炬燵の虜囚となって早や幾日が過ぎたのか、平穏と言って、何もなくひっそりと、冬の薄日を浴びながら老人暮らしを続けている。気になることが無いというわけでもないが、怠惰をひたすらに決めていれば、時間はまこと呆気なく流れていく。そろそろ食べごろになったのか、椋鳥が三々五々柿木に飛来して、留まる時間が長くなった。
そんなわけで、無聊をかこつわけでもないが、さりとてこのブログの話題にするようなことも乏しく、思案投げ首、妙案もないままもう記憶も大分薄れた山のことなど、また少し書いてみようかと思うに至った。老人の繰り言になることを怖れながら。
山は大分昔とは変わった。ハイカラになった。山用品や衣料品を扱う会社がボコボコとでき、立派な会社に成長していると聞くし、ひところのゴルフやスキーのようなブームにまでなっている。
街が山の中にも入ってきて、都会の生活と変わらないことを山の中でもしようとする人が増えた。また、いろいろな用具がそれを可能にしている。山小屋もそれに合わせて清潔で快適さを心掛け、食事も大分良くなったようだ。高い山の商魂逞しい山小屋では、水さえも商品だという。水では苦労しているから、それもむべなるかなとしておこう。
文明の波が山にも押し寄せている。そうなれば、お洒落して山へ出かけることは実に楽しいことで、危険や登行の苦しさを相殺しても余りあると思う人が増えて当然だろう。だから山は賑やかにもなった。
少しづつ都会と山の境界が低くなり、フルオーケストラのコンサートまでが開催されるようになったと聞くから、今後の山は”市場”としてどのように変わっていくかは予測もつかない。歩くだけでなく走る人、自転車やオートバイまで持ち込む人、カタカナがやたらと増え、それも3音に変わって乱用されるまでになった。当牧場のキャンプ場に来る人たちでも、草の上に腰を下ろす人などまずいない。
さてそのような山の今について異議や、その是非などを論じるつもりはない。これでも一応キャンプ場と、時代遅れの山小屋の管理人である。これから思い出すことはもっと古くて、地味で、貧しい山の日々についての話になるかも知れないが、できるだけ今の人たちに負けないような当時のわれわれの楽しさや、喜びを明日から書いてみたい。
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