かっ飛ばせ借金 打ち勝て倒産

 
 ‐オグチ経営研究所‐

 ☆★自分でできる経営の再生と整理★☆

  

銀行の手口

2010-09-28 | 事例
弟が急死しました。
たった一人の弟。母親の土地に小さな4Fのビルを建て、
その管理会社の社長をしていました。社員は誰も居りません。
弟一人の会社です。
かっては町随一の場所もデパートの閉店に伴い、繁華街は駅南に移り、
空き室がちでビルの収益も上がりません。
丸々銀行の借金で建築しましたが、弟一人の給料を引くと、
返済も十分に出来ません。
銀行とのいざこざは、保証人の母や兄の彼にも若干耳に入って居ります。

社長も社員も居ない会社は困ります。彼は、弟の家族から泣きつかれ、
暫くの間のつもりで、其の社長を引き継いだのです。
銀行からの要請もあったのです。

彼の会社は宅配弁当で評判も良く、その内容も銀行は買って居ます。
銀行はビルと同じ銀行です。

ところが3ヶ月もすると、銀行の態度が変わって来たのです。
何でも協力すると云う態度が滞留しているビルの返済の催促になったのです。
彼に払える筈が有りません。
「直ぐビルを処分するから、それまで待って下さい。」と頼んでも、
間単にビルは処分できません。

更に2ヶ月も過ぎた頃、銀行はいきなり、地続きの彼と母の自宅を仮差押えてきたのです。
母親は「私は地代も貰って居なかった。それなのに、自宅が取られてしまうなんて。」
と大騒ぎです。この間は彼も全然払っていません。

「私は単に社長代行です。それをいきなり自宅を仮差とはひどいではありませんか。」
「いえ、この物件は先代の社長がご健在でしたらとっくに競売まで行って居たでしょう。
  社長がお変わりになったので、当行も待てるだけ待ちました。    
  当行もこれ以上待っ居ることは不可能です。
  これ以上は監督官庁の手前もあって待てないのです。
  それに今回は直接の債務者はご他界で居りませんから、
  連帯保証人に請求するしかありませんでした。」
彼は余りこんな議論は好きではありません。

半ば喧嘩を覚悟した彼に銀行から提案がありました。
「貴方の会社であのビルをお買いになったら如何ですか。資金はご用意します。」
会社でビルを買って、其のお金でビルの返済をしなさいと云うのです。
ビルと自宅の時価を加えても借金の額にはなりませんから高い買い物です。

彼はこの話はキャンセルのつもりで、それでも念のために保証協会に尋ねました。
「銀行と喧嘩になる。下手をすると弁当屋の借金は代位弁済になるかも知れない。
 その時は今迄とおりの支払を続けますが、保証協会は借入の保証をしてくれますか。」
NOが保証協会の返事でした。
「代位弁済になると、それが解除されるまで保証はしません。」が保証協会の返事です。
たまたま、弁当屋とビルとが同じ銀行で有ったばかりに、銀行の提案を吞まないと
弁当屋までもおかしくなるのです。

彼は提案を受け入れました。と言うより吞まざるを得ませんでした。

具体的な借入の詰めの話です。
銀行は絶えず、彼のことを考慮に入れて居る様な口ぶりです。
多だし、やることは えげつなかったのです。

先ず、仮差は勿論解きます。ただし今度は弁当屋に融資をした見返りの担保に必要です。
返済は10年です。
「当初は家賃の収入があるから払えるではないか。売却すればぐんと減るから
 後は払えるでしょう。出来ないときはいくらで当行はご相談に応じます。」
と云う態度です。

弟の自宅の事もありました。
近く、競売の予定だそうです。
「自宅のローンは必ず保険が掛かっているのでありませんか。」
「いやこれに限り入って居ませんでした。」
何故入っていないのとつつく気力もありません。
ただ、傀儡のように銀行の云うことを聞いただけです。

金回りの良かった弁当屋も、急に月に50万の出金が増えたために、苦しくなりました。

工場は借家ですから差押えはありません。
何かあっても、お客様は勿論、仕入先にも迷惑はかけません。
自宅は買い戻しても安いもの。
彼は近いうちに一切の返済を止める予定です。


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