忙中閑を生み出して旅に出かける筆者は通常旅先の予習をする時間がなく、「地球の歩き方」を飛行機の中で読む程度の準備が多い。この8月気まぐれに選んで出かけたエルサルバドルだったが、会う人々のあまりにも親日的な態度に驚いた。特に「一緒に写真を撮りたい」という人たちが多く、女優さん気分を味わった。首都のサンマルティン広場で握手を求めてきた中年女性、何度も角を曲がってバス停まで道案内してくれたおじさん、バスの乗客は我々夫婦が降りた先の案内係を相談し、若い女性が喜んで引き受けて目的地まで連れていってくれた。タクシーの安い国だが人々との会話と友好が楽しくて市内バスの移動を満喫した。平生三郎公園(彼の寄付で出来た公園)では日本人だと知り入場無料にしてくれ、公園内の博物館では一緒に写真を撮りたいと女性たちが筆者を取り囲んだ。首都から高速バスで1時間のサンタ・アナではカテドラルの近くの富裕な家族に招じ入れられ美味しいコーヒーをご馳走になったが、知識人夫婦が「日本の無償援助には感謝している」と語ってくれた。セロヴェルデ山の頂上付近では数組の観光客の写真の真ん中に立たされたが、その中の一人が「日本企業に勤めているけどその企業哲学は素晴らしい」と語った。
帰国後参考文献を読み、この国と日本は長く深い関係があったことを知った。この国は火山国であるが、日本と多くの類似点があり、中米の日本と称される。 小国で人口密度が高く山も多く資源は少なく地震、風水害に脆弱なので自然災害の支援も行ってきたという。また、エルサルバドル国際空港は日本の資金、技術、人材援助により3年がかりで1980年に完成した、中米最大の近代的な空港である。続く(彩の渦輪)