入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’19年「初夏」 (29)

2019年06月30日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 家を出た時はかなり激しく降っていた雨も、上まで来ると雨脚はかなり弱まった。こういうことはよくあり、それほど珍しいことではない。心配していた牛たちも囲いの中で、乏しくなった草を元気で食んでいるようだ。ただ、さすがに里よりか1千メートルほど高いだけに、風はかなり激しく吹いている。こうした天候を一向に気に掛けないのか、郭公の声だけがさっきから風の音に混じって聞こえてくる。
 昨日、6月はそれほど雨に祟られなかったなどと呟いたから、早速今日のような荒れ模様の天気を見舞うはめになった。しかし、こんなことは予想の範囲、雨でも風でも降りたければ降ればいいし、吹きたければ好きなだけ吹けばいい。こんな人里離れた山の中、それで困る人など数少ない。唯一怖れるのは牛の脱柵。
 きょうは霧が深く、第1牧区の全頭確認は困難かと思ったが、車で一巡して2群、10頭を確認、その後は歩きに切り換えさらに一巡、林の中で15頭の無事を確認できた。
 
 第1牧区には「雷電様」と呼ばれる、地元民が雨乞いをした場所があると、すでに何度か呟いた。そこにある祠は江戸時代の作で、高座岩の碑などよりかも古いことも併せて独りごちった。大袈裟になるかも知れないが、稲作伝来より2千数百年、農民はずっと思う通りにいかない天候に苦しみ、翻弄され、そして祈った。祈ることが最後の手段だった。あそこは、そうした当時の人々の必死な思いを伝える場所として、今もそのままになっている。
 当時は落葉松の人工林などなく、目の前に「雨乞い岳(入笠山)」が見えていたに違いなく、それなのになぜ雨乞い岳の頂きで雨乞いをしなかったのだろうか。もしかしたら、さすがに山頂で神様を怒らせるのは畏れ多いと憚かり、敢えてあの場所にしたということも考えられなくもない。だが、本当のことはもう分からないだろう。
 
 囲いの中の牛の動きが目立つようになった。草が少なくなったからに違いない。マッキーは仲良し相手を見付けようと熱心だがどうもイマイチで、嗚呼、さっきからずっと一緒だった相手は座ってしまった。それでも傍から離れない。あれ、今度はマッキーまで横に腰を下ろしてしまった。その2頭の後ろ姿は微笑ましいと言えばそうだけど、後でマッキーに八つ当たりされるのだろうか。タマラナイ。
 

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     ’19年「初夏」 (28)

2019年06月29日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 もうすぐ6月も終わる。撮影、牛の受け入れの準備、そして入牧ときて、思い返せばいろいろとあったが、それでも早かった。まだ梅雨は明けないが、とりあえずこの月はあまり雨に祟られることなく終わりそうで助かる。きょうも今にも降ってきそうでいて、昼になっても降らない。それでも、土曜日だというのにあまり人の姿を見ないのはこんな天気だからか。

 第1牧区の牛に塩を持っていってやろうとして、上に着いてからその塩を忘れたのに気付いた。しかし、年齢のせいにはしない。他のことに気を取られていたせいだと言い訳し、取りに戻った。
 昨日5頭が入牧し、第1牧区の牛は25頭になった。この頭数だと、まず1群でまとまることはない。給塩と頭数確認のどちらを先にするか迷うも、塩くれ場の近くには2頭、そして少し下の方に5頭がいた。塩場に呼ぶにはこれでは少ないと、とりあえず頭数確認をして、給塩は後回しにすることにした。
 きょうの写真に写っている場所からさらに下方へ降りていくと、「舞台」と「どん底」と呼んでいる場所を含めて広い放牧地がある。5頭の牛を確認した時に、さらに下の方に牛の姿が小さく見えた。下っていくと、舞台に13頭がいた。きょうは頭数を数えるだけでなく、耳に付けた牧場番号でも確認していく。こうすることで、およそ一つの群れを構成する牛たちが分かってくる。
 ふと、どん底に目をやったら、そこに昨日入牧した5頭が目に入った。偶然だった。和牛はホルスタインと比べたら目立たず、5頭はまるで身を隠しているように見えた。この中の1頭を昨日、ロープを外さずに400メートルくらい追い上げの坂を連れて登ったのだが、彼女は全国大会で県の代表にも選ばれた名牛だそうだ。声を掛けたら立ち上がった。塩場までは遠いと思ったが、舞台の13頭も含め、試しに呼ぶと霧の中をぞろぞろと付いてきた。
 種牛マッキーこと乱太郎に、あの従順さを見せてやりたかった。その彼はきょうも変わらず、ハーレムに入ろうとすると走ってきて、またも威嚇してきた。やれやれだ。

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     ’19年「初夏」 (27) 

2019年06月28日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 きょうまた牛が上がってきた。一般牧区に和牛が5頭、まき牛牧区には和牛3頭に乳牛が1頭。これで、種牛も含めて入牧総数49頭、入笠牧場としての最低の体面は何とか保てるだろうか。後は種牛をどこまで今の環境に馴化させ、しっかりと仕事をさせるかだ。



