イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

秀樹観劇

2009-07-04 20:46:31 | 夜ドラマ

NHK『つばさ』は、週中テンションが弛んでも土曜日には必ず持って行くなぁ。いきなり『婦系図』のお蔦第3部を演じることになった千代お祖母ちゃん、最初はカンペまる読みだったのがだんだん気持ちが入って自分の言葉になっていく変化の表現は、さすがは吉行和子さん。

「もしもう一度人生を演じろと言われたら、あなたと出会えて、悲しい別れをした人生を選びます」と、客席の初恋の人・清之助さん(山本學さん)に伝えたいことをそのまま台詞にしている千代さん、甘玉堂臨時休業で、一家総出で川越キネマに集合してるこんな状況じゃ、お留守番の先代梅吉ジイちゃん(小松政夫さん)の遺影はどんな顔になっておるか…と思ったら、その前にラジオマン(イッセー尾形さん)が上がり込んで(降り込んで、か?)ちゃっかり紙芝居にして見せてやんの。あそこでラジ男がネジ巻いたから、最後に梅吉さん「よっ日本一!」言いに袖に現れてくれたのかも。

「昔と少しも変わらないのではなく、昔より数倍いい女になったよ」と、別れた元カレのクチから聞ける最高の言葉を千代さんに言ってくれた清之助さんが♪月がとっても青いから~をクチずさんでいたのが何とも。千代さんとお付き合いするならあの曲は必修なのね。

金曜日の、お蔦放浪篇の加乃子さん(高畑淳子さん)が、香具師の口上後いきなり自分語りを始めた場面も、朝、背中で音声だけ聴いていたときには何が起きたんだ?とさっぱりわからなかったけれど、夜、BS2の再放送で見ると、“ひとりスカーレット・オハラ”“のち、ひとり蒲田行進曲”みたいで何か腑に落ちてしまった。これも半分以上は高畑さんの力でねじ伏せた感。

どんなに悩んでも迷っても、結局はやりたいことをやる自分万歳!みたいな着地になる加乃子さんが、自分の家族や親戚にいたら勘弁だなあと思いつつ、観ててあんまり不快じゃないのは、この人の行動原理に“人を恨む、やっかむ”“悪意をもって企てる”ということがないからだと思う。昼帯では痴情怨恨、嫉妬に腹芸、裏切り二枚舌、さんざん見て娯楽にできる月河ですが、何となく、朝ドラに恨みつらみは似合わないという固定観念に近いものはあるんです。逆に言えば、恨みつらみをひっ絡めさえしなければ、人物のキャラや行動はどんなにぶっ飛んでいてもかまわない。『だんだん』なんかはそこがちょっとつらかった。行動は常識超えてぶっ飛びながら、根っこに恨みつらみ、という局面がちらちら絶えず覗いていましたからね。

抱き合うお蔦役がつばさ(多部未華子さん)から千代さんへと3世代股にかけた上、ぜんぶ芝居の後半はアドリブになったのに辻褄合わせてくれた真瀬(宅間孝行さん)も助演賞。欲を言えば、浪岡(ROLLYさん)渾身の劇伴をもっと大々的にフィーチャーしてあげればよかったのにね。先日の記事で、設定とは言え役柄上自分の息子が金髪カラコンってのも山本學さん、びっくりだったのでは…と書きましたが、考えてみれば「オレの親父が山本學さん」ってROLLYさんのほうがびっくりを通り越して凍結硬直ものだったか。

もひとつ欲を言えばですね、今回は手下の黒グラサンコンビ連れずに来てくれていた斎藤興業社長(西城秀樹さん)に、加乃子さんのひとり語りを千代さんのために「10年かけて加乃ンが到達した答えです」と解説させるだけじゃなく、山場で記事タイトル↑↑↑の台詞を言わせてほしかったですね。

