かっ飛ばせ借金 打ち勝て倒産

 
 ‐オグチ経営研究所‐

 ☆★自分でできる経営の再生と整理★☆

  

心の痛む破産

2008-09-15 | 事例
「0が割腹自殺したって。」
噂は極力押さえております。然し不渡りを出せばどうしても広まります。
「会社の会議室で自分の首の頚動脈を切り、腹に小刀を突き立てたって。」

幸い発見が早く一命を取り止めました。
浅かったでしょうが、今時物すごいことをする人もあったものです。
退院まで1ヶ月近く懸かりましたから、下手なお芝居で無かった事は事実です。

田舎から出てきて45年。印刷一筋でした。
お陰で借地ですが5階建てのビルも出来ました。最上階は自宅です。
然し、此処10年は毎日が針の筵でした。
印刷業が下降の一途です。

印刷業は特に設備の変化が早いです。償却に何年も掛かる高額の
機械を導入させ、償却しきれないうちに次の機械を入れないと
商売に負けます。それで居て仕事量はどんどん減っています。
其の上最近立てたビルの返済があります。

ついに手形の決済資金の目処さえ立たなくなっていたのです。
0は何時かは不渡りと覚悟して居ました。
ですから不渡りを出すことを恐れては居ません。
0ガ恐れていたのが自分の倒産により、大恩のある保証人に
迷惑が掛かることでした。

何故か非常に0を面倒見てくれた人です。
この人が居なれば、今日の0は無かったでしょう。
ビルを建てる時、其処まで来た0を何より喜んでくれました。
保証人になったのです。しかも自宅まで担保提供してです。
其の恩人も亡くなりました。然し保証は其の奥さんと息子に変わり、
担保はそのままです。
「自分はどうなっても良い。保証人に迷惑を掛けれない。」
其れが0を1番悩ませたのです。

不渡りを目の前にして考えて居るうちに何がなんだか解からなくなって、
つい机の上のカッターに手を伸ばして居ました。

勿論未遂の翌日、不渡りは発生しました。
奥さんは病院に付きっきり。
最も居ても完全の主婦ですから解かりません。
近くの弁護士に処理をお願いしました。
「破産しかないだろう。全部で200万ぐらいは懸かりそう。手付け30万頂戴。」
然し弁護士も債権者や得意先など何もわかりません。
とりあえず請求だけは止めて後は当人の退院を待とうということになりました。
電話屋手紙は全て弁護士に回るようにして退院を待ちました。

退院です。
帰宅して現状を知った社長は直ちに破産を中止しました。
「破産をすれば即保証人に行く。其れが耐え切れないから儂は
 こんな事をしたん だ。先にビルなどを処分してその間に方法を
 考えよう。破産はしない。」
此れが0の退院後の最初の決定です。弁護士を断りました。
30万は戻ってきません。

あらゆる支払先に話して支払いを待って貰いました。
自殺未遂を知ってか何処も協力してくれます。
漸くビルも売れました。案外早く、退院から10ケ月目でした。
0は引っ越さなければなりません。
45年前の故郷近く漁港のある町に越すことになりました。
此処ならば7万の家賃を払って年金だけでやっていけると思ったからです。
然し何より遠くに逃れたかったという気持ちが強かったのです。

事情は此処から急変しました。
0がビルを売った。事業は完全に止めた。
当人は田舎に引っ越すらしいと解かると今まで
待ってくれた請求が、1度に来るようになったのです。
0は其れを無視して引っ越しました。
請求は追いかけてきました。

固定資産税や社会保険が先ず五月蝿かったです。
それに小口取引先が続きました。彼らはもうこれ以上待てない。
払えないならば破産しろと強気です。

信金も此処まで追いかけて来ました。
商売上の残金の請求です。ローンの残金は保証人に
請求しだしたそうです。最も彼が恐れていたことです。
しかし、保証人が自宅を売却することで信金と話し中と聞いて、
心が痛むと同時に半ばほっとし田事は事実です。
「直接には関係ない保証人の母子。どのくらい恨んで居るだろうか。
 然し愚痴一つ云わずに自宅まで手放す覚悟をして居たんだ。」
あるいは0の自殺未遂の時から覚悟していたかも解かりません。
とにかく0はほっとしました。急に肩ら力が抜けました。

0はあれほど嫌っていた破産を急に検討し始めたのです。
保証人のことさえなければ破産した方が遥かに気が楽です。
同時破産が出来るだろう。そうすれば夫婦で10万以下で破産が出来る。
今までやってはならないと信じてきた破産が急に浮かびあがったのです。

夫婦二人の同時破産は、会社も破産しなければ駄目と云う裁判所の
判断で出来ませんでした。
然し、裁判所の近くの司法書士が全てを20万で請け負ってくれました。

人として大恩のある方に砂をかけてた。そうした思いはありますが、
先ずは他の催促は全て止み、何年か忘れていた安らぎが戻ってきました。

そんなとき、以前の破産通知で住所が解かって居たのでしょう。
1通の手紙を貰いました。
保証人の奥様からです。

「私も子供も自宅を売却しただけでは保証債務の半分にもなりません。
 近く私たちも破産をします。」
0に対する恨み語とは一言もなく、かえって傷跡を心配した言葉がありました。

此処2-3日、0の喋り方が少しおかしいです。ろれつが回りません。
0の奥さんはお料理の包丁すら片つけています。





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