1
夢に出て来るおばば様は神様おばば様です。高い高い天空の神殿にお住まいです。ふっくらふっくらしておられます。肥満体です。厳かな声を響かせます。
2
神殿は大宇宙まで高く高く聳えています。丸い塔が立っています。塔の中には螺旋階段があります。そこをぐるぐる上り詰めて行くと、神殿の大広間に出ます。奥御殿から神様然としたおばば様がうやうやしく出て来られます。
3
わたしは前に出て平伏して傅(かしづ)きます。おばば様はわたしの肩に手を置きます。すると高圧電流が流れてきて、わたしは電気人間になってしまいます。
4
神様おばば様の厳かな声がします。「地獄を見てそこを離れたさぶろうよ、爾はすでにパワーを備えたり。行って、苦しむ者の苦しみを取り除いてやるがいい」と神託が下ります。籠められたパワーを放つわたしの手の指がじんじんします。
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これはわたしの夢です。願望が夢を見せています。夢だからと聞き流していると、また、同じ夢を見せられます。おばば様が「実行実践」を迫られます。「あれほどきつく申し渡したではないか」と言われます。でも、わたしは漫画の中のスーパーマンではありません。そんな力はありません。一度も、ご命令に服してはいません。
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でも、夢の中のおばば様は、何だか分からないが、わたしの守護神です。お姿を忍ぶだけでわたしは全身があたたかくなります。電流が走ります。ぐずでとんまでおたんこなすの<夢見るわたし>を見守っていて下さっているようです。
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あっ、このふくよかな形(なり)をしたおばば様は、わたしが大学一年生の時に下宿した下宿屋の、お婆さんに似ておられます。
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わたしは九大生のY・O君と同じ8畳を分け合っていました。彼は凄まじい読書家でした。もう一部屋ありました。この部屋の借主は同じ大学の経済学部生でした。女性にもてる話をたくさん聞かされました。
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部屋の前が筑肥線の踏切になっていました。電車が通過する間、踏切がちんちんちんと音を鳴らせていました。
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あっ、そうだ。このおばば様は日本古来の神様信仰をしておられて、信者様が月に何度か集まって来ておられました。お酒を飲んでいい宗教のようでした。