入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

        「夏」 (13)

2015年06月30日 | 牧場その日その時

 
 第1牧区の牛の頭数確認に手間取る。牛は放牧地の環境に慣れると、それぞれが好みの仲間と一緒に分散する傾向にある。そして思いがけない場所に群れをつくるので、今日などは随分と無駄な労力を強いられた。
 森の中を歩きながら牛の姿を探していると、ふと見上げたら1頭のホルスタインがこちらを見ている。登っていったらもう1頭いて、草を食べながら移動中で、団体行動れのうまくできない2頭が、遅ればせながら群に向かって合流しようとしているところのようだった。それで後を付いていったら案の定、”本隊”が広い範囲に展開して草を食べていた。すでに一度確認済みの場所だったが、そのときはちょうどそこに向かって群はノロノロと移動中だったのだろう、行き違いになったようだ。いつも牛の脱柵と事故ということは、頭から離れない。
 種牛見習いのいる囲い罠は、鹿さえ逃げることのできない柵に囲まれているため脱柵の心配はないが、そのため牛との接触は少なくなる。そろそろ広い放牧地に出してやりたいが、折角他所から持ってきた水タンクを洗っていたら穴が開いてしまい、さらに新しく取り付けたカランまで不調で、まずはこれらの問題を先に解決しなければ、牛たちを移すことはできない。電牧の下の草刈もまだまだ残っているし、梅雨の時期とはいえなかなか忙しい。


    ご存知種牛見習い、よく見ればそれなりの男前

 FC/Nさん、見てくれていたんですね。喜んでいます。撮影の話は結構来てまして、7月は1本確定してます。Chiyさんありがとう。今後も変わらずコメントをよろしく。Umeさん、いつも素晴らしい写真をありがとうございます。今日はちょっと牛のことで、また明日からお世話になります。

 入笠牧場の山小屋「農協ハウス」及びキャンプ場の営業に関しましては4月26日のブログをご覧ください(日付をクリック)。また、入笠牧場からの星空に興味のある方は5月25,26、27日のブログにアクセスしてください。
 
 





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         Ume氏の入笠 「夏」 (14)

2015年06月29日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

                                              Photo by Ume氏

 こういう素晴らしい写真にはもう、駄文は要らない。遠くに見える山並みは中央アルプス、右隅には御嶽山が写っている。入笠山々頂のすぐ下には、入笠牧場の第1牧区が一部だが見えている。


   ヤナギラン                                           Photo by Ume氏

 白鳥伊那市長が、市報「いな」7月号の、毎月掲載されているコラム「市長のたき火通信」に、入笠山や牧場を含む周辺のことを紹介してくれている。最近訪問者の増えた伊那側のテイ沢はもちろんだが、星空については牧場内のJAXAの観測所にも触れ、「もしかしたら日本一の星空かもしれません」とまで言ってくれている。
 入笠山の伊那側にも、第二の夜明けが近付いてきているような気がする。もしかすれば、”時代遅れの管理人”には眩し過ぎるような夜明けが。

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        「夏」 (12)

2015年06月28日 | 牧場その日その時


 目覚める時間を間違えてしまった。現在午前3時半、まだ鳥の声は聞こえてこない。しばらく布団の中にいたが再度寝付けそうにもなかったので、面倒になって起きてきた。睡眠薬代わりにビールでも飲んで、もう一度鳥さんの起き出す朝まで眠ろうというわけだが、サテ。
 音のない山の夜も、またいい。と、書いたら、あっ、もう、鳥の声が聞こえ出した。チオチオチチと鳴いている。あの鳥も目覚める時間を間違えたのか。しかしこうなると他の鳥も黙ってはいられなくなるのだろう。ホウ、ホウという声が聞こえてきて、止んだ。周囲に遠慮していたカッコーまでがついに耐えきれず、目覚めの一声を聞かせてくれた。寝ぼけっているのかトウキョウトッキョは、最後のキョカキョクを鳴かずに終えてしまった。
 いつも森はこんなふうにして朝を迎え、目覚めていくのか。鳥たちの流儀。
 権兵衛山の左肩が茜色に染まり始めた。久しぶりに目にする美しく、すがすがしい朝焼けだ。「モルゲンロート」なんて言葉も浮かんできた。


