入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     「冬」 (4)

2015年11月30日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


(前日からの続き) 鹿の行動には全く変化なし。あれだけの音がしたのに、そのまま鹿は草を食べるのに集中していた。
 そしてその日4時過ぎ、管理棟を出て、誘引場所の塩とヘイキューブを鹿が夜間に食べられないよう、いつもの工作しようと車を走らせた。と、大沢山の鹿の数が14,5頭に増えていただけでなく、より驚いたことには、なんと貴婦人の丘と道路を挟んですぐに対面する放牧地にも8頭の鹿がいた。もちろんその間も、爆音機は作動していた。その8頭の鹿は、自分たちのいる場所から100メートルほど下に車が止まったため、一斉に警戒態勢をとった。そして車から人間が降りてきたのを確認すると、さして慌てるでもなく、まるでお義理のようにそばの繁みへと姿を消した。
 思い出せばその日の朝、爆音機が大きな音を発したというのに、上空を飛んでいたカラスは何の反応も見せず、悠然と西の森の向こうへと飛び去っていった。カラスも、爆音機の音に馴化してしまったというのだろうか。
 
 ところがこの爆音機、夜間は稼働していなかったという重大なことを、今日初めて知った。だから夜鹿が来て、2,3個残したヘイキューブを食べても少しもおかしくないし、監視カメラにその姿が撮影されていても全く不思議ではなく、むしろ当然だったのだ。
 で、今日から日中は爆音機を止め、夜間に作動させて、鹿の反応を確かめるようにやり方を変えた。もしかすればその方が、鹿の行動を日中へ誘導することができるかも知れない、という期待もある。とりあえず、3日ばかりそれで様子を見ることにした。
 どうも鹿が一番警戒するのはほかならぬ人間で、場所によっては1キロと、相当の距離からでもこちらの動静を窺っていることだけは間違いない。

 季節外れのキャンパーが来てくれた。毎年夏にやってくるJALNECのメンバーで、メカに強い二人のお蔭で最近調子の悪かったPCとiPhoneが機嫌を直した。助かった。お礼は昨日捕獲した鹿さん。
 Nさん、いつも見ていてくれてありがとうございます。鹿の話なぞ面白くないかもしれませんが、しばらくはご容赦を。今夜は凄い夜空が期待できそうです。
 
 入笠牧場の宿泊施設及びキャンプ場の営業に関しましてはカテゴリー別の「H27年度冬季営業」を、また天体観測に関心のある方は「入笠牧場からの星空」をご覧ください。 
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     「冬」 (3)

2015年11月29日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 午後、見回りを終えて帰ってくる途中、北アルプスが一番よく見えるコーナーで車を降りた。高曇りの空に、雪を被った穂高の峰がいつになく堂々として立派に見えていたからだ。雲が絡んで山容が全て見えていたわけではなかったが、それがかえって山の風格を高め、より雄大さを感じさせてくれた。もうあの峰に立つことはないと決めた穂高でも、ああやって眺めていると遠い昔の山のことが甦ってきて、自分の人生もそんなに短いものではなかったのだと教えてくれた。

 さて、また鹿の話になる。今朝も誘引場所に行ってみると、昨日の日没時に残置したヘイキューブは、またしてもなくなっていた。二日続けて同じ結果だ。やはり昨日書いたように、鹿は音をそれほど怖れないのか、あるいは短期に馴化するものなのか、またも考えてしまう。そうしたら、このことに関連して面白いことを思い付いた。
 やはり午後のことだが、第2牧区から何気なく眺めたら、谷の遙か向こうの大沢山に鹿らしい黒い点が幾つか見えた。そこで、この鹿たちが爆音機の音にどう反応するかを調べてみたくなったのだ。爆音機の音は5分間隔で、牧場のどの場所にいても届く。こうして管理棟にいても聞こえる。
 管理棟からカールツアイスの双眼鏡を持ち出し、まず第1検査場で黒い点が4頭の鹿であることを確認した。そして爆音機の音を待つことにした。すると、1キロ以上も離れているはずなのに、先頭の鹿の行動が止まり、こちらの方を見ているようだった。そして、再び草を食べ出したところで、破裂音。しかし、全く行動に変化はない。
 もう少し近くで見ようと、先程の「人生が云々」(笑)のコーナーで待機することにした。初の沢の谷を挟んで直線で700から800メートルくらいか。爆音機と鹿の距離よりは短いが大差はない。鹿、爆音機、観察者の位置が、ほぼ正三角形に近いことになる。
 そこからは、先頭が雄で、もう1頭同じように草を食べている鹿の他に2頭いて、草の上に反芻でもしているのか腹ばいになっている姿が確認できた。神経質な雄がしばらくこちらを気にしている様子だったが、大事ないと判断したのかまた元の行動に戻った。それにしてもこれだけの距離がありながら、この注意深さには驚く。
 「ドカーン」貴婦人の丘の裏手に設置した爆音機の音がした。(つづく)

