入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’22年「冬」(6)

2022年11月09日 | 入笠牧場からの星空


 皆既月食と同時に惑星食が起きるのは442年振りとかで、それほど期待せずに見ることにした。それというのも、惑星食に関しては望遠鏡を使わなければ、その様子を観測するのは無理だろうと思っていたし、ならばなぜ望遠鏡を使おうとしなかったかと言えば、食の間が長く、またその現象をカメラに写すことができればまだしも、ただ眺めるだけならそこまですることもないと考えた。
 
 月食が始まったのは6時9分だったか、その少し前には下からも連絡が来た。新味の豚汁を作りながら双眼鏡と携帯電話を用意し、さらに羽毛服、ウイスキーも準備しておいた。
 6時ごろに外へ出ると、もうすでに月は山際よりも高くに赤銅色の姿を見せ、それは、まるで紙風船が赤い光を発しながら闇に浮いているようだった。
 ピンボケの写真では分からないが、思っていたよりもいい表情をしていて、さらにカールツァイスのレンズがその姿をより鮮明に見せてくれた。第1牧区へ上がるまでのことはなかった。
 

  Photo by かんと氏

 オリオン座と共に、それを囲むように見えるバーナードループを狙った写真だろうか。背景に写る微細な光の夥しい数からしても、かなり長時間の露光を何度も繰り返し、肉眼では見ることのできない光も望遠鏡を通して映像に残している。


  Photo by K氏

 こちらの写真も同じくオリオン座を写した写真だが、望遠鏡は使っていない。正確に言うと、当牧場の望遠鏡の上にカメラを置き、その下の赤道儀と三脚を利用して写したもの。露光時間はかんとさんよりか短いが、これもかなり忍耐の要る撮影で、夜中の3時過ぎに起きていったら、K君は一人で寒さに耐えて頑張っていた。

 記録(2020年)によれば11月の最低気温はー5.7度、それが12月の終わりになるとー15.2度まで下がる。これからは、小屋ならいいが、経験や装備が充分でないと屋外は厳しい。
 K納さん、すずらんの里駅からここまでの往復、さすがでした。通信ありがとう。乞再見。
 
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     ’22年「冬」(1)

2022年11月01日 | 入笠牧場からの星空

      Photo by かんと氏

 木星について知っていることと言えば、太陽系の惑星の中では最大であるとか、あるいは地球や火星とは異なり、ヘリュウムや水素のガスからなっているというくらいのことだろうか。ボイジャー1号、2号が接近して近傍から撮影した写真には不気味な大斑点が写っていた記憶がある。
 
 この木星本体よりかもその衛星に興味を持ったのは、クラークの「2001年宇宙の旅」の続編「2010年宇宙の旅」だった。SF小説には全くといっていいほど関心がなかったが、偶々薦めてくれる人がいて、映画は「01年」を先に見たが、本はまず「10年」を先に読んだ。
 そこで、水の存在が予測される木星の衛星エウロパのことを知り、さらに、かのガリレオが見つけたというエウロパの他の衛星イオ、ガニメダ、カリストの4衛星を「ガリレオ衛星」と呼称することも知った。

 牧場で働くようになって、小学校時代からの夢であった望遠鏡を入手し、入笠牧場からの星空を見てみたいという思いが次第に強まってきた。そのころは結構ここにも星の狩人たちが来ていたから、その影響もあったのだろう。
 それで、かんとさんなどにも協力して貰って、今あるタカハシ製の屈折望遠鏡を手に入れることができた。他にもう1台、その望遠鏡に先立ち、月を見るのに適した望遠鏡をある人からFMZ君を介して寄贈してもらって、今も役立っている。
 
 やはり一番見てみたいと思ったのは月のクレーター、それと土星だった。ここへ来る人たちの人気の惑星も、それらだった。
 最初から、かんとさんやTBIさんのようにカメラやPCを使って、太陽系外の微弱な光を捕らえるような真似は諦めていた。複雑で手が掛かり、知識や経験も必要で、無理だと分かっていたのだ。恥ずかしながら今でも、望遠鏡の扱いには習熟できているとは言えず、失敗することもある。

 ある夏の夜、子供たちと一緒に観望会を開いた。多分、土星の環が目的だったと思う。それを見終えてから、ついでに望遠鏡を木星に向けてみた。
 その時、木星本体よりも目が奪われたのは、その左右に見えた3個、いや4個だったか、漆黒の闇の中に、ほぼ並ぶようにして見えていた極小の光の点だった。その何とも言えない冷たく澄んだ輝き、それがガリレオ衛星との初対面となった。(つづく)

 星のPHを紹介すときは、それに添える呟きにいつも苦慮する。明日も、このまま続けます。

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     ’22年「秋」(67)

2022年10月31日 | 入笠牧場からの星空

   Photo by かんと氏

 きょうのPH、このオリオン座の大星雲にするか、それとも木星とガリレオ衛星の組み合わせにするかで迷った。それでやはり、撮影者のこの星雲に注ぐ入魂の度合いを推し量り、こちらを先に選ばせてもらった。余計な言葉を添える必要などない。
 
