あけぼの

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 木の根や鎖に摑まって登る国宝、三徳山の投入堂 

2014-01-16 11:47:04 | アート・文化

Dscn0907 Dscn0910 (1)国宝投げ入れ堂                                                                                 (2)このような木の根につかまって登る       自然の霊気に触れたいと郷里、鳥取県三朝町に出かけた。三徳山は開山1300年の歴史を誇り、その頂上にある投入堂(なげいれどう)は垂直の断崖の穴に建つ。その昔役行者(えんのぎょうじゃ)が法力で岩屋に投げ入れたとされこの名がついた。標高520m、子供が幼児の頃、地面に張り付いている木の根や岩肌の誘導鎖に摑まり、フィールドアスレチックのように急斜面を登ってやっと着いたことを懐かしく思い出した。夏場は息切れと大汗、秋は落ち葉で滑り危険、冬場は登山禁止。遭難者も出るので登山口で名前を記入する。マチュピチュの上に聳えるワイナピチュ登山時にも同様に記名させられた。

 東京から夜行バスで倉吉に着いた。バス停前のホテルでしっかり朝食を食べて腹ごしらえ、半世紀以上住んでいた郷里に思いを馳せながら目的の三徳山へ向かった。バスで30分、街道筋に家は増えたがのんびりムードは昔のままだ。三徳山に近づくに従って道は急こう配となる。運転手に促されてバスを降りたら石段が見えた。一人では登山は許可されない。事故があった場合対応できないからだという。暫く待ったが同伴者が現れない。いったん下山し周辺を散策、改めて参詣案内所に向かった。30分待っただろうか。遂に来た!若者だった。早速靴底の凹凸度を調べて許可され、入山料を払って三仏寺本堂まで石段を上がった。偕成院、輪光院、宝物殿を経て本殿へ。参拝登山事務所でまた料金を払い、再び靴底をチェックされ、手荷物を預け登山口の赤い宿入橋を渡った。岩だらけの川には天然記念物サンショウ魚がいる。往復で2時間、けもの道や崖を這いあがるような場所ばかり。

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 投入堂は垂直な断崖に浮かぶとも立つとも表現し難い優美な姿で建っている。木造檜造りだ。長さの異なる13本の基礎柱が悠然と岩盤の上に立ち、その上に投入堂が自己を主張している。荘厳そのものだ!京都、清水寺の舞台のミニチュア版とでも言おうか。崖の穴にすっぽり収まっている造形美、苦労して上がった意味があった。春夏秋冬、自然の色彩変化にマッチする容姿はまさに天然の美だ。山岳信仰の霊場にふさわしい建造物、魂が洗われる。座禅を組めば人間を超越する。下山時の緊張度もシニアには想像以上だった。

三朝温泉:三徳山の帰路立ち寄れる三朝温泉はラジューム含有量世界一、山陰の名湯で三朝川に源泉がある。登山の疲れを癒すには丁度良かった。河原に無料の露天温泉もあり誰でも入浴出来る。川の水量で温度が自然調整される珍しい温泉である。初夏は河鹿(かじか)の鳴き声に旅情を誘われ、温泉気分がいや増すこと請け合いだ。投入堂は山陰の片田舎にあり、昔は交通も不便で余り知られていなかったが、現今は航空機で簡単に行ける。地元で世界遺産登録運動を始めたこの三徳山に登攀し、「人間年ではない」と再確認した。(自悠人)