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     「冬」 (2)

2015年11月28日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

    中央アルプスの冠雪した山並み

よく晴れている。一応ストーブも燃えているし、外の気温は昨日よりも高い(3度C)が、室内は寒い。この旧式ストーブでは、あまり部屋の中は暖まらないようだ。

 昨夜の帰りに会った人の話では、茅野から入笠を通って初の沢の工事現場へ通う祭、毎朝目にしていた第2牧区の鹿の群れがいなくなったという。恐らく、一昨日の夜から翌朝にかけての寒気のせいで、鹿の群れは山を下ったのだろうというのが、二人の一致した結論だった。
 今朝そんなことを思い出しながら、いつもの鹿の誘引場所に行ってみた。期待はしてなかった。寒気もそうだが、それに加え、昨日ようやく設置したばかりの爆音機が稼働を始めたからだ。あれだけの音が一定の間隔で鳴り出せば、しばらく鹿は近寄れないだろうと思っていた。ところが、昨日もいつも通り日没寸前に残置しておいた2個のヘイキューブがなかった。 
 鹿の行動を昼間に誘導するため、日没後は誘引に使う塩とヘイキューブを一カ所に集め、その上に蓋をすることによって・・・、と以前書いたが、せっかく来て何もなかったら鹿の関心が失せてしまってもいけないからと、たった2個だけを残して反応を見ることにしていた。
 その2個が食べられていた。監視カメラで確認しなければならないが、これが鹿の仕業だとなると、その行動についてこれまでの考えを修正することになるかも知れない。少なくとも、鹿にとって銃声のような爆発音はそれほど脅威にはならないのか、もしくは予想外に短期で馴化してしまうのか、といったことを検討する事例にはなる。

 人気の失せた入笠山の登山口まで行ってみた。あれほど賑やかだった駐車場には、1台の車もなかった。今なら富士見側からも車で来ることができるはずだが、この時期になるとこの山には、寒さを越してまで静かな落ち着いた山気を味わおうとする人はいないようだ、と思っていたら5,6人の集団とすれ違った。

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     「冬」 (1)

2015年11月27日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

  
  昼を過ぎても、気温はマイナス3度あたりで上がらない。風も強く冷たい。朝ここへ来る途中、いつもオオダオ(芝平峠)から見えていた八ヶ岳は、雲に隠れてしまっていた。中央アルプスも一日中ずっと雪雲の中だし、霧ヶ峰や美ケ原に降った雪は、融けないままだ。もちろん北アルプスは、これまた終日雲の中で、姿を見せない。

この頃、夢の中で旅ばかりしている。何度か夢の中で見たせいなのかも知れない。行ったことのない場所なのに懐かしい。目が覚めてからもまた、同じ旅の続きをしたくなる。きっと、気分を変えて、どこかに出掛けてみたいという願望があるのだろう。
 それにしても、夢の中の風景の方が美しいというのはどうしてだろう。今でもその夢の風景をはっきりと覚えているが、夢に現れたアメリカのある都市は、実際に訪ね、目にしたよりもはるかに美しかった。行ったことも、見たこともない風景は、空想で描く絵のようなもの、と思えば納得できそうだ。
 
 Nさん、お元気でなによりです。いよいよ本格的な冬の到来です。さすがに、来る日も来る日もこれだけの距離を往復するのは、愚性も疲れましたでござる。

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     「初冬」 (18)

2015年11月26日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


   ついにと言うべきか、例年より約10日ほど遅い初雪が昨夜、入笠山の山頂を白くした。その周囲も湿った雪に見舞われた。第4牧区のC放牧地や権兵衛山の北斜面は、午後になっても雪が残り、上空はどんよりとした灰色の雪雲が居座ったままだ。



 今朝、焼き合わせを過ぎて、ふと、左手の落葉松の森の上部に白いものを目にしたとき、それが今年の初雪だとすぐ分からず、若干の間が要った。この時期だといつ降ってもおかしくないし、昨夜の雨が雪になることもまったく予想しなかったわけではなかったにもかかわらず、幾分だが動揺した。
 雪が降れば、早晩鹿は里の方に下ってしまう。それでも今朝は、例の誘引用の餌場の近くで2群、8頭を確認した。明日の天気予報は雪となっている。里の予報がそうであれば、1千メートルくらい標高の高いここは間違いなく雪だろう。
 昨冬の大雪では、大分鹿がその影響を受け死んだと聞いた。もう、残っていた放牧地のわずかな緑も消える。鹿は越冬を思案するころだろう。

 秋から初冬にかけて、今年はずうと穏やかな天気が続いた。晴れてもよく、曇ってもよく、季節の退行に合わせて森や周囲はゆっくりと色彩を失う中、その分だけ静かな味わいは深まった。枯葉を散らすしめやかな雨にも、深い情趣を充分に味わうことができた。そろそろ、もういいだろう。充分に尽くしてくれた季節に感謝と別れを告げて、冬に向かう覚悟を決めた。

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