予定にない第3幕千代さん客演に、ホワイトボードに貼る似顔絵も、サイズの合う衣装(寝間着だけど)もちゃんとあったとか、妙にメイクが似合って演技もうまい鳶のカシラ夫婦(金田明夫さん広岡由里子さん)とか、結局はラジオ局員とその身内の場当たりシロウト芝居なのに満員大盛り上がりになる川越キネマとか、…え?と思うところは尽きないのですが、そういうことに駄目出しマインドになる人はもうとっくに視聴打ち切っているでしょうな。気がつけば6ヶ月の放送クールの、すでに半分を消化しました。

あとね、本当に騙されたと思って、昨日(3日)、『コールセンターの恋人』も録画し今日再生視聴しました。

こう言っちゃなんだけど、意外と拾いモンじゃないですか。TVショッピング業界の舞台裏を描くお仕事コメディという体裁を取っているけど、これは小泉孝太郎さん扮する都倉渉が迷い込んだ“ワンダーランド・アドヴェンチャーファンタジー”ですね。なぜか顧客クレーム処理に天才的な閃きを見せる、ミムラさん扮する青山響子が、マドンナ兼ナルニア国のアスランのような存在なのかも。久しぶりにお顔を見た気がするミムラさん、抜けるような色白で、ファンタジーの気まぐれフェアリー・プリンセスにぴったり。でももう人妻なのね。

俳優デビュー8年でやっとつかんだ主演・小泉孝太郎さん、“若いのにチャレンジ精神がなく、そこそこ主義ほどほど主義でちんまりまとまった感じ”はなかなかうまいこと演れていますよ。先日の『徹子の部屋』でのトークにも滲み出ていた素の“小モノ感”が、“勝手の違うワンダーランドで右往左往する一般人”の佇まいといい具合にかみ合っている。

「自分はトップにはなれる器じゃないし、ガツガツ努力してトップを争う人生より、そこそこの努力で、ラクして真ん中らへんがいちばん」という悟りに若くして到達した人って、「でも、ガツガツ努力しなくてもトップになれるヤツが世の中には居るんだよな、いいよなぁ」という贅沢なルサンチマンと、「自分の能力(&毛並み?)なら、ラクにいっても真ん中らへんにはいられるはずだ(真ん中より下になるはずはない)」という甘え傲慢さ、「ガツガツ真剣努力して惜敗する悔しさは味わいたくない」という臆病さを、同時に抱えている。

よってこの役、若さをもう持たない中高年や、あらかじめ真ん中より下の階層に生まれてしまった者(1st callでは高枝切りバサミの小倉久寛さん)から見れば、キサマ世の中なめてんのか!と言いたくなるようなシャラくささがある程度必要。孝太郎さんの演技にもう少し“ヤなやつ臭”があってもいいかなと思いますが、“基本ヤなやつが一瞬見せる間抜けな善意”と、“基本善意の間抜け青年に端々でチラつくヤな面”とのネガポジ反転までは、坊っちゃん俳優孝太郎さんまだ表現し切れないし、演出も揺れている模様。観客が見ていて「都倉しっかりやれよ!」「よしよし、いいぞいいぞ!」と思えれば正解ですね。

謎のフェアリー・プリンセス(or囚われのアンドロメダ?)青山響子ミムラさんとの恋愛要素は、ほのかに匂う程度のほうがいいですね。とりあえずもうちょっと声を張ろうよ、孝太郎さん。“内容は威勢がいいけど聴き取り辛い”のも父上譲りか。イーストウッドの年代まで役者続けたいなら克服しないと。

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柿8年

2009-07-04 00:39:00 | テレビ番組

今年の初めぐらいから公報で触れが始まっていたのですが、10年以上ぶりに当地のゴミ分別が大幅に細分化(←語義矛盾か)されることになり、分別ごとに指定袋も変わります。先月、配布された新分別マニュアルを囲んで在宅時間の長い高齢家族たち、エコ意識のとりわけ低い非高齢組とともに対策ミーティング的なものを一席設け、対応万全!と思いきや、結構こういう地味なことに関してまめなタイプの高齢組でも、その1とその2で認識が食い違っていたりして、イザ指定収集場所に出す段になると、分別のやり直しが必要なアイテムがあちらにもこちらにも。

なんか、いつの間にか管理人みたいな立場になってる月河自身も間違って覚えてた箇所がある。んで本日は朝からマニュアルを再熟読。

いつも思うのですが、たぶん民間の編集プロか広告代理店に外注しているのだろうけど、役所発のあのテの広報媒体って、公租公課関係であれ、医療や健康関係であれ、今回のような生活上の公共サービス関連であれ、本当に読みにくい、意味が取りづらいですね。“他のことは概ねヘタクソだけど、このジャンルだけはとてもスマートでわかりやすく信頼がおける”という“得意分野”ってのがひとつもない。

たぶん“役所”と“サービス”とが基本的に相性が悪いんだと思う。国民や住民にサービス(奉仕)したくてしてる役所なんか、中央にも地方にもイッコもなく、したくてしてる公務員もいないのでしょう。国民住民を“税金を徴収する対象単位”としてしか見てない。だから読み辛い、「こんなときにはどうする、困った」という痒さに手の届かないマニュアルや公報しか作れないのです。

それにしても“有料ゴミ”なんて単語が日本語として成立するとは、小中学生坊主の頃には想像もしませんでしたよ。“”(≒“価値”)が“無い”から“ゴミ”だと思っていたのに。

“有料”は捨てられたものを処理する側の視点の言葉、“ゴミ”は捨てる側の視点の言葉で、異なる視点の二つの言葉を緩衝材なしにくっつけるからこういう語感になるんでしょうな。

本日(3日)は『徹子の部屋』に小泉孝太郎さん登場。“現職総理大臣の長男が俳優デビュー”なんてベタな取り沙汰されてから、気がつけばもう役者生活も8年だそうで。

徹子さんが水を向けていた通り歌舞伎にオペラにプレスリー映画と、お芝居大好きなお父上もデビュー当初から孝太郎さんの出演ドラマをかなり熟視聴して下さっているとのことで、「いきなり(父から)電話がかかってきて、“昨日のあの演技は何だ”と駄目出されたときには一日ヘコんだ」なんて話をされてましたね。わはは。在職中はご自身がある種“劇場”の主宰みたいな立場でしたからね。他にも孝太郎さん曰く「セリフがない(が画面には映っている)場面の演技の方が大事だ」「トークゲストのときは腕組みはいけない、生意気そうに見える」など細かく指摘されたとのこと。もういっそニクいね。ヤッコさんの言うことはね。在職期間通じて、業績のわりには支持率が高かったのも道理ですよ。「こう見せれば、こう見える」を相当心得てた人だったのだ。

「(父が)総理を退いたときには、自分も手枷が外れたような、空気が軽くなったような気がした」とも言っておられました。「でも、たぶん一生(元総理小泉の子だと)言われ続けると思う」とも。

父上関連の話の流れの中で「父を子供の頃から見ていて、顔と名前を覚えてもらうことがどんなに大変かということはわかっていた」「自分も役者として顔と名前を覚えてもらう上で、父の存在は(損得で言えば)得ばかりでした」との発言もありましたね。孝太郎さんラッキーですよ。芸能界デビューするとして、政治家がお父さんであった場合、“得ばかり”な人ってそうは居ません。て言うかまず居ません。普通は伏せる。伏せないならDAIGOくんみたいに、“自分が色モノ”になるしかないのよ、普通はね。

俳優デビューの報を媒体で見た8年前には「また二世芸能人か」ぐらいにしか個人的には思わなかった孝太郎さんですが、8年いて、NHK大河ドラマにフジ月9、仮面ライダーの劇場映画版と、結構メジャーな作品に脇とは言え切れ目なく起用され、その間ではバラエティで芸人さんにもいじられて、それでこの“スレてなさ”は意外やかなりのタマかもしれません。どんなに良毛並みのボンボンでも、芸能界に8年もいるとどこか業界臭、ミズっぽさ遊んでるっぽさが漂ってくるものですが、孝太郎さんはいまだに初々しい。悪く言えば、今年31歳という年齢のわりに小モノっぽい。

画面に出ただけで“持って行く”強烈な存在感とか、劇中の空気感をなんらかの特定の色に染める鮮烈な個性がない、思い切りキレイに言えばある種の透明感みたいなものが、“総理の息子”の看板もいい加減見飽きただろうという8年後まで生き延びた要因かもしれない。先日の記事でも『ザ・テレビ欄 1975‐1990』に関連してちょっと書きましたが、TVの観客全体がドラマに軽く倦んでいて、“ものすごく達者な演技派の、さすがとうならせるような重厚な芝居”があまり欲求されなくなった21世紀に斯界入りしたのも幸運だった。

起用のされ方に、“親の権力によるプッシュ”が思ったほど感じられなかったことも、孝太郎さんを受け容れられやすくしたかもしれません。メジャーな作品といっても、「あれクラスの親が本気になってゴリ押しすれば、こんなポジションじゃ済まないだろう」と思わせる範囲の役柄にとどまっていたし、一度『行列法律』で島田紳助さんにいじられているのを偶然見たことがありますが、まぁあの“いじり剛腕”紳助さんだからかもしれないけれど、「政治圧力かかってヘイコラちやほや」感はあまりなく、結構スムーズにサカナにしたりされたりしていた印象でした。

父上ともども、叩けばホコリの尽きない“スキャンダル体質”でなかったのも大きいですね。月河の昭和40年代からのTV視聴、芸能誌TV誌購読の経験からいってもこの業界、演技力や歌唱力、ダンステクや笑い取り力、あるいは容姿端麗さなど絶対的な“芸能力量”に秀でていることよりも、“力量はさほどではないけど、客からも業界スタッフスポンサーからも反感を買わず、敵を作らなそう”なタイプのほうが生存率が高い。歌が抜群にうまいけれど異性ゴシップが絶えないとか、爆笑させてくれるけれど暴力がらみのトラブルに追われたとか、目のさめる様な美人さんだけれど年中借金踏み倒して訴えられてるとか、イケメンで甘い声だけれどクスリから縁が切れないとかいう人たちは、ファンは少なからずいるだろうに結局媒体から姿を消しています。

カネ、オンナ(女優さんならオトコ)、クスリ。芸能人生命を揺るがすこの御三家を遠ざけ御しきって、このまま行けば孝太郎さんの憧れるクリント・イーストウッドのような、80代(ご本人まだ79歳ですが)まで現役も、満更夢でもなさそうですよ。誰もノーマークのうちに、10年経ち20年過ぎ、気がつけばそんな感じになっているかも。

それを望んでいる人が観客席側にどれだけいるかは別としてね。

お仕事ドラマジャンルの中でも、通販は自分が頻繁にお世話になる、シンパシーある業界だし、騙されたと思って(誰も騙してないって)1話ぐらいは観てみるかな『コールセンターの恋人』

その前にっ!『夏の秘密』25話をチェックしなきゃ。昨日24話急転直下の自白した柏木(坂田俊さん)は夕顔荘に戻って来られるのだろうか。昨日24話は、高学歴かつ性格も不真面目ではないのに社会に適応できない者の悲哀と、笑えない滑稽さが滲み出ていて、坂田さん大好演だったと思います。柏木視点でのこの話を芯にして、ちょっと肉付け潤色すれば『相棒』の1エピにできそうだなぁ。

捜査妨害、証拠隠匿だから犯罪には問われるかもしれないけれど、人を傷つけたわけではなし、物盗りでもなし訴追、実刑はたぶんないでしょう。できれば物語世界に戻って来て、何かしらの役を果たしてほしい。24話が終わってみて、結構柏木“なんちゃって博士”が好きだった自分に気づいている月河です。

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