いやいや、これはユーモア俳句だったかもしれない。
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神託を聴く蟷螂の面構え 松本旭
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作者はにっこりしたんだ、きっと。作者の前に来て、いきなりやさしくなった蟷螂の面構えに。いつもは斧を振り上げて威嚇するはずの蟷螂が、この日はまるで神託を聴いている従順なものやさしい顔つきをしていたんだろう。三角の顔がきっと満月のようにまあるくなっていたんだ!
いやいや、これはユーモア俳句だったかもしれない。
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神託を聴く蟷螂の面構え 松本旭
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作者はにっこりしたんだ、きっと。作者の前に来て、いきなりやさしくなった蟷螂の面構えに。いつもは斧を振り上げて威嚇するはずの蟷螂が、この日はまるで神託を聴いている従順なものやさしい顔つきをしていたんだろう。三角の顔がきっと満月のようにまあるくなっていたんだ!
神託を聴く蟷螂の面構え
松本旭
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作者がどんな人なのか知らないけど。いいか。取り上げても。
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神託は神のお告げ。託宣。
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蟷螂にも神様がいたんだ。神妙にして聴いているようだ。やや、三角の頭を右にちょっとずらすようにして。
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イヤ待てよ、その面構えが、あるいは妙にふてぶてしく見えたのだろうか。反抗心をあらわにしている野生児の蟷螂は、野原の大将。
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秋の野原。真っ青に澄み切った大空。鳴く虫もいるが蟷螂は鳴かない。音楽には無関心なのかもしれない。
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神妙な面持ちでいる蟷螂と、不貞不貞しくしている蟷螂と、どっちがお好き? 前者であれば、首を手前に引いているだろう。後者であれば、首は斜めになっているだろう。
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蟷螂に下った神様の神託って? ぬぬぬ。しかし、どんな内容だったんだろう?
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斧を振り上げて戦いに明け暮れる蟷螂だが、神様に愛されている蟷螂。お告げは、<ワレハ・ナンジヲ・フカク・アイス>だったんだろうか。
蟷螂の俳句を調べてみました。あるあるある。たくさんあった。
その中で、老爺の気を引いたのをピックアップしてみる。
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蟷螂のいささか誇る心かな 会津八一
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蟷螂の何を持ってか立腹す 夏目漱石
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蟷螂や二つ向き合う石の上 正岡子規
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金剛の露の蟷螂斧上ぐる 川端茅舎
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草むらや蟷螂蝶を捕らえたり 高浜虚子
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蟷螂が片手かけたりつり鐘に 小林一茶
気がつくと青い蟷螂が左の方に来て止まっていた。インド象に止まる禿鷲のように。
畑にいた。首の辺りがなんだかそわそわする。それで気付いて、右手で撥ね除けた。
一回目は抵抗されたが、2回目ではっしと叩いて追いやった。カマキリは畑の乾いた土の上を逃げて行った。
蟷螂は案外人好きのようだ。しかしまた選りに選ってこんな老爺を相手にしなくてよかったろうに。
もうすぎ蟷螂は体の色を褐色に変える。すると秋が冬になる。
カマキリには別名がある。鎌切。斧虫。拝み太郎。かまぎっちょ。いぼむしり。いぼじり。
結局は雨は降らずに一日が過ぎました。途中、2分間ばかり、お天気雨がほんのわずか降りました。顔を濡らしたのでそれと分かりました。
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雨が降らなかったので、畑に出て過ごしました。午前中1時間、午後3時間ほど。午前中はキャベツ苗を南の畑に移植しました。プランターに種を蒔いていたのを。
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午後は裏の畑に出て、スコップで畝を盛り上げ、そこに砂糖のように甘いエンドウ豆の種を1袋蒔きました。袋に、そう書いてありました。<砂糖のように甘い>と。春の収穫を楽しみにします。
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畝作りに時間がたっぷりかかりました。ホースで水撒きをして作業を終了しました。お爺さんは、今日は一日ずっと土弄りをして遊びました。幼児の砂遊びそっくりです。人間の中身がまだ幼児なのかもしれません。
晴れてきました。家の中に居るのはここまでにします。
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といって、老爺と遊んでくれる人はいません。
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老爺はさびしいばっかりです。
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そこを抜けて出なければなりません。
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畑に出て、土を耕して、残っているエンドウ豆の種蒔きをします。
いろっぽいのは、色があるからだ。
白黒映画もそれはそれでいいけれども、色が付いた方がやはり自然だ。
この世には色がある。色がこの世を彩色してくれる。いろどりがそれで一層豊かになる。
風景に色が濃くなった。蔦紅葉も櫨紅葉も柿紅葉も始まった。
自然界だけの現象ではないはずだ。
人も色に染まるはずだ。情緒は触発されて情感を染め上げる。
美しい色に。美しい肌の色に。憂愁の色に。
それで幅が広くなる。狭い路地が広い海に出てぱっと明るく拡大する。
市内は雹が降ったらしいが、この奥深い山里には降らなかった。
いまは明るい日射しが射して天地朗らかである。
市内に住む友人から動画が送られてきた。大粒の雹が砕け散る音がした。
雹が降るほどの秋の深まりということか。
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雹降っておんなを抱いて中和して
おんなを抱いているのは昼の眠りの浅い夢の中。あたたかいものを抱いていれば、人間の寒さがやわらぐはずだ。
薬草園 雨に通草の ころがりて
有森一雄
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通草は薬草。蔓性植物。茎は生薬になる。利尿作用があるとされている。果肉はビタミンCが蜜柑よりも多い。果皮はカリウムを含有する。高血圧予防になる、らしい。
したがって、薬草園にはこの通草が植えてある。秋雨が降っている。通草の実が熟れて、1個だけ、小径の脇に転がっている。雨が、割れた山姥の口から流れ込んで、笑い声が聞こえて、どこかしら不気味だ。
作者のことは知らない。
575の17文字の世界は広い。広々としている。そこに多くのこころを包摂する。遊ぶにはいいところだ。
通草(あけび)蔓良寛の書の筆運び
高沢良一
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良寛様は書がお上手。書は人の生き様、人そのもの。親しまれないはずはない。ふっと見上げると、秋の山中にも良寛様がおられる、笑みを零して。蔓草の通草の曲がりくねった蔓が、良寛禅師の筆の運びの、凜々しい墨痕に見えたのだ。
作者のことは知らない。