アンティークマン

 裸にて生まれてきたに何不足。

登山の正否…三浦さんはどう下りても許されます

2013年06月05日 | Weblog
 徒然草第百九段…
 「高名の木登りといひし男、人を掟てて、高き木に登せて…」
 意味は・・・「木登り」と名高い植木屋の頭領がおりました。
 ある日、職人を指図して高い木に登らせて枝を切らせておりました。
 大変高い木の上では何も言いませんでしたが、職人が作業を終え木から降りてくる時、家の屋根ほどの高さになりますと職人に声をかけました。
「用心しろ!十分注意して降りなさい!」
雇い主がそれを聞いて不思議に思い、「木登り」の頭領に尋ねました。
「そればかりの高さなら、飛び降りてでも降りられようが、何故、そのような事を言うのか?」
 頭領は答えました。
「あ、あのね!目がまわる程に高い枝の上では、自分で勝手に恐れますから私が注意するに及びません。落っこちるのは、きまってもう安心という高さになってからなので御座います」
汚い格好の植木屋の親父の言う事だか、聖人の戒めにかなっている。
蹴鞠でも、難しいところを蹴りだしたあとに、安心すると、簡単なところで落とすという。

三浦雄一郎さんの、「ヘリコプターでの下山」…賛否入り乱れております。
 三浦さんは、80歳という世界最高齢で世界最高峰のエベレストに登頂。多くの人々に感動と勇気を与えました。しかし下山に際して、悪天候や疲労のため、自力での下山を途中で断念。キャンプ2からベースキャンプまでヘリコプターで下山。

 昨秋、タレントのイモトアヤコがマッターホルンに登頂(テレビ番組の企画)した後、ヘリコプターで下山した。そのときアルピニストの野口健さんが、「個人的な考え方ですが、山登りというものは自力で下山するところまでが山登り」と、発言していました。野口さんは、25歳の時に(当時の)七大陸最高峰の世界最年少登頂記録を更新した人物。
 だからというわけではないが、「自力で下山するところまでが山登り」は、正論だと思います。
 遠足の日、教師は、「皆さん、無事に家に帰り着くまでが遠足です」と、言います。目的地までは歩いていくが、帰りは家の人に車で迎えにきてもらうのは…遠足にはなりませんね。

 乙武洋匡さんは、「三浦雄一郎さん。『ヘリを使って下山なんて、登頂成功とは言えない』と批判する声もあるようだけど、とても悲しい。今回の結果はもちろんだけど、あの年齢でチャレンジした姿勢こそが、もっと評価される社会であってほしい。三浦さん、登頂お疲れさまでした。心から敬意を表します」

 私は、野口さん、乙武さんと同じ考えです。矛盾しているんじゃないかって?三浦さんは、「登山の定義」には合っていません。だから野口さんと同じ考え。しかし、登頂したことは歴然とした事実。偉業ですよ。ガタガタ言って偉業に水を差すのは良くない…乙武さんと同じ考えです。

 枕の高名の木登りは、何だったんだって?そのまんまです。「登るより、下りる方が危険が多い」と、いうことを徒然草から引用して示したわけで…。
 三浦さんは、登山はしなかったかも知れないが、登頂はしました。