1993年
2年目の大野、遠藤がいまひとつ伸び悩む中、「予想外の活躍」(清水監督)を見せたのが183センチ、83キロの大型ルーキー中山(中大)。140キロ台の速球とフォークのコンビネーションがさえ、ヤマ場の二回戦・東芝府中戦では2点に抑える力投。代表決定戦のプリンスホテル戦では、巧みなけん制も披露した。
大物ルーキー中山が両手をVの字に高々と広げ、中堅へ舞い上がるウイニングボールを目で追った。強打が看板の加古川市を5安打1点に抑える公式戦初の完投。名門・東京都が若い力の台頭によって久々につかんだベスト4。「言うことなしのピッチング」就任1年目の清水監督の言葉が弾んだ。フォークボールの連投だった。中山自身は「半分ぐらい」というが、7割近くがフォークではなかっただろうか。今年四月に清水監督が初めて見た時、「低めのストライクゾーンに集まるから三振が取れる」とほれ込んだという独特の変化球。中大時代はほとんど二部リーグにいて知られていないものよかった。一回、先頭の鈴木に二塁打され、バントで一死三塁とピンチに立たされたが、三、四番をフォークで投ゴロ、空振り三振。二回はスコットに「弱いというデータ通りに投げたのに」(中山)という内角高めの球を本塁打され、唯一の得点を許したが、三回一死二、三塁を味方の好守で切り抜けてからは、八回まで1人も走者を出さない完ぺきなピッチングだった。九回に連打をあびてヒヤッとさせたものの、後続をこれも自慢のフォークでピシャリと断ち切った。