入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

       ’16年「冬」 (43)

2016年02月29日 | 牧場その日その時


 広々とした緑の草地にノンビリと草を食む牛の群れ、見晴るかすアルプスの峰々と吸い込まれるような青い空。そんな日はいい風も吹き渡り、”天空の牧”に抱くイメージを余すことなく目にし、感ずることができる・・・。
 
 今日はそういう写真を用意しようと思ったが、なかなか見付からない。特に背景が青い空となると、不思議なくらいにない。で、思い出した、昨夏の天気を。日誌を開いてみれば、なにしろ8月の12日から9月にかけて1カ月ほとんど晴れたことがなく、さすがに日誌記録者はウンザリしている。9月も晴天日数は1週間あったかどうかというくらいで、さらに遡れば6,7月もやはり雨や曇りの日が多く、晴天が比較的長く続いたのは7月30日から8月11日ぐらいだった。
 ずっと昔、外国から来ていた知り合いの男が雨の降るたびに、「日本は水の国だぁ」と言っていたのを思い出した。確かに去年のような天候では、彼の言うこともうなずける。
 それでも牛はモクモクと草を食み、しっかりと体重を増やした。そして大きな事故に繋がるようなこともなく、元気に山を下りていった。今ごろ狭い畜舎で牛たちは、気ままに過ごせたひと夏のことを、懐かしく思い出すことでもあるのだろうか。


     行儀がわるいぞ!首が痒いと

 もう、2月が終わる。1月は比較的ゆっくりと過ぎた気がするが、2月はあっという間だった。いつの間にか時は巡航運転に入ったようで、置いてきぼりにされないようにと少々焦る。


 
 

 


 


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       ’16年「冬」 (42)

2016年02月28日 | 牧場その日その時


  以前に、この冬あった撮影の下見のことについて書いた。牧場には、時々こういう話が来る。今回の件はかなりの大型企画だったため、期待した。しかし、下見の時期と撮影の予定された季節があまりにも違ったため、先方の意向に上手く沿うことができなかった。
こういうことはよくある。肝心の監督が乗り出してきても、生憎の悪天で流れてしまったことが昨年も何度かあった。折角の佳人でも、寝ぼけ眼(まなこ)で、髪はボサボサ、大きな欠伸でもしながらヨレヨレの寝間着姿で現れては、決まる話も決まらないかも知れない。
 その点昨年の3本の撮影は、好天に恵まれて一発で決まった。そういうときは、大体分かる。これだけの美人を出すのだから、当然といえば当然だとオーデションに送り出す側は思っているが、いかんせん彼女はかなりの気分屋だ。だから苦労する。
まだ紹介してない場所もいろいろとあるけれど、機材の搬入という問題が邪魔をすることもある。なにしろここはスタジオではない、牧場なのだから。

 明日は入笠も雪の予報だが、この人気のない森の中の池もまた白い世界に還り、夢の見直しでもしながら春を待つのだろうか。

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       ’16年「冬」 (41)

2016年02月27日 | 法華道と北原師

    「法華道・脛巾当(はばきあて)」付近

 あれから1週間が過ぎてしまった。そろそろまた、法華道が呼んでいる。これまでは雪の法華道しか知らなかったが、前回の雪の少ない、その代わりにクヌギやヤヤマグリの落葉に埋もれた古道も、なかなか風情があってよかった。すでに書いたことだが、あの日はスノーシューズを使わずに登った。「山椒小屋跡」を過ぎて雪が多くなってきたが、それでも履かずに済ませた。有難いことに雪は凍っていて体重を支えてくれたから、大きく幾度も曲がりくねる林道をほとんど無視して行くことができた。
 所要時間については、感覚的には3時間よりも2時間に近かったのではないだろうか、という気が今はしている。「脛巾当(はばきあて)」まで1時間ないしそれに近い時間で上がったことは過去にもある。問題はそこから本家御所平峠までの1時間である。普段ならその辺りから雪が深くなり、時間も食い、正念場となる。
 しかしあの日の雪の状態は、ほぼどこでも歩けた。特に目印となる「大岩」の付近は、右に左に大きくクネクネと曲がる山道が続き、無駄で、厄介な場所だが、この時は思い切って林道をはずれ、森の中を進んだ。予想外の速いペースに気付いてからは、急ぐ必要などなかったにもかかわらず、時間の経過を気にするようになった。そして、さらにペースは上がったかも知れない。
 到着時の10時50分着については、iPhoneでも確認したから間違いはない。近いうちにまた登ってみれば大体の判断ができるだろうが、もし所要時間1時間50分が間違いなかったとなると、またややこしくなる。雪の状態に大きく左右されるということはもとより承知していても、どうしても次回から、その最短時間を意識するようになるからだ。
 
