この左手に古い4等三角点の設置された小高い丘がある。この丘全体を100㍍から200㍍くらいの木の牧柵で囲い、そこへ第2牧区から吊り橋を架け、訪問者はそうやって自然の懐へ入っていくという案を以前からずっと暖めてきた。ここで呟いたこともある。その程度の人工的な手を加えても、この景観は損なわれず、牛の移動の妨げにもならないだろう。
そして、視界の半分を占める茜色に染まる大きな空と、波のように山並みを重ねるもう半分の大地、それを眼下にして、誰しもが詩人のようにそれぞれの深い想いに耽り、浸れる。いつもは忘れている、一瞬が永遠と同化することを体感し、感動できるかも知れない。
これは、このきょうの写真のような秋の夕暮れに訪れた場合の一例であり、季節によっても、時間によっても、新たな異なった感動や感慨を味わい、抱くことが必ずやできるだろう。
入場料は頂戴する。ビール、ワイン、チーズくらいは下の小屋で販売し、そこからは歩行者専用の山道を登る。20分くらいだろうか。その案もある。
人が自然と無理なく共存できる場所を少しづつ探り、立ち止まり、振り返り、長い時間をかけて牧場を新たな方向へと改革を進めていく。観光客が増え溢れ、地元に金が落ち、活性化云々という従来の観光に対する考え方や策とは違う新しい方向、牧場の行先が見付かるかも知れない。
そうでなければやがてここは荒れ、ススキや落葉松が放埓を極めた自然に帰っていくだろう。それも選択肢の一つではあろうが、いずれの結果であれ、それを目にすることはないだろう。
近いうちにまた映画の撮影が決まっている。それに必要な鹿を1頭捕獲しなければならないが、頼める人が思い付かない。大型の囲い罠は誘引を続けているものの、これも仕掛けはまだだ。下からは催促されているし、鹿の鳴き声はよく耳にしても、アイツらの間にはこの罠にだけは近付かないようにとお触れでも出ているのか、まったく接近の気配がない。
週末は2組、7,8人のキャンパーが来る。そうなれば余計に鹿は近付くまい。昨夜もそうだったが、山は寒くなる一方で、鹿の行動も変わってくる。里に向かう頭数も増えるだろう。最悪の場合でも1頭だけは確保できるよう、その策を考えておかねば。
初夏のころに伐り倒したコナシの木をチェーンソーを使って整理していたら、昨夜の寒さが嘘のように、すっかり汗をかいてしまった。本日はこの辺で、明日は沈黙します。