魂を揺さぶられる観光が出来るスペインを30年ぶりに訪問した。バルセロナから夜行寝台車で早朝に着いた。荷物を預けようにもコインロッカーなし。ホテルを探してコロン通りを歩き、飛び込んだホテル、ヴィネッシーは親切で、泊まり客ではないのに荷物を預かってくれた。「アルハンブラ宮殿の当日券は枚数に制限があるので早く行け」と急がしてもくれた。切符売り嬢が「日本人?そっちの窓口にどうぞ」で即座に入場券を発行してくれた。親切と運に拾われた出足だった。アルハンブラ宮殿は二回目の訪問、ヘネラリフェの「水の宮殿」入口の刈りこまれた高い生垣と噴水を見て「ああこの前これを見た」と思いだした。目的のナスル朝宮殿はイスラム芸術の傑作で1238年ナルス朝初代王アル・アフマールの建築だ。幻想的イスラム文明の輝かしいモニュメントとして代々引き継がれ、1492、カトリック女王イサベルに明け渡すまで250年の歴史を持つ。水鏡に映し出されるコマレスの塔、美しい柱で彩るライオンの中庭、天井の鍾乳石飾りが際立つ二姉妹の間、貴婦人の塔など水と建物の映像は偉大の一語に尽きる。多くの庭園で樹木が水と調和して権力者ならではの贅沢な暮しが刻まれていた。だが総じて派手さはなく、優雅に地味に歴史を偲ぶこの宮殿は日本人の庭園趣向にぴったりあう落ちつきのある遺産だと思った。(自悠人)