1982年
「これで少しは信用を回復できた。ローテーション入り?ハイ、なんとかやれそうです」打高投低が不安視されるヤクルト投手陣。そのなかで、三年目のサウスポー、大川が二度目の先発で好投し、武上監督をひと安心させた。五回を投げ、被安打3、失点0。最初の登板(5日・巨人戦)で5イニング、6失点だったことを思えば、別人のような変身ぶりだ。スタートはいつもの悪い癖が出て、ボールが先行。島田誠に四球を与えた。そのあと一死二塁とされたが、クルーズ左飛、柏原をボールになるストレートで空振りの三振。ここで「きょうはいける」と自己暗示をかけたと言う。そして、二回からはすっかり立ち直り、厳しい堀内投手コーチからのひとこと「ナイスピッチング」と声を掛けられた。内容も見るべきものがあった。柏原を2打席ともストレートで三振に抑え、余裕の出てきた五回には得意のけん制刺しを決めたり、島田誠からフォークボールで見逃しの三振を奪った。「カーブもフォークボールも低めに集まった。大矢さんのサインもよく見えたし、80点はあげれます」と自己採点した。武上監督はユマ・キャンプ中、「竹本、大川、宮本、宮城の四人から最低二人が一本立ちしてくれれば…」と言い続けていた。六日の巨人戦でルーキー宮本にめどがつき、この日は大川が「合格点」(堀内コーチ)弱体投手陣に明るい材料がそろい始めた。「次の登板では監督に必ず先発入りOKの返事をもらってみせます」自信ある言葉でインタビューを締めくくった。