ようやくきょう、今冬の営業案内を載せることができて肩の荷が下りた。どれほどの反響があるか分からないが、あり過ぎても困るし(そんなことは一度もなかった)、さりとて無さ過ぎても困る、というのが内心の複雑な気持ちであって、揺れる。車で上がれるうちはまだしも、1月半ばともなると歩きになり、となると年々足に付いた"年齢(とし)の重り"を意識するようになる。それに毎冬の同行者を努めてくれたHALもすでに13歳、冬の法華道よりは下の小屋で退屈していた方がいいかも分からない。(11月28日記)
そもそもの話をすれば、契約が切れて牧を閉じてからも過去13年、毎冬欠かさず上には行っていた。その際、北原のお師匠が心血を注いだ法華道が主だったが、通勤に使うオオダオ(芝平峠)経由の林道も使った。
ある時、焼き合わせを過ぎてしばらくいくと、つぼ足で難渋しながらも上から降りてきた足跡に出くわした。二人と思われるその足跡はそこから引き返していたが、その時入笠にも、なかなか粋な山歩きをする人がいるとものだと知った。冬季の入笠も、多くの人で賑わうことは分かっていたが、それでも大半は富士見側からゴンドラで来て、冬山の展望や気分を味わい、流行りのスノーシューズで雪と戯れれば満足して帰っていく人たちばかりだと思っていた。だから、意外だった。
そんなこともあって、ならばこういう登山者のために、山の安全も兼ねて小屋を開けようと決意したわけだが、下には気を遣いあくまでも個人的な試みということで始めた。そして、そのまま今日に至っている。だから、料金設定もかなり安くできたし、燃料の他は諸々の費用負担を極力抑えるようにしてきたつもりだ。
JA上伊那は7だか8の市町村より成る大きな組織であり、この冬の営業ばかりか、通常のキャンプ場と小屋の売り上げなどにしても、本体からすれば取るに足らない微々たるものだ。しかし、こと入笠牧場に限れば、決してそうとは言えない。
入牧頭数が以前のようであれば、恐らく冬季営業などは許可されなかったかも知れない。それどころかずっと以前、すでに夏季の予約が小屋に入っていながら、それを知ってか知らでか、小屋を解体しようとする動きさえもあったのだ。そのことを外部から知らされ驚いたが、かつての上層部にはそういう考え方をする人がいた。
今後のことは分からない。それでも県内の三大公共牧場の一つであり、これだけの恵まれた自然環境や、どこにもないような景観は貴重だ。かけがいのない宝だと思う。先人と牛たちが残してくれたこの入笠牧場を、少しでも長くこのまま残していきたいと、そういう思いと願いを持ってやっている。
今年度の「冬季営業」の詳細については、下線部をクリックしてご覧ください。