっきりとしない天気だ。

 入笠ばかりにしがみつき、他の土地へ出向かなくなっていた。ところが昨日は、どこにでもあるような自然の中でその良さをしみじみと味わった。他方その前日には、地域に充分貢献したはずの萱野高原の見捨てられたような侘しい建物も見た。
 もしあそこが何もないままだったなら、訪れた人はあの自然、眺望に感動し、満足して帰っていくだろう。ちょうど、われわれが昨日そうであったように。自然のままが一番いいと分かっていても、15年間の愛着が嵩じて入笠一帯には矛盾した思いを依然として持ったまま、整理し切れずにいる。

 一昨日は、山裾に小さな峠を含む気分のいい散歩道を見付けた。その先の桜の木がたくさん植わった小さな公園では、出くわした春休み中の2名の少女と言葉を交わした。
 牧場の仕事が始まるのもついに1ヶ月を切り、今年は入牧までの準備がかなり大変になるし、撮影の話もすでに来ている。畜産課にも人事があって、親しく、頼りにしていた課長も移動になるという。牧守の人事はなく、先日契約を終えたばかりだ。
 本日はこの辺で。
 
 


 
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

     ’22年「春」(20)

2022年03月29日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 毎年のことながら、各地から桜の開花が伝わってくるようになると、人々は梅の花のことなどすっかり忘れて新しい季節の象徴にさっさと気が移るようだ。そして花が目的とは思えないような人たちまでがぞろぞろと、各地の名所と言われる場所に現れて、covid-19も怖れずに狂騒が始まる。
 信州はようやく梅の花が満開になったばかりで、まだこの花を慈しむ気持ちの方が強い。「探梅行」などという言葉はいかにも早春の風情を感じさせると思うだに、この花が桜の前座のように扱われるのはどうも釈然としない。早くもはらはらほろほろと散り始めた梅の花を眺めながらそんなことを感じる曇天の今朝である。
   
   観梅の常陸の雪に泊(は)てにけり  西島麦南
 
 さてさて、きょうも格別な予定はない。先程、この天気のせいだと思うが、カタクリ峠へ行くのは中止と決まった。となれば、午後に散歩に出る以外には、格別予定もない。冬の星座を眺めるためと、人目を避ける意味で散歩は夜を専らにしていたが、最近は明るいうちに歩くようになり、そろそろ順路をもっと山付に変えた方が良いかも知れないと思うようになってきた。きょうはそんなことも考えながら歩いてみよう。
 今つい「カタクリ峠」などと言ってしまったが、勝手ながら今後はこの独り言ではそう呼ぶことにしようと思う。この峠のある尾根は経ヶ岳から北方に延びていて、近くには確か「霧沢山」とか「楡沢山」などという洒落た名の山もあるが、このことを地元、北オイデのM君に話したらどう思うだろうか。そう案じてTELしてみたが、きっと野良にでも出ていたのだろう、応答はなかった。
 長かった冬ごもりから解放され、田畑に人の姿が目に付くようになってきた。

 散歩の途中、ほら口にある「罔象女命」と彫られている碑、子供のころからここを通る都度に気になっていた。その後、神代の時代を旅していて神様の素性を含め、この読み方を一度は覚えたはずなのに、いつの間にかまたすっかり忘れてしまった。「みずはのめのみこと」と読むらしいが、こういうことが最近はよくある。
 呟く本人は、自分では認知症を知ることができなくても、こうやってPCの操作をしていれば誤操作が増えて、それで分かるかも知れないと思い、かすかに期待していた。そしたら、このごろはPCの方が先に認知症の恐れを見せ始めた。
 それとも、勝手にそう思っているだけで、本当はすでに認知症を発症しながら、それをPCのせいにしているだけかも分からない。牧場へ行ったら、牧守が牛と一緒になって「モウ、モウ」と吠えていたなんて、ムー。

 これ以上おかしなことを呟くようになったら、教えてくだされ。本日はこの辺で。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

     ’22年「春」(19)

2022年03月28日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など
 

 朝から激しい風の音がして、外へ出掛ける気にならない。昨日は風も比較的穏やかだったから、先週に福与城まで散歩した折に気になっていた萱野高原まで車で出掛けてみた。標高1500㍍、入笠牧場よりか2乃至300㍍ほど低いが、雪はなかった。
 まずはいつものように経ヶ岳が目に飛び込んできて、さらに眼下には伊那盆地の底を光る天竜川が蛇行しつつ見えていた。この川を中心に東西から幾筋もの川が流れ込んできて扇状地をつくる、その天と地の広大な眺めはふる里の遠い過去から遥かな未来へと繋がる懐かしさであり、この先への信頼であるとも思えた。
 隣接する町営ホテルも含めキャンプ場はまだ営業前で、設備の整った炊事場や他の施設も椅子やテーブルが乱雑に放置されたままだったり、取り壊された小屋の木材が捨て置かれたりと、閑散というよりかも早春の緑の乏しい風景をさらに殺伐とさせて見せていた。駐車場には県外車が1台と、恐らく地元の車だろうがもう1台が停まっていた。
 ここもできたころはそれなりに賑わった。それから半世紀以上が経って経年劣化も目に留まる。果たして今も昔しのような盛況さがあるのだろうかと、つい思ったりした。

 帰路は、高原の裏側の山道を下った。日の当たり方が少ない渓にはまだ所々に融けかけた雪が残っていて、紅葉湖(もみじこ)に下ると、ここにも人の気配はなく、芽吹きを控えた山は眠りの中にあった。
 小太郎も、HALも、キクもここに連れてきた。広い屋外の催し場に誰もいないのを確認してから自由にしてやると、一瞬たじろぎ、やがてどれもが猛然と走りだしたものだ。小太郎が死んで15年になるのか、キクが冬の入笠で消息を絶って7年、そして一番長生きをしたHALも亡くなってやがて2年が経つ。
 犬のことが先になってしまったが2日前、もう命日に東京へは行かなくなってしまったが、形見の杖に梅の花を添えたばかりだった。この季節の重い記憶が、悔いが、夕暮れの湖畔の風景と重なった。



 カタクリの葉だけが今年も片葉のまま生えてきた。明日、もしきょうほど風が強くなければ、TDS君と例のカタクリの峠を訪ねることにした。
 先程帰った彼の話だと、先述した萱野高原の町営ホテルは、耐震及び老朽化対策のため今年は営業せず、さらに今後についてもどうするかは未定だという。

 Sひろさん、コメントありがとう。総額で約2億円です。M田さんも、活躍されていますか。海老名出丸さん、Mさんにも感謝。本日はこの辺で。

 



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

     ’22年「春」(18)

2022年03月26日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 週末は天気が崩れるとの予報で、昨日も昼間散歩に出た。往路は少し距離を伸ばして福与城を訪ね、帰路は風が強かったので天竜河畔に出ずに県道を歩き、池火神社を通り、福島合社にも立ち寄り帰って来た。一昨日に続いて歩数は約1万2000ほどになっていた。
 それにつけても昨日も呟いた鹿頭行列、今年はその当年となる。片道でも5㌔近くに及ぶ、これは気儘な散歩とはもちろん異なり子供ばかりか、引率する村役にとっても、結構大変な行事だと改めて思った。

 伊那市の市報が届いた。「令和4年度の特徴的な事業」という項目に、しんわの丘ローズガーデン整備事業6000万円、鹿嶺高原テラス設置工事2800万円、馬の背ヒュッテ購入8000万円、戸台口観光拠点整備2400万円(馬の背ヒュッテ以外は端数切捨て)が記載されていた。
 これには複雑な思いがした。15年の間入笠牧場と周辺のことに関わってきたつもりだが、その間にたった1本の道標たりとも、行政が設置してくれた物はない。ウン千万円の話ではないのだ。
 折角始めた一般市民が参加する入笠から鹿嶺までの遊歩行も、いい企画だと思っていたらいつの間にか行われなくなってしまった。星空観察会はすっかり他所にお株を取られてしまった。呟くのを迷ったが、テイ沢の丸太橋の架け替えも、実際にできるかどうかはまだ確実とは言えない状況だ。
 