  お前は可愛いなぁ

  よしよし

 Ume氏が昨日やってきて、和牛の#122と一緒の写真を撮ってくれた(上の2枚)。

 昨日は第1牧区で3頭の牛が行方をくらました。その中にはあの#14も入っていたので、脱柵という最悪の事態を考えた。こういう、人を見ると逃げようとする牛を、柵の中に戻すのは至難である。幸い、雷電さまの森を再確認するため登っていったら、昨年の台風のときと同じように、東側の牧柵の凹みにおとなしくしていた。一昨夜の雨にはさすがにまいったのだろう。今日は、牛を探すために中断した第1牧区を囲む電牧の下の草刈をして、食糧がなくなったので里へ下りることにする。

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        Ume氏の入笠 「夏」 (13)

2015年06月27日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

                                                 Photo by Ume氏

 また「山の人」になって牧場(ここ)で迎えた三度目の朝だが、 山の朝もいい。山の夕暮れが「静」のイメージ、あるいは「終わりの予兆」のそれであれば、山の朝は「活気」とか「再生」のイメージがする。鳥の声と、雨戸の隙間から射し込む新鮮な朝日の中で目を覚ます。この感覚は全く対比にはならないが、仕事を終えて暗くなった山道を帰る際に味わう、あの充足感や安堵感を諦めた者への、代償にはなってくれている。
 山の朝は早い。今朝も5時少し過ぎに目覚めた。朝飯を準備する前に、罠の見回りに大沢山へ行く。1頭の鹿を目撃したが、獲物は掛かっていなかった。東の空は大きな青空に太陽も見えるというのに、西の方は厚い雲に覆われてしまって山は隠れている。それに今朝はいやに風が強い。昨日は薄い雲が空の大半を占めていたが、中央アルプスの峰々だけが、伊那谷の上の濃密な雨雲の上にシルエットのように薄い、青色の山容を見せて浮かんでいた。

 山から帰りラジオを点けたら、また殺し合いのニュース。人類は永い時間をかけてここまで来たというのに、いまだ平和な地球には程遠い。自然科学や文明が成し遂げたことに比べ、最も根源的な分野における恐るべき未熟と、そして不毛。識者や宗教家が見過ぎ世過ぎで何事か高説を垂れても、蟻の一歩にも、いやバクテリアの一歩にも、ならないかも知れないという不信。人類を消滅させるような大きな戦争のことではなく、現在世界のあちこちで勃発している抗争や殺戮の方が、この想いを強くさせる。同じ人間同士でありながら、その格差が大き過ぎる、行けばいくほど、知れば知るほど。

 そんなことを言っておいて、
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         「夏」 (11)

2015年06月26日 | 牧場その日その時



 山の夕暮れはいい。心安らぐ。いつも眺めている権兵衛山の上の方は薄い霧がからみ、余ったその一部がさらに周囲の山々へもゆっくりと流れ、色のない柔らかで、穏やかな抱擁を繰り返していく・・・、今日の終幕にふさわしい。落ち着く。
 「権兵衛山」というのは、入笠山よりも標高が5メートルほど高い東隣の無名の山のことで、だから「名無しの権兵衛」をもじって密かに、かつ勝手にそう呼んでいる。権兵衛山は、この辺りにはまだ幾つかある。
 考えてみれば、こんな夕暮れ時は当然だが、牧場で働くようになって、夏の暑さを殆ど気にすることがなくなった。11年前、東京を去ると決めたとき、もう冷房の世話にならずに眠れるということが、どれほど気持ちを弛め、安堵させてくれたことだろうか。ここでは炎暑を遠くして、ささいなことを喜び、満足していれば、それでゆっくりと日が過ぎていく。だから今日、草刈の途中でなくした古いハンマーのことは、逆に結構気になる失策であったのだ。
 
 昼間チョコレートを食べたせいで、ビールがススマナイ。ウイスキーに替えたら、ようやくいつもの調子が出てきた。ゴクンとひと口飲み込み、またゴクンと飲む。そのたびに重力が弱まり、薄れ、実にいい気分だ。今日もいろいろやったが、もう思い出せない。快い今の疲労の中に吸い込まれて、墜ちていく。至福。
 牛も程なく眠りにつくだろう。

 実は、これは昨日の書置き。今日の暮れはドシャ降りの雨。ただし、午前中は雨の降ってくる前にと夢中で、小入笠まで電牧の下草刈りをした。ハンマーをなくしたのはそのときのことで、これは書き足した。 
 
 ぼつぼつ夏の予約が来るようになった。
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