熱々の栗
13時前となり、さすがに空腹感を覚えてきた。雨風も強くなってきて寒さが体に堪えてきた。
仏国寺へ戻るバスはなかなか来なかった。ベンチで待っていると、隣に座った夫婦の奥さんの方が、突如、焼き栗と銀杏みたいな豆?を私の手に置いたというかねじ込んできた(笑)。一人分としては多かったのだろう、私に押し付けたのだろうが、体の冷えた私には絶好のおつまみだった。素直に「カムサハムニダ」と伝えて平らげた。
食べ終わってから暫くして仏国寺行きのバスがやってきた。上りの石窟庵行と異なり、下りの仏国寺行は早かった。
市内へのバス10番を待つ
バスを待っていると白人男性から英語できますか?と訊かれた。この停留所に来るバスには市内のバスターミナルに行くものがあるのか、教えてほしいという。
我々の待っているバスは市内の中央街に行き、釜山やソウルその他に行くバスが発車するバスターミナルに行くよ、と答えた。
出身を訊いたらドイツから来たとのことで、昨日、釜山に着き、日帰り旅行で慶州に来たのだという。今日中に釜山に戻り、それから福岡→広島→関西圏→東京へ行く予定だという! 素直に、すげえな!と思った。それはまた、飛行場以外の観光地で、日本人以外で「今日・明日に日本に行く」という外国人旅行者に出会ったのは初めてだった故の驚きだったのかもしれない。
私は過去にドイツを旅した思い出話をした。訪問した都市を聞いて、彼は縦横無尽ですね(笑)とジェスチャーを交えてマスク越しに言ってくれた。特にドレスデンが気に入ったことを熱く語ってしまった。
バスの時刻表や路線図について、いろいろ話しているうちに言語の話題になったが、彼は日本語は少しだけ知っているものの、ハングルに対しては文字へのとっかかりの時点で難易度が高く、また覚えれなかったので、ハングルで韓国の人に話しかけれなかったのだという。
私はハングルの文字と表音のイメージがなかなか一致しなかった頃のことを思い出し共感した。もしハングルが日本語と類似点・共通点を見出すのが困難な言語だったなら、私だってハングルの文字の成り立ちの時点で難易度が高かったろうと正直に思うし、実際、2020年の年明けに初めてハングルを学び始め、緊急事態宣言や蔓延防止等重点措置で旅への情熱が失せてからはサボっていた期間が長く、それで旅の一ヶ月前に即席で学びなおした程度で訪韓している状態では、ハードルの高い外国語であるのは変わりないのだ。
バスを待っていた25分くらいの短い時間とはいえ、ありきたりな雑談でもそれなりに突っ込んだ内容を結構長くお喋りしていた感じがした。旅先での旅行者と喋ったら、初対面であっても意外に話の内容が濃くなったりすることもあるからおもしろい。
会話が落ち着いたタイミングで、傍にいた韓国人の眼鏡の青年から「시내?(シネ(市内)?)」と訊かれた。バスは市内に行く?と私に訊いたのだ。
日本語としての聞こえ方だと最悪の悪態なのだが、勘違いせずに済んだ。韓国語をちょっとでも学んでおいてよかった(笑)。
つづく