 いや、行政の関与が全くないわけではない。今年はいつになるか分からないが、4月の終わりころには除雪が行われるだろう。オオダオ(芝平峠)までの林道も整備され大分良くなった。さんざんすったもんだした登山口にある古い山小屋の件も、泣いた人と笑った人がいて、一応の解決を見たようだ。一人でできるあまり意味のない年一度の缶拾いも、開山祭前に市と農協とが一緒になって続いている。
 何もしてないと言えば、それは正しくない。特に、市の職員で構成されている「伊那フイルムコミッション」の種々の撮影支援も、牧場経営に資するところ大である。
 牧場は伊那市が地主であっても、上伊那農業協同組合が管理運営している。だから、それぞれの守備範囲がはっきりとせず、遠慮し合っているのかも分からない。それでも、しかし、こういう数字を目にすると、普段のささやかな個人の努力など全くの蟷螂の斧でしかない、という気持ちに陥り情けなくなる。嗚呼。

 とにかく、せめて基本的なことはしっかりとやって、ここはあまり商業的な匂いのしない、少し変わった、自然の豊かな牧場であればいいと・・・、またいつもの強がりを、きょうも言って終わるしかないのか。
 
 冬の終わるころには、この瀬澤橋の上の夜空に北斗七星が立ち上がるように見えていた。季節は巡る。昨日は福与場へ行く途中で、牛の声も聞いた。
 本日はこの辺で。明日は沈黙します。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

     ’22年「春」(17)

2022年03月25日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 昨日は久しぶりに昼の散歩に出た。春彼岸が24日ごろまでとか、それでいつもの道順をとらず、夜間も避けて、4軒ほどの墓参りを済ますことができた。両親、先祖の眠る墓もあれば、友人、親戚の墓もあり、それぞれが別々の墓所にあったから、枯草の中に少しづつ緑の色が加わりかけた畑中の道を、そうした人々のことを思い出しながら歩いた。
 風が強く、西山はまだ冬のままだったが、家の中にいて炬燵に入って巡らす雑念とはやはり違って、春の息吹の中で相手にするあれこれの思いは重いばかりでなく、快くもあった。

 ふと思い出して、「でんでん山」へ行ってみることにした。その場所は散歩のほぼ中間、折り返しにあたる福与(ふくよ)という集落にあって、夜間に人目に付いてはよくないと、これまで控えていた所である。
 この場所はわれわれの集落から隔年で、稚児が鹿の角を模した被り物をして、南宮神社へ参拝する際に必ず立ち寄らなければならない場所になっている。南宮神社とはこの辺りでは最も大きな神社で、諏訪大社との関係が深い。
 事の起こりはその昔しの大干ばつに繋がる。1558年まで遡るが、長期の日照りに民百姓が困り果て、それでこの地を治めていた箕輪左衛門亮頼政(みのわさえもんのすけよりまさ)という人が南宮神社に雨乞いを頼んだ。
 すると、有難いことに願いが叶い、慈雨に恵まれたのだという。それでお礼に75頭だかの鹿を奉納したことが契機となって、以来子供に鹿の代わりに鹿頭に似せた姿の衣装を身に付けさせ、参拝する行事が今日まで続いているのだと、これが初めて訪れたでんでん山の案内板の説明である。
 出発地のわが集落にある池火神社は、神社とは名ばかりで今では小さな祠が残るだけだが、その氏子であったから、このくらいの知識は子供のころから聞かされて知っていた。
 武士以外の者が帯刀するなどご法度の時代でも、この行事だけは特別に許された村役が、稚児行列を率いて5キロ以上の道を行く。その途中に「でんでん山」という山と言うよりか小さな広場があり、行列は今でもここで福与の人々に迎えられるのだ。

 また入笠を引き合いに出すが、この山も昔しは伊那の人たちからは「雨乞い岳」と呼ばれていた。それを証す古い資料もある。また、守屋山は雨乞いの山としてこの辺りではつとに有名である。
 灌漑設備も不充分であった時代なら、干ばつは今よりか余程深刻で、水争いなども当然起こったに違いない。そういう状況では、神に祈るしか人々には方法がなかったのだろう。どこかの村や地方で雨乞いの効果があったと聞けば、同じことをやってみる。そうやって、「雨乞い岳」は各地にできたのではないだろうか。
 今では忘れられた存在であるが、牧場に残る「雷電様」の祠も、江戸時代後期に芝平の人たちが雨乞いのために作ったのだと、すでにここで何度か呟いた。
 本日はこの辺で。
 
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする