1970年
「プロで十分通用するだろう。性格的に細かいところを気にしない、いわゆるマイペース主義の男だ。技術的にも外角の速球という武器を持っている。欲をいえばもうひとつスピードと制球力をつけることだろう。杉田の育ての親、中大の宮井監督はこう評している。183㌢、75㌔、投手としてはまずまずの体格である。だが外見はヌーボーとしてとらえどころがないので、他人に強烈な印象を与えるタイプではない。ところが杉田はそのヌーボーぶりをうまく利用している。ピンチを迎えようとうまくいこうと、表情を変えないから相手に気持ちを読まれることが少ないのだ。合宿では「寝てばかりいる杉田」といわれるほど暇さえあればイビキをかいていた。また練習ぎらいでも通っていた。それが夏ごろから一変した。秋のリーグ戦に備えて自発的にランニングを開始、そのせいか今季は下半身がめっきり安定した。だから「あれが杉田か?」とネット裏の関係者はビックリしたものである。変化球のキレは見違えるほど鋭くなり、直球も打者の手元でグンと伸びるようになった。そして今季は4試合を完投。8勝1敗の成績で中大を七シーズンぶり十八度の優勝に導き、見事学生生活の最後を飾った。彼は早くから「プロでも通用する逸材」とスカウト連から認められていた。しかし好不調の波が大きいのと、体質的に故障が多いことが不安がられた。おおらかでノンビリ屋の半面、投手独特の神経の細かいところがあった。一部では「デリケートすぎる」とさえいわれたほどだ。それが最もよく現れるのが苦手な寒い日のピッチングだ。寒いというだけで寒さに弱いという気持ちを持ってしまい、自分で自分を苦しめるピッチングをやってしまう。こんな欠点はあるが、自分のペースで試合が進んだときは抜群の力を発揮する。決めダマの外角速球がビシビシ決まり、シュート、カーブの横の変化で打者を料理していく。それに打者の心理を読むのもうまい。宮井監督は「野球ばかりではなく人間的な面でも本格派らしく育てたつもりだ。俗にいう野球バカではない。杉田はもともと常識を持った円満な性格の男だ。だから彼がプロにはいってもなにも心配することはない」と太鼓判を押し「先輩の高橋善(東映)みたいなことはない」とキッパリ。投手としては一級品ともいえる素質がある杉田。本人も「プロの世界で力をためしてみたい」と意欲的だ。そして「プロに指名されるとしたら東映という気がしていた」くらいだからやる気は十分である。神宮球場で、杉田をよく知っている人たちにプロ入りについての注文を聞いた。するとだれもが気分屋を返上すること、「肉体的にも精神的にも常に安定したものを持つこと」という。さらに具体的には「投手としてのセンス、フォームはいいものを持っている。でも下半身を一段と鍛えることだ。現在のバネでは変化球のキレがまだ甘い、それと外角へ落ちるタマをぜひマスターすることだ」ときびしい。おっとり屋、ヌーボー型といわれる杉田がプロの世界でどこまでやれるか、それには本人の自覚と努力以外に特効薬はない、
幸い、素質に恵まれているし、夏には自分で練習をやったほどだから、今後が楽しみといっていいだろう。
「プロで十分通用するだろう。性格的に細かいところを気にしない、いわゆるマイペース主義の男だ。技術的にも外角の速球という武器を持っている。欲をいえばもうひとつスピードと制球力をつけることだろう。杉田の育ての親、中大の宮井監督はこう評している。183㌢、75㌔、投手としてはまずまずの体格である。だが外見はヌーボーとしてとらえどころがないので、他人に強烈な印象を与えるタイプではない。ところが杉田はそのヌーボーぶりをうまく利用している。ピンチを迎えようとうまくいこうと、表情を変えないから相手に気持ちを読まれることが少ないのだ。合宿では「寝てばかりいる杉田」といわれるほど暇さえあればイビキをかいていた。また練習ぎらいでも通っていた。それが夏ごろから一変した。秋のリーグ戦に備えて自発的にランニングを開始、そのせいか今季は下半身がめっきり安定した。だから「あれが杉田か?」とネット裏の関係者はビックリしたものである。変化球のキレは見違えるほど鋭くなり、直球も打者の手元でグンと伸びるようになった。そして今季は4試合を完投。8勝1敗の成績で中大を七シーズンぶり十八度の優勝に導き、見事学生生活の最後を飾った。彼は早くから「プロでも通用する逸材」とスカウト連から認められていた。しかし好不調の波が大きいのと、体質的に故障が多いことが不安がられた。おおらかでノンビリ屋の半面、投手独特の神経の細かいところがあった。一部では「デリケートすぎる」とさえいわれたほどだ。それが最もよく現れるのが苦手な寒い日のピッチングだ。寒いというだけで寒さに弱いという気持ちを持ってしまい、自分で自分を苦しめるピッチングをやってしまう。こんな欠点はあるが、自分のペースで試合が進んだときは抜群の力を発揮する。決めダマの外角速球がビシビシ決まり、シュート、カーブの横の変化で打者を料理していく。それに打者の心理を読むのもうまい。宮井監督は「野球ばかりではなく人間的な面でも本格派らしく育てたつもりだ。俗にいう野球バカではない。杉田はもともと常識を持った円満な性格の男だ。だから彼がプロにはいってもなにも心配することはない」と太鼓判を押し「先輩の高橋善(東映)みたいなことはない」とキッパリ。投手としては一級品ともいえる素質がある杉田。本人も「プロの世界で力をためしてみたい」と意欲的だ。そして「プロに指名されるとしたら東映という気がしていた」くらいだからやる気は十分である。神宮球場で、杉田をよく知っている人たちにプロ入りについての注文を聞いた。するとだれもが気分屋を返上すること、「肉体的にも精神的にも常に安定したものを持つこと」という。さらに具体的には「投手としてのセンス、フォームはいいものを持っている。でも下半身を一段と鍛えることだ。現在のバネでは変化球のキレがまだ甘い、それと外角へ落ちるタマをぜひマスターすることだ」ときびしい。おっとり屋、ヌーボー型といわれる杉田がプロの世界でどこまでやれるか、それには本人の自覚と努力以外に特効薬はない、
幸い、素質に恵まれているし、夏には自分で練習をやったほどだから、今後が楽しみといっていいだろう。