入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

牧人の休日 (23)

2015年02月28日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

    山室川の雪も少しは融けただろうか

 陽気がよくなると、自然と身体が外の活動を欲するようになるようだ。今年はもう放っとこうと思っていた梅の木の枝打ちを、急に気が変わって2本もやった。近所の元気なお婆さんによれば、花が咲く前なら大丈夫と言うことでやってみる気になったのだが、あと少ししたら花を咲かせようとしていた梅の木には気の毒だったかも知れない。何だか樹形がいやにあっさりとしてしまって、辺りの雰囲気までも変わった。

 雪が融けるにしたがい、また鹿は上へ上へと移動を始める。昨日の「毎日新聞」には「急増する野生動物の被害」のタイトルで、3人の人の意見が掲載されていた。
 その中で、13年前に大鹿村に移住してきたという人は、「有害鳥獣の繁殖機能を低下させる薬剤開発云々」という意見を述べていた。以前にこのブログでも、同じ考えをかなり具体的に書いた。このことはもっと検討されてしかるべき課題だと思い、県の獣害対策の関係者にも話したことがある。いろいろとややこしい問題があることは想像できるが、ここまで来てしまっては無難なことばかりやっていても、ことは解決しないだろう。
 他の2名は、大学の先生のようだが、「科学的視点での対策必要」とか、「地域特性踏まえた共生を」とか、もう、この類のお題目めいた意見は聞き飽きた。何の参考にもならない。そろそろこういう人たちに獣害対策を論議してもらうのは、止めた方がいいのではないかとさえ思う。
 「科学的視点」と言えば、まさしく学識経験者であるご当人のような人々の意見を聞いた上で、行政はこれまでずっと獣害対策を行ってきたはずだが、それは「科学的視点」ではなかったのだろうか。確かに、野生動物学が専門なわけだから鹿やイノシシのことは詳しいだろう。しかし、「科学的視点」を言うなら、有害動物対策は、もっと広範な分野からの考えも取り入れる必要があり、例えば心理学だって、その一つに含まれよう。
 「被害の現状を学びながら地域の文化や思いに触れるツアーで地域活性化を図ったり、捕獲した鳥獣をジビエ料理用の特産品として売ったりする各地の取り組みが参考になる」。こんなことで、過疎化が進行する地域の”活性化”が可能になるなら世話はないし、またすでにやっている。また、ジビエ料理と簡単に言うが、捕獲後の処理には、食品衛生法をクリアーしなければならないという難題があるのを、ご存知ないのだろうか。「特定の動物が増えているからといって、それらを減らすことばかりに注力し、人々の思いや地域の将来を考慮しない取り組みは避けなければならない」。なにを言いたいのか分からないが、「人々の思い」も「地域の将来」も、野生動物の被害を少なくしていくこと、まさにこれこそが切実な願いであり、それを超える「考慮」しなければならないことがあるのだろうか。

 久しぶりに山の雑誌を買った。まだパラパラと読んだだけだが、結構面白い。
 さて、今日で2月も終わる。3月と聞けば、それだけで冬のイメージは遠のき、明るい春の野山の情景が浮かんでくる。まだ山は、雪だらけだというのに。
 時代遅れの山小屋「農協ハウス」の営業に関しましては、2月24日のブログなどを参考にしてください。

 

 
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続々)冬の入笠牧場 2月21,22,23日

2015年02月26日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 そういうわけで、まだ歩き足りないという男女数人の有志を、とっておきの雪の森の中へ案内することにした。

 歩き始めたら、、先ほど1804メートルの三角点へ登る際に残した急登するトレールのかなり上部に、人の姿が見えた。どうやらわれわれが出発してから大分後になって、リーダーのARKさんが他の二人と三角点を目指して深雪に手こずりながらも、登っている最中のようだった。結局三人は登行を中止し、ARKさんだけがわれわれに合流した。足元を見ればナント、女傑はツボ足だった。

 霧のような雨が降っていたかもしれない。空は灰色の雪雲に被われていたが、その圧迫感はなかった。霧が落葉松の梢を隠しつつ、さらにゆっくりと降りてくると、これから行こうとしている森はその奥行が次第に消えて、単色の背景がその深さを隠してしまった。
 急ぐことはなかったし、目的地を考える必要もなかった。落葉松やモミの森に積もった雪の上を、足首ほどまで潜らせながらゆっくりと歩いていく。普段なら雪は厄介な歩行の障害だが、それさえ心地よく感ずるのだから、この森はいい。
 小黒川の源流となる森の中を流れる沢は、今はすっかり水流を落としてしまっていた。この源流があってこそ、他では見られない極北にも似た森の相が生まれ、あたりの雰囲気を一段と引き立ててくれているというのに、今はその大役をすっかり雪に任せてしまったつもりでいるのだろうか。
 クマ笹の上に積もった不安定な雪の上を登っていけば、大きなモミの木の下は鹿がねぐらにでもしたらしく、除雪した跡が大きな盥のように見える。そのすぐ傍にあるクリンソウの群生地は、森を訪れた者たちにそれを教えず、今は深い雪の下でひっそりと眠っている。初夏ともなれば、そのクリンソウの一群ために、ほどよい木陰をつくる小梨の枝には早くも、固い赤い芽が強い意志を見せるように吹き出ていた。
 ・・・森の中にいたのは、それほど長い時間ではなかったかもしれない。しかし、やがて霧が流れ、再び森を無音が支配すると、われわれの退散するときが来た。

