来る途中の山道に落ち葉が目立つようになった。またしても大型の台風の接近が盛んに報じられているものの、午前中くらいまでなら外の仕事ができるだろうと思って上がってきた。おかしな天気で、止んだと思っていた雨が北門を過ぎるとにわかに雨脚を強め、ここに着いてからもしばらく続いた。諦めかけていたら突然、今度は薄い雲の破れから青空が見え、日まで射し始めた。
雨が降っても降らなくても、牛の状態だけは見ておかなければと第1牧区へ急ぐと、全頭が大きく散らばるようにして草を食んでいた。明後日には山を下りていく牛たちはそのことも知らず、台風接近のことにも気付かず、何のためにそこに放牧されているかも分からないままいつもと変わらない。幾頭かの牛が近寄ってこようとしたが、給塩にきたのではないことを分からせるため、牧区内には歩いて入った。
毎年、牛の下牧間近になると、どうしても牛と過ごした4か月間のことを思い出す。今年は牛たちはなかなか塩場を覚えず、仕方なく軽トラに塩を積んで群れの中に持っていったりした。頭数も少なく、それでいて群れは細かく割れたせいで調教に手間取り、頭数の確認にも手を焼くことがあった。それがいつの間にか2群に落ち着き、塩をせがむことを覚えたころにはコナシの花の季節も終わっていた。
囲い罠の中の和牛も8月の中間検査のころまでは、塩を持っていっても遠巻きにして近寄らず、検査のためにパドックに入れるにはたくさんの人の手が要った。それが今では塩をよこせと咆哮し、軽トラが近付けば遠くにいても4頭で走ってくる。
その牛たちを送り出せば、まだ3ヶ月もあるのに、今年の大方のことはすでに済んでしまったような気になる。短い秋を、さて、どう過ごすか。ぼつぼつ紅葉のことを問い合わせてくる人もいるようになってきた。
雨音がする。3時ごろまでは大丈夫と予測していたが、これでは止まないだろうか。予定していた草刈りは午前中に済ませた。きょうで9月も終わる。雨ばかりの多い、短い1ヶ月だった。
秋風が旅に出ろと言ってませんか。小屋もキャンプ場も充分に余裕があります。FAXでも予約や問い合わせに対応できます。ご利用ください。入笠牧場の営業案内は「入笠牧場の山小屋&キャンプ場(1)」
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