2、3日前から無性に髪の毛がじゃまになった。
これはどうしてなのだろう。
1日に伸びる髪の毛の長さは決まっていて、
それもそんなに多くはないはずだ。
ところがある日突然、頭が鬱陶しくなる。
私の場合、
仕事中は作業帽をかぶっているのでよけいだ。
土曜日に散髪しようと考えていたが、仕事になった。
今週はがまんしよう、と思った。
今日10時頃起きて、
テレビを観たり新聞を読んでいても
頭が気になってしかたがなかった。
でも、1日しかない休日やりたいことが沢山ある。
明日は出勤なのです(世間は3連休だというのに)。
やっぱり来週にしよう、なんて、
女子駅伝をテレビで観ながら思っていた。
それでも、どうしても髪の毛が気になった。
行きつけの理髪店に電話をすると、
4時以降空いているという。
行くことにした。
4時10分前にロダンに行くと、
奥さんが準備して待っていた。
私は、ほとんど奥さんがやってくれる。
「正月はどこか行かれたんですか?」
と、私に準備しながら奥さんが話しかけてきた。
そうか、九想話は読んでいないんだな、と思った。
読んでいれば、私の正月のようすは分かる。
11月に来たとき、
九想話のURLを書いたカードを渡していた。
「田舎に行って、おふくろに会ってきました」
と私は応えた。
しばらく互いの母親のことの会話が続いた。
きっと最初は九想庵を見てくれただろうが、
続けて見てはくれないだろうな、九想話なんて、
と思いひとり納得した。
息子さんがパソコンが好きで、
散髪してもらっているとき、
よくパソコンやインターネットの話題になった。
奥さんもその影響でインターネットを
よく覗いているということだった。
髪がカットされ、シャンプーが終わり、
椅子の背もたれが倒される。
顔にシャボンをぬってもらっているうちに、
私の記憶は遠のき、熟睡体制に入った。
耳かきの動きで目が覚めた。
ああ…、終わってしまった。
私は顔を剃ってもらうときが一番好きだ。
あの剃刀の刃が、肌を滑る快感。
むかし、それが怖くて、
15、6年ほど床屋に行かなかった。
独身のときは自分で髪を切り、
結婚してからは、女房にやらせていた。
最後の仕上げをしているとき、
「ホームページよく見てますよ」
と奥さんがいった。
「そうですか。うれしいな」
「赤くなったディスプレー直りました?」
「いや、直らないんで、
これから物置に使わないで置いてある
ディスプレーと交換しようと思ってるんです」
お金を払いロダンを出た。
外は春のような暖かさだ。
私は、こころまでぽっかぽかに暖かかった。
(まだ、ディスプレーは交換してない。
赤くなると横っ面ひっぱたいてます)