きょう1日を残して11月が終わる。この月は残留牛のこと、露天風呂の改修、野生鹿の捕獲、牧を閉じる準備などと思い返せばそれなりにいろいろあった。特にあの牛たちのことは、今はどうしているのかと思い出すことがあるし、無事に蓄主の許に返せた時の安堵感はまだ鮮明に残っている。最終的には牛の信頼を裏切った形になったが、麻酔とか鎮静剤とかよりかあの手のかかる、根気の要るやり方で良かったのだ。
晩秋から初冬へと変わるころ、追い上げ坂の草刈りをしながら、はたまた電牧の冬対策をしながら、目の前に広がる細やかな自然の移ろいを存分に目にしてきた。今年は上に泊まる日が多く、里と山との往復で接する自然との回数はいつもの年より減ったが、その分を差し引いても、贅沢な自然環境の中で暮らすことができたと思っている。
コナシの葉が黄ばめばやがては落葉し、白樺の樹幹が目立つ頃には放牧地から次第に緑の色が消えて、落葉松や広葉樹の落葉とともに忍び寄る冬の足音を次第に意識した。大きな空は澄み渡り、遠くの山々に降った雪は根雪となり、早朝の気温は零度を下回るころには管理棟から眺める景色に毎朝霜が降りるようになった。
終焉を前にして見せる華麗な季節なだけに毎年、もっと引き留めておきたい気持ちを持つのだが、そうやって自分も老いていくのだという諦念と重ねれば、そんなどうにもならない思いもいつか季節への感謝や、ねぎらいへと変わっていく。
きょうはこれから上に行ってくる。牧場と山小屋の見回り及び罠の点検、そして帰路は東部支所に立ち寄り今月の売り上げの納金を済ませる予定だ。契約は終わったのに、まだ上に用事を作るのかと思うかも知れないが、例年のことながらそうしている。今冬はcovid-19のせいでまだ決めかねているが、冬季の営業はあくまで自主的なもので、契約外のことだから無報酬だがそれでいい。車で行ける間は自分の車で上がり、それができなくなればHALを連れて山スキーやスノーシューズで登ったものだ。
5か月の間あの小屋を無人のままにしておけないという不安もあるが、やはり入笠への愛着だろう。山の好きな人たち、それにかんとさんのような星の狩人たちに役に立ちたいと思う気持ちもある。それは、今も現役だったなら、自分も一人の登山者としてあの小屋に泊まり、静まり返った雪の森や林を訪ねてみたいと、きっと思うはずだから。
本日はこの辺で。