デカダンとラーニング!?
パソコンの勉強と、西洋絵画や廃墟趣味について思うこと。
 



ヨハン・クリスティアン・ダール「満月のドレスデン」(1839) ドレスデン、国立近代絵画館

今、世界陸上がベルリンで開催されているが、マラソンの選手達が走っているコースの背景を見ると、とりあえず何か書きたいという意欲にとりつかれてしまったのだった。
かといって「ひとりよがりな回想」のベルリンの記事は済んでいるので、ベルリンからドレスデンへ戻った翌日のノイエ・マイスターの記事のつづきを書こうと思ったわけである。
本当はフリードリヒの作品を後一回紹介したかったが、TVでベルリンの風景と私の印象のなかでダブったのは、なぜかドレスデンの夜景の絵だったので、今回はダールの「満月のドレスデン」という絵について書きたい。

ダール(1788-1857)については前に少しだけ触れたことがある。彼はノルウェーの画家で1818年ドレスデンにやってきた。彼はコペンハーゲンで17世紀オランダ風景画の研究と半ば独学の自然観察により、型にはまらぬ即物的描写を身につけていた。1820年から1821年までのイタリア旅行で、さらに風景を視覚現象としてとらえる方向に進む。ドレスデンに帰ったダールはフリードリヒと同じ家に住み、互いに影響を与え合った。ダールはフリードリヒの精神世界の表現に関心を示したが、やがてそこから離れていく。

現地ではドイツ語で作品名が記されているので、以前紹介したベルナルド・ベロットのときと同じように、最初どこの風景なのか気づくのに少し時間がかかった。でも、「この風景、ドレスデンの夜景じゃないか!」と気づくと、ノイエ・マイスターに「満月のドレスデン」があることの意義みたいなのを感じるのである。
そして、雲が月で黒く映えてまるで動いているように見えたことで、ダールの技術のすごさに目を見張ったのだった。私は美術館では一通り作品を見たあと、出口からユーターンして再度鑑賞したいと思った、いくつかの作品の前に立つが、「満月のドレスデン」もその作品のひとつだった。精神性うんぬんよりも眼前の動きと美を追求した絵から、現地への思いを膨らませる強烈な憧憬を感じぜざるを得ない。
この絵をみたときはダールがノルウェー出身であることを知らなかったし、今ならベルナルド・ベロットやオランダ風景画の融合みたいで、さらにおもしろく感じる。そして、故郷のノルウェーの自然に強い思いをもっていた人が、それに負けないくらいドレスデンを即物的かつロマンティックに描いたこと自体に、ダールのドレスデンへの思いを感じさせる気がするのだ。

ちなみに、この絵は4年ほど前に「ドレスデン国立美術館展」を飾る一枚として、日本で見ることができたそうである。

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )