１
山里に住んでいるお爺さんがすることは、畑仕事。立ち仕事は出来ないから、風呂場の低い椅子に座って作業をする。それも休み休み。
２
人の顔を見ることはほとんどない。カラスが空を行き交って騒ぐばかり。お爺さんも空を仰いで、口笛を吹いて、遊ぶ。カラスは口笛は吹けない。
３
朝夕は冷え込んでいるけれど、日中は暑い。最高気温は２７℃。畑にいて、日に照らされていれば、汗を掻く。麦藁帽を被って日射しを避けているのだが、背中が焼ける。
４
今日は９時半開始。１２時のサイレンが鳴って、終わりとした。２時間ちょっとだ。巻かない白菜、別名黄金白菜を、プランターから畑に移植した。最後に、ホースで水をたっぷりあげた。
１０年前に死んだおっかさんが息子のところに遣って来て、息子の病気を心配してくれた。死んでいられなかったのだろう。
息子は夢を見ていた。重い病気をしていた。ふうらふうらしながら、唸っていた。
そこへおっかさんが普段着姿ですうういと歩いて遣って来て、７８歳の息子に声を掛けた。死んでいられなかったのだろう。
目が覚めた。息子は大病なんか患っていなかった。安堵した。安堵したが、おっかさんは、あれから、夜道を無事に帰れたのかと気になった。
寒いなあ。寒く感じているだけなのかなあ？ 外の冷気をいれないように、窓を閉めている。
気温２１・７℃。まもなく午前９時。光は眩しい。
夏からいきなり冬になったよう。押し入れから上下の冬着を出してきて、着ている。
テイッシュで何度を鼻水を拭う。やだな。大空を風が行くらしい。ときおり轟音がする。
ふふ、ふふふ。おれは祝福されて、今日生まれて来た、って思ってみる。すると、なにもかもが目新しく映る。とうとう生まれて来たんだあ、おれは、此処へ。そんなことすら考えられて来て、嬉しくなる。ふわっとなる。あたたかいのが、体内伏流水になって流れ出て来る。
祝福している人は、こちら側の岸にも、あちら側の岸にもいる。人の形をとらずに、まだもやっとした心だけってのも見受けられる。うやうやいる。その風景を思い起こすと、またふわあっとなる。
お日様が明るい。朝日が射している。光を受けた畑のアスパラガスがぽぽぽぽぽと鳴っている。
