ゆりこさん、わたしはあなたを愛しています。でも、ゆりこさんは人間ではありません。庭の植物の百合です。植物だっていいでしょう? 人間並みの高等な意識は保持しているはずです。土から芽を出してくるのはまだちょっと時期尚早なのに、昨日花壇の草取りをしていたら、あなたが土を盛り上げながら発芽してきているのを見つけました。わたしが愛している愛していると幾度も告白をするものだから、土の中に身を隠す辛抱ができなくなったのかもしれません。あなたも早く早くわたしに会いたくなったのでしょう、きっと。凍傷にかからないといいのですが。愛に飢えたさぶろうです。北風が吹きつのる中で、外国人のように「愛している愛している」をささやいていると、饑餓から逃れられる。これはさぶろうの勝手な思い込みに過ぎないのです。
人間を愛するのは面倒です。実に面倒です。相手を拘束することと同時に相手に拘束されることにもなりかねません。愛情に包まれているのが好きなくせに、それでもさぶろうは自由でいたいのです。