 あの古道を、旅人は身延山に参詣するために通っていった。「法華道」という名はそこから付けられたという。善男善女の後ろ姿が、目に浮かんでくる。そしてひとり一念発起して道標を立て、古道を守り、後世に残そうとした北原のお師匠の元気な姿も・・・。

 脛巾(はばき):外出・遠出などの折、脛(すね)に巻きつけるもの。布や藁(わら)で作り、上下に紐を付けてしばる。後世の脚絆(きゃはん)に当たる(「広辞苑」)。

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       ’16年「冬」 (40)

2016年02月26日 | 牧場その日その時


 梅の花が咲いた。まだ1本の枝にひとつ、ふたつだが、思っていたより早くて驚いた。何故か1番日当たりのよい東向きの梅の木の枝には、まだ1輪の花も咲いていないというのも面白い。
 写真を撮ろうとしたら、視界の中に白いものが入った。雪だ。西山(中央アルプス)は雲に隠れてしまっているが、きっと雪が降っているのだろう。そのおこぼれのような雪が、ここまで舞って飛んできたのだ。
 昨日は春のようだと書き、今日は梅の花は咲いたが、陽気は冬に逆戻りだと書かなければならない。明日は雨になるらしいが、そうなれば入笠はどうだろうか。
 牧場にいれば、山の上だから、一応は里の天気をそれなりに”ホンヤク”する。誤訳もあるだろうが、原文に問題のあるときもある。天気の悪いのはもちろん、気象庁のせいではない。しかし、肝心なときにあまり外すと、逆恨みされても仕方ない気がする。山で暮らす者でなければ分からないかも知れないが、気象予報は重要だ。昨年はそれでどれほど泣かされ、腹を立てたことか。
 と言って、雨が嫌いというわけではない。



 天体写真をこのブログに提供してくれるかんと氏は、奥さんと星を愛し、そして入笠を気に入ってくれている。昨年は、15泊もしてくれたようだが、天候が味方してくれなかったこともあった。
 風景写真でも天候は重要な要件だろうが、主に月に1回の新月と、その前後を狙って撮る天体撮影は、晴れてくれなければどうしようもない。特に氏のように、長時間露光が必要な微細な光源、星雲を対象とするにはなおさらだ。TBI氏もそのひとりだが、元気にしてるだろうか。
 
 郵便ポストに懐かしい人からの葉書が入っていた。入笠を訪れたI氏からだ。いろいろな人たちの顔が思い出される。みんないい人ばかりだ・・・、いや、中には少し苦手な顔もある。クク。先方さまだって、こっちをそう思うこともあるだろう。
 牧場には牛がいて、偏屈な管理人がいる。キャンプ場と時代遅れの山小屋がある。美しい自然があって、そしてどこにも負けない星空もある。 
 

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       ’16年「冬」 (39) 

2016年02月25日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


  ツツジの老木の根元、いつもの場所に、今年も「春咲くユキノシタ」の白い可憐な蕾を見付けた。今日あたりは風は強いが、日の光は春を思わせるような明度の高さを感ずる。もう、冬は終わったのだろうか。だとすれば短い冬だったが、さりとてそれを惜しむ人などもういまい。そうか冬は、使い古された外套のように捨てられ、忘られてしまう気の毒な季節だったのか。
 やがて若葉が眠っていた谷を埋め、森を覆う。里に下りていた鳥や動物が野山に戻り、入笠にも活気漲る春の到来となる。そうなればもう、去っていった季節のことなど誰もが忘れてしまう。しかし、そうした自然の営みも、冬の間に降った雪が地中に沁み込み、ほとばしる清冽な流れとなって新しい季節を支えてくれる。老いた旅人が残していってくれた有難い、貴重な置き土産だ。



 いつのころからか、山室川に流れ込む栗立川との合流点近くに、写真のような案内板が立った。右折して山室川を渡ると、ここも普段は住人のいない集落がある。そのとっつきに「信州身延山」という、以前は盛んだったと聞く宗教施設があって、目印になる。前にも書いたが、法華道は諏訪神社口以外にこの赤坂口から登るコースもある。
 多分Tさん夫婦が立てた道標だろう。ここからは高座岩には最短で行けるし、御所が池や、諏訪口から上がってきた法華道と合流することも可能だ。本家御所平経由で高座岩-北原新道-テイ沢-ヒルデエラ(大阿原)-入笠山-入笠牧場など、知られていない登山道を選択することもできる。
 入笠の伊那側はまだまだ発展途上。このまま終わらせ、寂れさせては惜しい。まともな案内図もないようでは情けないから、今年は作ろう。

 春の入笠牧場は山桜、ズミ(小梨)、クリンソウ、そして新緑と残雪の山。汗をかいてお出で下さい。
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