変な手紙が舞い込んだ時、叔父は頭にきたそうです。
「Jさんのご不幸に対しまして謹んで哀悼の意を表します。
早速ながら貴方はJさんの相続人になって居られますので、
Jさんが保証しました、債務を引き継いで頂くことになります。
貴方が既に相続放棄をお済でしたら、その書類をコピーして
送って頂けませんか。若し相続をしていらっしゃますならば
今後のお支払い方法を打ち合わせたく、1度ご来社を願います。」
Jの店は事実上倒産をして居ます。
銀行債権は全てサービサーに譲渡済みです。
「Jは俺の兄貴だ。奥さんも居るし、子供も居るではないか。
俺は相続人じゃあない。其の俺に相続人なんてトンでもないことを
言う。何も貰っていないよ。」
早速叔父は文句の電話を入れました。
勢いの良かった電話は次第に声が小さくなり、終わった時は
叔父の顔色は蒼白でした。
「子供が全員相続放棄をして居て、且Jの親も居ないときは、
兄弟が相続人になるって。奥さんは相続をしようがすまいが、
関係ないって。」
子供も親も居ないときは兄弟が相続人になることは知っています。
しかし、子供が相続放棄をし、妻が全部相続をした場合、
親が居なければ兄弟も相続人になる事は知りませんでした。
何も遺産を貰わなくても、借金などマイナスの遺産は、
放って置くと相続人に降りかかることも知っています。
だから1年前に祖父がなくなった時、全てをJが相続をして
叔父たち兄弟は相続放棄をしたのです。Jは父親と共に
然借入を保証して居ましたから、放棄をしなくても同じです。
其のJも膵臓癌になりました。
転移が早く、知ったときには手遅れ。4ヶ月で亡くなったのです。
祖父は創始者です。
このあたり、いや県下では有名店になりました。
其れを兄のJだけが継いだのです。
今は店も大型店に食われて如何に老舗と云っていても、倒産同様です。
銀行借入は何処も不良債権になって居ます。
それに比して、叔父たちは勤人でした。
結構良い地位まで上って今は自宅のローンも終わり、
最近、正式に退社し、今は嘱託勤めです。
祖父の時に負の相続がある。此れは資産の配分通りの相続でなく、
法定配分で相続があり、正式に相続放棄以外は返済の義務があると
聞かされました。
ですからこの時は保証人でない叔父は直ぐに相続放棄をしたのです。
負の相続の厳しさは知っていました。
あのときは被相続人の子供であったから当然としても、
今回は子供は居るし、普通ならば相続権は無い身です。
其れが叔父の身で相続しなければならないなんて、思いもよりません。
それに、そう相続放棄の3ヶ月の期間はとうに過ぎていました。
次の日に叔父は晴れやかな顔をして居ました。
「負の相続は死亡から3ヶ月では無く、其れを知ってから3ヶ月で
良いそうだ。相続の時に何も貰ってなければ相続放棄が出来ると
云う事です。儂は勿論何も貰ってないから、放棄が出来ると思うよ。
知ったのはサービサーからの書類で知ったとしてもおかしく無いものな。」
弁護士に聞いたのでしょう。
早い方が良いと云うので早速家庭裁判所に申請をしに出かけました。
大誤算がありました。
尋問で叔父の相続放棄は却下されたのです。
負の相続放棄が出来るのは知ってから3ヶ月です。
死亡前から知って居れば普通の相続と同じく死亡から3ヶ月です。
叔父は祖父の時に相続放棄をした。理由は負債があったからです。
その負債は全て兄ガ引きました。
ですから兄に負の遺産がある事を知らなかったと云っても
認めがたいと云うのです。
又子供が放棄すれば、叔父・叔母に相続が移るなんて
知らなかったと云っても、
「法で決まっています。法を知らなかったと云って
許されるものでは有りません。」
と当然の返事が、戻って来ただけだと云って居ました。
相続人を免れそうも有りません。
サービサーが、どんな回収をしてくるか判りません。
しかし腹を決めました。
何をやっても詐害行為にはなるだろう。
刑事問題にはなるまい。
こうなれば自宅は全部妻に贈与しよう。
2000万の控除だけで杷不足で、若干贈与税を払うようになるが、
やむを得ません。預金は全て少し離れた銀行に名義を変えて預けました。
サービサーに云った骨子です。
「何も遺産は貰っていません。しかし放棄もして居りません。
放棄をしないとこの様なことになるなんて知りませんでした。
知っていたら当然やります。第一子供が相続放棄をしたか
教えてくれるところなんて現実には無いでしょう。
しかし、と言ってもお宅は私に返済を希望するでしょう。
今の私には資産はありませんが、200万だったら都合できます。
此れでご勘弁をお願いできないでしょうか。」
負の遺産。
トンでもないところに迷惑を掛けます。
法をもう少しうまく改正できないものでしょうか。