 この白いビニールに包まれて干し草が入っている。1ロールの重さが300㌔ある。昨日はこれを2個開梱し、種牛を警戒しながら畜産課々長と二人で囲いの中に押し込んだ。
 その苦労な作業だが、まず1ロールをトラックから軽トラに積み、牛が外に出ないように注意して扉を開け、軽トラを後ろ向きで入り口のすぐ内側に停める。それで荷台から降ろそうとするのだが、これが逆勾配で、二人ではいろいろと手を尽くしてはみたがとても無理だった。ついには通りがかりの登山者にまで協力してもらった。
 草はしっかりと巻かれていて、フォークがないから少しずつ手で剥がしながら放り込むのだが、2ロール終えたらヘトヘトニなってしまった。その草も1日が過ぎただけで今はもう4分の1くらいしか残っていない。しばらくは同じ方法で給餌を続けるとしても、やはり4か月はとても無理だろう。
 ということは、第4牧区へ出すしかない。牛の頭数確認などの牧区内の巡回は可能な限り車で済ます方法も考えられるが、生憎あの牧区は小入笠の頭まで傾斜のきつい放牧地が殆どだ。やはり、あの護身用を持って行動するしかないだろう。

 3時ごろパラパラときたが、今雨は止んでいる。牛が草を食む姿が見えて、その背後の落葉松林の上を霧がなぞるように流れていく。静かないい眺めだ。

 赤羽さん、残念ながら好天は期待できそうにありません。折角の家族観望会ですから、ここの素晴らしい星空を堪能できる別の機会をお勧めいたします。

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     ’19年「初夏」 (26)

2019年06月27日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 朝の早いうちはまだ前座だからか雲や霧の舞台だったが、そろそろ主役の雨が登場することになりそうだ。2千メートル位まで雲が降りてきたようで、権兵衛山の鉄塔が薄ぼんやりと霞んで見える。
 きょうのPHは、今を盛りと咲く池の平のレンゲツツジ。今朝来る途中、ついオレンジ色の花に誘われて急いで撮ったが、あまり実際の雰囲気は伝わらないかも知れない。

「古来稀」なる年齢を過ぎてから、やたらに自分の犯す過ちを加齢のせいにしてきた。昨日も、スーパーへ着いて、財布を忘れたことに気付いた。やはりこれも昨日のことだが、軽トラの「使用管理簿」などというものがあって、毎日走行距離を記入するというあまり意味のないことを日々強いられてやっているのだが、いつの間にか「通勤」が「通難」になってしまっていた。管理棟から急に外に出て、はて何をしようとしたのだろうと当惑することなどしょっちゅうのことだ。自然と、高齢者の運転事故にも知らずしらずのうちに、同情的に見てしまうようにもなった。
 しかし、この頃少し考えが変わった。元来がせっかちで、物忘れも多く、それこそ、それらは今に始まったことではない生来の弱点であったわけで、何も年齢のせいにして落ち込んでも詮無いと・・・。で、徒に年齢のせいにすることを止めることにした。若かったころだって、実はきっとあまり今と変わりなかったと思う。
 短気で、怒りっぽい気質も、それを統御する能力に著しく欠けていたと、昔から多くの人に指摘されてきたことだ。ただ、ついに治せなかった病のようなものと、これもまた「深い悲しみの中の諦め」とした。




    この顔だから(中央)

 話は急に変わるが、人の場合はもちろん、異性なら誰でもいいというわけにはいかない。様々な条件や好みがある。このことは、たとえ聖人であっても、同じだろうと思う。
 聖人に触れた後で畏れ多いが、では、牛はどうか。牛だって群れを作る、好き嫌いは当然にあるだろう。どうも乱太郎(これがここにいる種牛の正式な名前で、最近知った)を見ていると、あまり"仕事"をしていない。彼は、もしかしたら雌牛から好かれていないのだろうか? 
 きょう、第1回目の給餌をした。その大変さは、また。

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     ’19年「初夏」 (25)

2019年06月26日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 昨日の続きになるが、牛が脱柵したと思われた場所は入牧の諸検査を終え、下から第1牧区へ追い上げてくる時に開けるゲートのさらに先だった。しかしこの場所から出たとすると、落とし物があった場所へその牛が行くには、下から伸びてきているもう一つの縦の牧柵も突破しなければならない。後になって思うと、あれは鹿の仕業だったかも知れず、牛は別の場所から出た可能性もあった。
 あの段階では、脱柵と事故死の可能性は半々ぐらいだったが、その捜索となるとを事故死を想定すればまず徹底的に第1牧区内を探すことになる。しかし、もうひとつの可能性、脱柵して牛がどこかへ行ってしまったとなれば、下手をすれば1日やそこらでは終わらない。人手もいる。何しろ周囲2キロ以上はあるあの広い牧区の外となれば、大半がどこまでも続く深い落葉松の森が相手となる。
 それから徒労の時間が過ぎていった。牛の群れは三角点の丘の南側にいた。それを見ながら塩くれ場を通り、さらに下方へ向かおうとした時だった、東から西へ落ちていく牧柵の向こうの官行造林に1頭の大型のホルスタインがいた。牛もこっちに気付いた。何とかしてくれ、というふうにも見えた。
 一安堵したが、さあそれからがまた大変だった。この牧区はかつてサホーク(羊)を放牧していたこともあり、牧柵の周囲を金網で囲っていた。それがまだ残っていて、牛を牧区内に戻すといっても、おいそれと牧柵のどこかを切るというわけにはいかない。それに通常牧柵と併設されてる電牧は8千ボルトの高圧電流が通ていて、まずそれを切る必要があった。
 そして、それから後、足元の悪い落葉松の林の斜面を登ったり下りたりとさんざんに牛と追いかけっこをして、一体どのくらいの時が過ぎたのか、とにかく牛は無事に牧区内に戻せた。入牧してからまだ10日と少々しか経っていない。それでいてもう3回目の脱柵である。年によっては、脱柵事故など1度も起きないことだってあった。今年は種牛マッキーのこともある。イノシシのことも解決していない。長い4か月の放牧期間となるだろう。

 きょうもいい天気だ。西山(中央アルプス)の残雪も大分少なくなった。梅雨が明ければ、短い本格的な夏の到来である。

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