家を守った大事なアイロンを捨ててしまったので3歳ぐらいの時の筆者と家族の写真。母は美人でした。 母のくれたアイロンがついに壊れた。接触が悪いので修理したかったが古くて部品がないという。偉大なアイロンだった。27年前鳥取県の実家を訪れたとき私がなにげなく「アイロン買わなきゃ」と言ったらしい。親ですねえ、すかさず近くの電機屋で買い、東京に戻る私に持たせてくれたのだった。快適な重さの日立のスチームアイロン、当時の新製品だったようだが良いものかどうか意識もせず使ってきた。すごいもの、と気づいたのはこのアイロンが火事を防いでくれたときだ。娘が大学を出たての社会人一年生、毎朝慌ただしく出かけるのが常だったが、その頃私も外出の多い日々だった。その日も私が出かけたあと娘が出かけ、私が夜帰宅すると、ぞ、ぞ、ぞ~っと胆が冷える光景が・・・アイロン台の上になんと娘のブラウスが広がり、その上にアイロンがペタンと置いてあるではないか。コードはコンセントにつながれたまま。ブラウスには焦げ目が付いていた。アイロンは熱かった。あわててコードを抜いたが、アイロンは炎も出さずに熱くなったり冷えたりを一日中繰り返していたのだった。娘が出かけてから10時間もの間熱いアイロンを衣類に乗せたままよくもまあ火事にならなかったことだ。娘はアイロンをかけているうちに気が変ったのだろう。人使いの荒い会社に勤めていて、朝は早送り状態が常だったから。
今ではサーモスタット付き電気器具は珍しくはないが27年前の話、まして鳥取県の田舎の話だ。便利な商品があふれている今でも私は安物に手が出るが、恐らく母は中年にもなる娘のために最新式の高価なアイロンを持たせてくれたのだった。そのお陰で火事を免れたことは間違いない。その母はまだらぼけながら元気だ。郷里に私が帰るととても喜ぶ。今週また会いに行きますよ、お母さん。頂いたアイロンは27年持ちましたよ。火事から家を守ってくれましたよ!お母さんずっと元気でね!(彩の渦輪)