1992年
村野工の安達は大会屈指の大型左腕。スライダー、カーブの配球がうまい。
誰が名付けたか神戸の星といわれているのが村野工の安達智次郎。身長185㌢、体重75㌔の大型左腕エースだ。計算技術検定、情報技術検定ともに3級のこの神戸の星、新チーム結成以来12試合に登板して8完投。うち5完封で負け知らずの9勝。投球回数82回2/3で自責点13、防御率1.42。奪三振は72を数える。しかも投げた試合にはPL学園や天理、東洋大姫路、神戸弘陵、育英といった、全国にその名を知られている強豪が含まれている。昨年の近畿大会初戦の大産大高との試合ではイニングごとに球速を増し、後半の7割、なんと球速142㌔。スピードガンで手にしていた各球団のスカウトたちが思わず顔を見合わせ、うなったとか。「負ける気が全然、しないんです。負ける気が・・・」本人がこういったのは、センバツ出場の抱負を語ったときだった。体もでかいし、球速もすごいが、いうこともまた大きい。「昨年の夏、ものすごく悔しい思いをしたので、センバツでは絶対にゼロで抑えてやろうと心に決めている。だって、あの日のことがあったから、春のボクが・・・」そういう話もしてくれた。昨年の夏とは、野球部創部68年目で初出場した甲子園大会のこと。安達は初戦の専大北上との試合で、8回裏にピンチをつくってマウンドを降りた。そして敗戦ー。「あの悔しさは忘れません」と、いまもまだ口にする。気が緩んだ練習をしたときなど、自宅に戻ると専大北上との試合のビデオを見て反省もしてきた。「あのときのビデオはもう20~30回も見ました。何度見ても悔しい。そして、ようしというファイトを湧かせた」140㌔台の速球のほかに角度の鋭い縦のカーブ、スライダー。そしてシュートが、これまた威力がる。とくにシュートは抜群のキレ味だ。が、県大会でも近畿大会でも一球も投げなかった。「シュートを投げるのは春の甲子園大会のマウンド。その日まで封印しているんです」シーズンオフにウエートトレーニングとランニングに意欲的に取り組んできたというだけあって、実に逞しい体つきだ。「ボクの目標は優勝。この二文字以外には何もありません。その前にまず、初戦で内容のあるピッチングをして、昨年のうっぷんを晴らさないと・・・」優勝の二文字を胸に力強く語る安達。この大型左腕の好きな球団は日本ハム。憧れの投手は今シーズンに復活を賭ける近鉄の阿波野だそうである。今大会№1の左腕投手にあげられている村野工のエースが神戸の星から甲子園の星になるか。その左腕に注目したい。