 小屋に帰ると、前夜マリネしておいた鹿肉の調理が待っていた。しかしスウシェフ役の女性に大方を任せた。彼女が次から次と焼いてくれる豪快な鹿肉のステーキに、みんなが大満足だったことは言うまでもない。捕獲者は食べないが、鹿肉はこのやり方が一番美味いことだけは知っている。

 山の日々はたちまちのうちに去り、気がつけばまたいつものように、過ぎた日々を懐かしく思い返している自分がいる。80歳を越した岳人、Sさんの美しい山の歌がまだ耳に残っている。「みろく山の会」、そしてOZWさん、ありがとうございました。あなたも、あなたも、そしてあなたも、またお出掛けください、今度は新緑のころです。
 3月になったら早々にも、また法華道を登るつもりです。

 時代遅れの山小屋「農協ハウス」の営業に関しましては、2月24日のブログ他をご覧ください。「海のおうち山のおうち」のchiyさんありがとう。ブログのタイトルに、ああいう魔法をかけることを知らず、すみません。
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続)冬の入笠牧場 2月21、22、23日

2015年02月25日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 明けて22日、人の声で目を覚ますと、どうやらもう出発の準備が始まったようだった。早い。時計を見ると7時を少し回っていた。朝食の担当者は何時起きし、またみんなはいつそれを食べたのだろう。昨年は、リーダーのARKさんが前夜の酒で不覚をとったにもかかわらず、厳寒の深夜2時起きして、朝食の準備を始めたと聞いた。小柄な身体のどこにあんなエネルギーが潜んでいるのだろう。
                         ・
 天気予報は雨。入笠山頂からヒルデェラ(大阿原)、テイ沢のコースを今年も計画している様子だったから、余計なこととは知りつつも、天気が悪化して途中で引き返す羽目になれば厄介なこと、また、もし途中で引き返すとしても前日のラッセルを利用できる逆回りの方がよくはないかと言ってみた。その結果、天気に期待が持てないことから留守番役1名を残して7時半、予定を変更してひとまずテイ沢に向け出発していった。
 それからどのくらいが経過したのだろう。「只今」という声で出てみれば、”歌手”のSさんが戸口に立っていた。どうやらテイ沢は予想外の雪で第3の橋からSさんを含む何人かは引き返し、残りの本隊はしかしそれに飽き足らず、予定を変更して今度は高座岩に向かったと言う。そして昼近くだったろうか、本隊もやがて意気揚々として帰ってきた。
                         ・
 雪山は今回が初めてという人もいた。そういう人は、入笠山であれどこであれ山頂に立ちたかっただろう。また実際、当初の予定を変えなければ入笠山とヒルデエラ(大阿原)へ行くぐらいは、天候も何とか保ったと思う。そう考えると責任を感じざるを得ず昼食後、希望者を裏の1804メートルの三角点まで案内することにした。晴れていれば素晴らしい眺めを堪能できるところだが、それはかなわなかった。雪原を吹きすさぶ風と、ダケカンバやミズナラの木々を襲う霧とが共演する、灰色の寒々とした風景が待っていただけだった。しかしそれも、普段なら目にすることのできない雪山の景色で、悪くはなかっただろう。
 下に戻って、「まだ歩き足りない人がいるようなら、近くの森をもう少し案内してもいいけど」というと、「行きたい」と数人、元気な声が返ってきた。ならばと、とっておきの森を案内することにした。(つづく)
                         ・
 時代遅れの山小屋「農協ハウス」の3月の営業内容につきましては、昨日2月25日のブログを参考にしてください。
 ゴンドラで手軽に登って、踏み固められた雪道を歩いて山頂を往復するのも悪くはない。しかし、折角のスノーシューやワカンは、誰も歩いたことのない深い雪の森の中へと、あなたを誘ってはいないだろうか。ちょっぴり足を伸ばせばここには、大きな空と、中ア、北アを含む大パノラマが待っている。「時代遅れの山小屋」かも知れない。しかしこういう小屋だからこそ、山人の思いが伝わり、味わえる。もちろん、凍死させたりはしない(笑)。加えてここには、どこにも負けないここだけの美しい星空がある。実はまだ、そのことを知っている人は、あまりいない。そうそう、ようやく待ち遠しかった天体望遠鏡も、常設できそうだ。乞うご期待。


