1962年
岩本勝(いわもとまさる)(18)投手は初の檜舞台に出たのは今春の高校選抜大会である。しかしプロのスカウトはそれ以前から目をつけていた。昨秋の中国大会で180㌢近い長身から、快速球を投げおろし、打者をつぎつぎと打ちとったことからである。しかも左投手であることも、岩本の存在を浮きたたせた。プロ球団では阪急をはじめ西鉄、広島、南海、近鉄、阪神、大毎それに中日が名のりをあげたのだからすごかった。一時は大変な争奪戦になったが、豊浦高校が阪急の戸倉前監督の母校でもあった関係からスムーズに阪急入りが決まった。ところで今春の選抜大会はサウスポーの当り年といわれた。中京の林、北海高の松谷、岐阜商の長縄、それに岩本この中で林、岩本、松谷がプロにはいったが三人を比較すると岩本が一番ひ弱だ。あれほどのスカウトが集まったのにと不思議に思われるほど。しかし実際は岩本をみたスカウトたちがからだの大きさ、サウスポーの利点にほれて集まったが「大きい投手にありがちな下半身が弱い」という結論が出たためである。いいかえれば足、腰が弱くそれほどでもなかったというスカウトが多く、途中でおりてしまったからだ。岩本は上背を利して真上から投げおそる本格派の投手で、スピードもあるし、左にしてはコントロールもよい。ところがいま一つの迫力に欠けている。そのためフォームにすごみがないし、速い球もただ速いだけでのびがない。その原因は下半身ができていないからである。みた目にも下半身が弱いとわかるほどだからストレートに威力があるわけでもないし、バネも生かされていない上半身だけで投げていたのではプロで通用しないことは目にみえている。かれの武器は大きく割れるドロップだが高校ではこのドロップも長身から投げるので角度があって通用したが、プロではそれだけでは通用しない。なぜならストレートが棒球では武器のウイニングショットを使わせてくれないからだ。これからの課題はとにかく下半身を強くすることで、下半身さえ安定すれば球も自然に生きてくる。
林(中京商→南海)との比較。
気性も正反対だし、フォームも正反対。まったく対照的な二人だ。しかし岩本は気力がないから林のもっている力強さをすべて吸収しなければだめだ。ただ岩本の利点は林よりもからだが柔らかいということだ。しかし、せっかく柔らかいからだをもちながら腰くだけになっては元も子もない。からだが固いといわれながらも林は「プロでじゅうぶんやってみせる」と根性のあることばをはいてビュンビュン投げこんでいるのに比べ岩本はスーッと投げてしまって打者に対して威圧感がない。これなど林の気概を大いに学ばねばならない。奮起が必要だ。
岩本勝(いわもとまさる)(18)投手は初の檜舞台に出たのは今春の高校選抜大会である。しかしプロのスカウトはそれ以前から目をつけていた。昨秋の中国大会で180㌢近い長身から、快速球を投げおろし、打者をつぎつぎと打ちとったことからである。しかも左投手であることも、岩本の存在を浮きたたせた。プロ球団では阪急をはじめ西鉄、広島、南海、近鉄、阪神、大毎それに中日が名のりをあげたのだからすごかった。一時は大変な争奪戦になったが、豊浦高校が阪急の戸倉前監督の母校でもあった関係からスムーズに阪急入りが決まった。ところで今春の選抜大会はサウスポーの当り年といわれた。中京の林、北海高の松谷、岐阜商の長縄、それに岩本この中で林、岩本、松谷がプロにはいったが三人を比較すると岩本が一番ひ弱だ。あれほどのスカウトが集まったのにと不思議に思われるほど。しかし実際は岩本をみたスカウトたちがからだの大きさ、サウスポーの利点にほれて集まったが「大きい投手にありがちな下半身が弱い」という結論が出たためである。いいかえれば足、腰が弱くそれほどでもなかったというスカウトが多く、途中でおりてしまったからだ。岩本は上背を利して真上から投げおそる本格派の投手で、スピードもあるし、左にしてはコントロールもよい。ところがいま一つの迫力に欠けている。そのためフォームにすごみがないし、速い球もただ速いだけでのびがない。その原因は下半身ができていないからである。みた目にも下半身が弱いとわかるほどだからストレートに威力があるわけでもないし、バネも生かされていない上半身だけで投げていたのではプロで通用しないことは目にみえている。かれの武器は大きく割れるドロップだが高校ではこのドロップも長身から投げるので角度があって通用したが、プロではそれだけでは通用しない。なぜならストレートが棒球では武器のウイニングショットを使わせてくれないからだ。これからの課題はとにかく下半身を強くすることで、下半身さえ安定すれば球も自然に生きてくる。
林(中京商→南海)との比較。
気性も正反対だし、フォームも正反対。まったく対照的な二人だ。しかし岩本は気力がないから林のもっている力強さをすべて吸収しなければだめだ。ただ岩本の利点は林よりもからだが柔らかいということだ。しかし、せっかく柔らかいからだをもちながら腰くだけになっては元も子もない。からだが固いといわれながらも林は「プロでじゅうぶんやってみせる」と根性のあることばをはいてビュンビュン投げこんでいるのに比べ岩本はスーッと投げてしまって打者に対して威圧感がない。これなど林の気概を大いに学ばねばならない。奮起が必要だ。