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「Jさんのご不幸に対しまして謹んで哀悼の意を表します。
早速ながら貴方はJさんの相続人になって居られますので、
Jさんが保証しました、債務を引き継いで頂くことになります。
貴方が既に相続放棄をお済でしたら、その書類をコピーして
送って頂けませんか。若し相続をしていらっしゃますならば
今後のお支払い方法を打ち合わせたく、1度ご来社を願います。」
Jの店は事実上倒産をして居ます。
銀行債権は全てサービサーに譲渡済みです。
「Jは俺の兄貴だ。奥さんも居るし、子供も居るではないか。
俺は相続人じゃあない。其の俺に相続人なんてトンでもないことを
言う。何も貰っていないよ。」
早速叔父は文句の電話を入れました。
勢いの良かった電話は次第に声が小さくなり、終わった時は
叔父の顔色は蒼白でした。
「子供が全員相続放棄をして居て、且Jの親も居ないときは、
兄弟が相続人になるって。奥さんは相続をしようがすまいが、
関係ないって。」
子供も親も居ないときは兄弟が相続人になることは知っています。
しかし、子供が相続放棄をし、妻が全部相続をした場合、
親が居なければ兄弟も相続人になる事は知りませんでした。
何も遺産を貰わなくても、借金などマイナスの遺産は、
放って置くと相続人に降りかかることも知っています。
だから1年前に祖父がなくなった時、全てをJが相続をして
叔父たち兄弟は相続放棄をしたのです。Jは父親と共に
然借入を保証して居ましたから、放棄をしなくても同じです。
其のJも膵臓癌になりました。
転移が早く、知ったときには手遅れ。4ヶ月で亡くなったのです。
祖父は創始者です。
このあたり、いや県下では有名店になりました。
其れを兄のJだけが継いだのです。
今は店も大型店に食われて如何に老舗と云っていても、倒産同様です。
銀行借入は何処も不良債権になって居ます。
それに比して、叔父たちは勤人でした。
結構良い地位まで上って今は自宅のローンも終わり、
最近、正式に退社し、今は嘱託勤めです。
祖父の時に負の相続がある。此れは資産の配分通りの相続でなく、
法定配分で相続があり、正式に相続放棄以外は返済の義務があると
聞かされました。
ですからこの時は保証人でない叔父は直ぐに相続放棄をしたのです。
負の相続の厳しさは知っていました。
あのときは被相続人の子供であったから当然としても、
今回は子供は居るし、普通ならば相続権は無い身です。
其れが叔父の身で相続しなければならないなんて、思いもよりません。
それに、そう相続放棄の3ヶ月の期間はとうに過ぎていました。
次の日に叔父は晴れやかな顔をして居ました。
「負の相続は死亡から3ヶ月では無く、其れを知ってから3ヶ月で
良いそうだ。相続の時に何も貰ってなければ相続放棄が出来ると
云う事です。儂は勿論何も貰ってないから、放棄が出来ると思うよ。
知ったのはサービサーからの書類で知ったとしてもおかしく無いものな。」
弁護士に聞いたのでしょう。
早い方が良いと云うので早速家庭裁判所に申請をしに出かけました。
大誤算がありました。
尋問で叔父の相続放棄は却下されたのです。
負の相続放棄が出来るのは知ってから3ヶ月です。
死亡前から知って居れば普通の相続と同じく死亡から3ヶ月です。
叔父は祖父の時に相続放棄をした。理由は負債があったからです。
その負債は全て兄ガ引きました。
ですから兄に負の遺産がある事を知らなかったと云っても
認めがたいと云うのです。
又子供が放棄すれば、叔父・叔母に相続が移るなんて
知らなかったと云っても、
「法で決まっています。法を知らなかったと云って
許されるものでは有りません。」
と当然の返事が、戻って来ただけだと云って居ました。
相続人を免れそうも有りません。
サービサーが、どんな回収をしてくるか判りません。
しかし腹を決めました。
何をやっても詐害行為にはなるだろう。
刑事問題にはなるまい。
こうなれば自宅は全部妻に贈与しよう。
2000万の控除だけで杷不足で、若干贈与税を払うようになるが、
やむを得ません。預金は全て少し離れた銀行に名義を変えて預けました。
サービサーに云った骨子です。
「何も遺産は貰っていません。しかし放棄もして居りません。
放棄をしないとこの様なことになるなんて知りませんでした。
知っていたら当然やります。第一子供が相続放棄をしたか
教えてくれるところなんて現実には無いでしょう。
しかし、と言ってもお宅は私に返済を希望するでしょう。
今の私には資産はありませんが、200万だったら都合できます。
此れでご勘弁をお願いできないでしょうか。」
負の遺産。
トンでもないところに迷惑を掛けます。
法をもう少しうまく改正できないものでしょうか。
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