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       冬の入笠牧場 2月21,22,23日

2015年02月24日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

驚いたなぁー、行っちまったよ(4)


    本当に休憩なしでござるか(1)


    足取りはしっかりとしたもの(2)


    落伍者ゼロ!(3)

 山はいつでもそうだが、三日間の愉快な山の日々はまたたちまちのうちに思い出となってしまった。

 NPO法人「みろく山の会」19名とOZWさんが小屋に着いたのは、21日の午後1時を少し回っていたような気がする。あの時、何をしていたのだろう。ふと人の気配で外を見たら、窓の中断まで積もった雪の上を歩く人の足が見えた。慌てて外に出たら、もう小屋の前に大方の人たちが到着していた。懐かしい顔が笑っている。
 ところがである、「荷物を置くだけよ、ここでは休憩はしないからねェ」、リーダーの女傑ARKさんが大きな声で吼えた。ナント翌日のために、そのままテイ沢までラッセルしにいくというのだ。メンバーの中には”歌手”のSさん80歳もいるし、この会は文字通りの中高年で構成されているというのに、それにしても元気なものだ。
 そうして1時間後、全員が元気で戻ってきた。北原新道の上り口にある橋まで行ってきたという。大したものである。スノーシューの人もいるが、ワカン使用者も結構いる。以前このブログに、かつて辻まことが描いた「岳人」の表紙に出てきたような朴訥然とした登山者が、此処には似合うし歓迎すると書いたが、そういう人がいる、いる。
 その夜また、恒例の宴会が盛大に行われたことは、言うまでもない。普段はたいがい遠慮しているが、この会のときは一緒になって、いつの間にか騒ぎの中にいる。(つづく)

 「海のおうち山のおうち」のchiyさんが、可愛い小鹿の写真をブログに載せていた。あれを見ながら、「今年も鹿殺しをせねばならぬのか」と、実際考え込んでしまった。彼女は食べ物と犬と裁縫(?)から、鹿ウオッチャーへとジャンルを拡げたのでござるか。

 春山シーズンも、計画はお早目に。ただいま3月の予約受付中です。
 
 時代遅れの山小屋「農協ハウス」:1泊1名2500円プラス薪炭料300円(ただし7名以上、それ以下の場合はご相談ください)。寝具、食器、ガス、冷蔵庫、大型炊飯用ガス釜など自由に使用可能。水道は冬季使用不能のためご注意ください。清掃、整理は利用者にお願いします。若干内容が変わっていますが、詳細は昨年11月17日のブログも参考にしてください。
 問い合わせ・申し込み:JA上伊那東部支所組合員課(直通℡:0264-94-2473)、ブログのコメント欄でも対応できます。こちらからの受付確認を得てください。
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       牧人の休日 (22)

2015年02月20日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


  昨夜、いまごろ新年会と称する集まりがあった。文字通り末席に身を置く、わがJA上伊那畜産課の面々によるものだ。一応飲み会は断らないようにしているので、参加した。そして大酌、正体もなく、酔っぱらった。明日は「みろく山の会」の人々が山小屋「農協ハウスへやって来るから、今日のような穏やかな日にこそ法華道を行くべきだったが、それができなくなってしまった。午後から富士見経由で行こうと思ったが、それも怪しい。どうも、”新年会”に出席することを決めた段階で、客の来る前日の到着という原則を内心諦めてしまっていたような気がする。
 その件で、OZWさんと昨夜打ち合わせをした記憶はあるが、その内容があやふやで、もう一度確認せねばならない。日曜日の法事を欠席して行くため、氏には気を遣わせてしまったようだ。みろくの人々は毎年来てくれているから、何でも任せようとすればできるが、それでもガスや電気、暖房については管理人が責任を持たねば、来てくれる人たちに申し訳ない。

 今朝、山奥氏が電話してきて、今夜から千葉の海へ行くのだと言う。まだ狩猟採集民族を止めないらしい。牧場や芝平へ行っても、いつもご尊顔を拝すわけではないが、「百姓山奥いつもいる」という有難い別称を与えられた人物が、あの雪深い森の隠れ家に居ると居ないでは何かが違う。タヌキやキツネのように、森に棲みついてしまった新人類、いや旧人類と言うべきか。ソローだかプローンネクだかどっちでもよいが、彼らを真似て日記でも書いたらとも言ってみたが、「やることだらけで忙しくてしょうがない」という、いつもの返事しか返ってこなかった。

 今日の写真は、また芝平の廃屋。いつの間にか風景の一部のようになってしまったが、かつての住人がこれを見たらどう思うだろうか。山室川に沿ったこの古い歴史を持つ集落、北原のお師匠は次第にさびれていく古里を嘆くが、さりとて大ダオ(芝平峠)まで道を舗装して行き交う車の喧騒を招いては、この景観や雰囲気は台無しになるだろう。明日も天気がよさそうなので、早起きして、富士見のゴンドラで行くことにする。

 

 









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