今日は良い天気になりそうだ。いつもなら入笠山と権兵衛山の鞍部、「アラスカの森」から「仏平」へ抜ける辺りは、伊那側と富士見側の気象がぶつかり合うため、この時間は大概ガスが発生している。今朝はそれがない。
と、書いたのが午前6時、気温は15度だった。牧区を巡回して牛や罠の点検をし終えて管理棟に戻ってきたら8時半近かったが、夏の強い日差しを受けて気温はすでに25度まで上がっていた。車の中のラジオの予報は、37度くらいになる所もあると警告していたから、さすがにここも今日は暑いだろうと覚悟していた。ところが昼になっても気温は変わらない。いつの間にか青空よりも雲が空を覆い、日の光を遮断している。その上、いい風が吹く。まさに草原を渡る嫋嫋(じょうじょう)とした風である。物言わぬ牛にも、このくらいの陽気が一番快適だろう。
ここは相変わらず静かなものだが、各地の山は中高年の登山者が目立つらしい。たまに富士見側へ行ってみると、その人の多さに驚く。ほとんどが中高年で、山頂に行くにはお花畑に幾つかの順路があるが、よく「どちらが近いか」と近くで交通規制に当たっている監視員に聞いている。どう歩いたところで、そこから山頂まではせいぜい3,40分なのだが、少しでも楽をしたいようだ。手許には案内を兼ねたパンフレットを持っていても、近くには案内図があっても、とにかく何事でも尋ねることに躊躇しない。2万5千分の1の地図の見方どころか、その存在すら知らぬ人たちばかりだろう。
よく山では、「引き返す勇気」ということが言われる。言ってる意味が分からないわけではないが、「勇気」というより「気力」だろう。不測の事態に遭遇したとき、それを乗り越えるには、折角何時間もかけた時間を、あるいは距離を、逆転させてゼロに戻さなければならないときがある。安易な方法に逃げて、事態をさらに悪くさせないためには、もう一度引き返す、登り直す、気力が要る。そしてその気力を支えるには、心の余裕が必要だ。
例え夏山であっても、中高年は遅くも3時には一日の行動を終了すべきである。もし道に迷ったとしても、暗くなるまでにはまだかなりの時間がある。それだけあれば、既知の縦走路に戻ることができるだろう。
バランスや跳躍力は若いころとは比較にならないほど劣化している。つまらぬところでいとも簡単に転倒する。滑落の可能性も潜んでいる。そういう山に行くのだから、せめて自分の力だけで調整可能な時間的余裕は、しっかりと計画に入れておくべきだと申し上げたい。
F/C:Nさん、コメント多謝。皆さん頑張ってくれていて、頼りにしてます。お力添えをよろしくお願いいたします。
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