Photo by Ume氏
昨夜7時半からNHKの「冬キャンプin信州」という番組を見た。撮影地はなぜか北信の青木湖と、南信の駒ケ根という二カ所だった。出演者の名前は憶えていないが、彼が冬のキャンプを体験し、その様子を紹介するということで、青木湖の方は出演者を支援する専門の人が1名いて、テントの設営の指導をし、その人の案内で周囲の美しい雪景色の中をスノーシューズを楽しんだり、野外料理を堪能するといった趣向だった。駒ケ根の方は、出演者をキャンプに来ている人たちの所へ顔を出させたり、冬キャンプを推進しようとしている人などを登場させていたが、あえて使わなくても良かったのでは、と思った。
こういう番組はまず何より楽しく、快適、そして自然をほめそやす、ということが定番になるらしい。贅沢なテントと設備、美しい雪景色や星空の輝き、暖かい飲み物と豪勢な料理とくれば、番組を見た人の中には冬キャンプをやってみたいと思った人も当然いただろう。昨年の正月にもNHKが静岡の冬キャンプ場を放送したら、たくさんの人が押し掛け、手に負えなくなったという話を思い出しながら見た。
そこで感想だが、まずは寒さ。これが一番の課題になるが、そこは抑えた演出となっている。それにしても、いくら贅沢三昧のキャンプが流行りとはいえ、あんな大型テントに立派な薪ストーブ、その上就寝専用の小型テントまでが用意され、それでもまだ足りず簡易サウナまでが出てきた。キャンプ用品の宣伝が始まったかと錯覚したほどだったが、冬季は車が使えないキャンプ場が多いから、あんな結構な装備、用品はキャンプ場の方で用意するしかないだろう。ウーン。
となれば、料金はいかほどになるのか。水場はどうなっているのだろう、はばかりは、とそういうことも知りたくなるが、そんな舞台裏は見せてくれない。しかし、こういうことが実際のキャンプでは重要なのだ。
焚火はいいが、煙が目に染みて涙を出す姿などは見せない。暖房がなければたちまち氷結する便所、手の切れるような冷たい水を使っての汚れた食器洗い、雪の上に寝る寒さや不安も、「快適、楽しい」には邪魔になる。本当はそういう苦労を乗り越え、耐えるからこそ、冬の野外生活が味わい深く、甲斐のあるものになるのだと思うが、番組はそこまでは行かないし、行けない。青木湖と、そこから眺めた星空が良かった。
まあ、こんな感想などは趣旨が違うと一蹴されて終わるだけだが、「歯に沁みるような孤独」とか、はたまた「地球の回る音が聞こえる」ような静寂につつまれた冬の世界で、あまり演出のない素朴なキャンプを、いつか是非番組で見てみたい。
本日はこの辺で、明日は沈黙します。