 午前4時40分、K君がまだ一人で頑張っている。素晴らしい星空、入笠牧場の実力!「冬のダイヤモンド」の中に赤い惑星、火星が目を惹いた。

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     ’22年「秋」(66)

2022年10月30日 | 入笠牧場からの星空

 Photo by かんと氏

 この夥しい数の星の棲み処であるアンドロメダ銀河、われわれ人類と似た生命体が存在するだろうか。約1兆個もの恒星を有しているとされ、そうであれば、その可能性は高いと考えたくなる。
 しかし、あまりにも遠い。250万光年、遠過ぎる。アンドロメダから発せられた光が地球に到達するまでの時間は、ホモエレクトスが出アフリカを果たし、それ以降今に至るまでの時間を軽く越えてしまう。仮に高度な文明を花開かせた知性が今存在していたとしても、われわれがそれを知るのは早くても250万年先のことになる。そんな遠い未来までわれわれの方こそ、存続できるとは考えられない。
 
 今夜また一人、星の狩人が来た。到着が遅かったのであまり愛想よく迎えなかったが、彼が星を目当ての来訪だと知り機嫌は直った。かんとさん他何人かしか、ここが星空観測にすぐれている所であることを知らない。やはり、知って欲しい人たちにここへ来て貰えたならば、もちろん素直に喜びたい。
 これから幾日か、ここでもかんとさんが寒気に耐え、睡魔と闘った労作を紹介するつもりでいるからご期待を。さらに牧場の星空に関心のある人は、カテゴリー別の「入笠牧場からの星空」を検索して頂きたい。
 いや、もちろん単純に美しい夜空に声を上げて喜ぶ人たちを歓迎しないわけではない。そんなことは露天風呂「星見の湯」の開設当時から伝えてある。あの人も、あの人も、多くの人たちがそれを大いに喜んでくれたのだから。



 あなたの好きなプレアデス星団です。
        In the vastness of space and the immensity of time,
        it is my joy to share a planet and an epoch with Anney.
            Carl Sagan

「三沢さん、三沢さんのために頑張ってガリレオ衛星を撮っているのですよ」、かんとさんの声で夢から覚める。本当に、勝手なことばかり言って申し訳ない。どうか犬のような者(犬が星を見るの意)のことなど気にせず、今夜は存分に星の狩猟を楽しんでください。

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     ’21年「冬」(7)

2021年11月09日 | 入笠牧場からの星空

                   Photo by かんと氏

 入笠牧場へ行けば、きょうのこの写真のように星や星雲が見えるのかと聞かれることがある。もちろん、否である。では、ここにある望遠鏡ではどうか。これも、否だろう。肉眼で見えるM42とは違った像・姿は見えるだろうが、それでもこうはいかない。かんとさんからは、倍率があまり高いとぼやけてしまうと教えられているが、意外なことにまだ実際に試したことがない。恥ずかしながら、いつまで経ってもせいぜい夏の暖かい時に月、木星、土星ぐらいしか相手に出来ないのが実情である。
 こうした写真は、微弱な光を集めるため極寒の夜中、長い時間をかけて寒さと、睡魔に耐えて何枚も撮り続けた写真をPCを使って編集する。撮影者の忍耐の集積であり、その賜物、証だと言っていいだろう。もちろん、そのためには知識、経験、複雑な操作などが要求されるが、何よりも根気を必要とする。たまに見ていてそう感ずる。



 昨夜、里に帰る途中、山室川の谷を弘妙寺近くまで下りてきたら夜空に、こういう細い鎌のような月と宵の明星・金星が接近している思いがけない現象を見た。こんな携帯で撮った写真では仕方ないが、わざわざ車から降りたり、他の場所でも何枚か撮ろうとしてみたくらいで、結構心騒ぐ感動的な眺めだった。上にいて気付いていたら、望遠鏡を出したかも知れないし、少なくともカールツァイスの双眼鏡ぐらいは持ち出していただろう。
 そう言えば、近いうちに月食があり、その間には暗くなった夜空に、月に接近したあの昴が見られるという面白そうな話を聞いた。こういう情報は、普段はあまり気にも留めないが自動的に携帯にも入るようにもなっているから、詳しいことが分かったら寒さに耐え、ひとしきらの天体ショーを見てみようかなどと考えている。

  雨が降っている中を上ってきた。濡れそぼる渋い景色もこれで季節は一気に進み、今まで躊躇っていた落葉も大方が散ってしまうだろう。林道にはナラやコナシ、ダケカンバの葉ばかりか、落葉松の針のような葉がここ幾日もしないうちに目立つようになってきた。穏やかな秋日和が幾日も続いたが、もう、ああいう陽気は戻らないと諦めるしかなさそうだ。
 本日はこの辺で。
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