イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

あなたの真実は

2009-07-24 00:16:55 | 昼ドラマ

必要に迫られて買うわけではない、同類多種の中から随意に選べる趣味・嗜好系の商品って、“ネーミング”の力はやはりあなどり難いと思うのです。

自宅晩酌時ビール系を選択する際、SAPPORO生搾りが定番として定着するに至ったのは、まぁサッポロビールが地元メーカーのため営業力が強く、酒類販売店どこへ行っても他社製品より買いやすいということも大きいですが、“ナマシボリ”という名称の、音の響きのなんとも言えないB級感、催笑感が、友人を招くでもなく座持ちに気を遣うでもなく、はたまた旨い料理や酒肴に凝るでもなく“アタマ空っぽにして、普段着一丁で緊張感ゼロでくつろぐ”シーンに、非常にナイスマッチングだったんですよね。

スガシカオさんがライヴ会場で「生搾りを友達にすすめよう!」と、彼らしく“中~低体温”なエールを送るCMTVでオンエアされていた02年初夏頃からウチで定番化したのではなかったかな。

当時は自宅で棚板の移動取り付けや、季節もの寝具収納入れ替え、通販で買ったグッズの組み立て試運転などの“肉体労働”が一段落すると、おもに非高齢家族が「よっし、生搾りでも飲むかっ!」と(たとえ日の高い真っ昼間でも冗談として)口走るのがお約束になっており、それを見聞して嘲笑モードの高齢家族が、たとえば月河が出がけ珍しく気合い入れて、息を詰めて上下にマスカラ塗ったりなんかして、無事塗り終えて「ふー、塗れた」と溜め息ついたりすると後ろから「“ナマシボリでも飲むか!”かい?」と(朝の出勤時間帯にもかかわらず!)チャチャ入れる…といった地合いになっていたものです。

たとえばAsahi“クールドラフト”KIRIN“淡麗〈生〉”“円熟”の語感ではこうはいかない。“中途半端にコジャレ過ぎ”なんですな。発泡酒や新ジャンル、娯楽嗜好性はありつつも徹底的に“普段着”の消費ですから、ネーミングにもほどのよい“高級でなさ”とでも言いますか、B級感、もっと言えば“おマヌケ感”って必要だと思う。SAPPORO“生搾り”はここがフィットして、ウチでは他類似商品の猛追をかわし生き残りました。

 その代わりと言っては何ですが、生搾り“みがき麦”としてリニューアルされた07年秋ぐらいからはちょっと影が薄くなったかな。行きつけの酒類取り扱い店でも前面展開が減ったような。味自体も発泡酒ジャンル内なりの高級感志向(“高級志向”ではなくあくまで高級“感”志向)になり、それ自体は悪いことではなく、飲みものとしてはむしろ好ましいのですけれど、ネーミングにも喚起されるイメージにも、いい意味での、愛すべきB級感が薄れてしまいました。

最近、かつての“ナマシボリ”と似た地合いで内輪ウケしているのがKIRIN“コクの時間”です。これまた、同種のSUNTORY“金麦(きんむぎ)”クリアアサヒKIRINで言えばスパークリングホップなどにはない、ぶっちゃけたB級感あるネーミング。夜、深い時刻まで作業が終わらないときなんかに「んーもう、とっととコクの時間にしちゃえ!」とか面白がって言ってますね。

積極的な店頭展開ぶりを見る限り好評らしい、コクの時間の成功に気をよくして?KIRIN9月にまたまた新ジャンルの、これまた名づけも名づけたり“ホップの真実”をリリースするようです。

逆に「ウソだろ!」とツッコみたくなる、B級感を通り越して、ふざけてんじゃないかみたいな命名ではありませんか。雑誌『噂の眞相』(休刊したけど)か、『行列のできる法律相談所』での島田紳助さんのフリかというね。内容(=味)ともども、ネーミングに弱い月河家で定着なるかどうか。同社従来品に比べてホップ使用量2倍をウリに、CMキャラには昼帯タイムのSKⅡでおなじみ桃井かおりさんを起用、99日発売とのことです。夏バテしていられませんぞ。

…て言うか、当地、本当に夏、暑いの、来るのかなあ。日に日に心配になってきます。

“真実”と“ウソ”の話と言えば、『夏の秘密』は本日第39話。

視聴打ち切るか切らないか、たぶん今週が、と言うよりこの一両日がヤマと言っていいでしょう。伊織(瀬川亮さん)の亡き父と、紀保(山田麻衣子さん)の亡き母=自分の妻との関係を語る羽村社長(篠田三郎さん)の台詞の長いこと長いこと。そんだけで昼ドラ一本、凡庸なやつなら作れるよ、ってぐらいの内容を、モノクロ回想カットもほとんど無しに一気に語り尽くしてしまいました。

篠田さんが基本的に声量控えめで、淡々とクセなく語れる俳優さんだからなんとなくひととおり通聞できてしまいましたが、“高温粘っこい”タイプの人がこの役を演じていたらトゥーマッチで速攻打ち切っていたかも。結局“親の代でのすったもんだ”が現役世代ヒロインと相手役との関係に、嫉妬だ復讐だと影を落とす話か。

金谷祐子さんを脚本に据えた製作チームのこの枠作品、それだけで終始するわけではないだろうことは、05年『危険な関係』で証明済みではあるのですけれどね。この人の脚本作は「なんだそれかよ!」「早く言えや!」とストンと一度視聴意欲が落ちる、その先に真価が必ずあるのです。

篠田三郎さんと言えば、現代劇のドラマでも数々のキャリアがありますが、『鬼平犯科帳』の鬼平(中村吉右衛門さん)率いる火盗改(かとうあらため)の中間リーダー・酒井祐助役が忘れられませんね。のちに柴俊夫さん、勝野洋さんと演じ継がれて現在に至っていますが、“まじめ”“堅物”に尽きる酒井というキャラ、篠田さんはプラス“廉潔インテリゆえに繊細で、武士道や役人としての職分について悩みがち”という要素を付加しました。

細おもてで白皙、あまり“ヤットウが強い”イメージはない篠田さんですが、『ウルトラマンタロウ』でヒーローとしてデビューされているし、火盗改と言えばお頭(かしら)=鬼平自身を筆頭に、選りすぐりの使い手揃いという設定でもあります。勝野洋さんが酒井に扮した頃の放送分から鬼平ワールドに参入し、レンタルビデオで遡って“篠田版”酒井を知った月河は、「同じ原作シリーズの同じ人物を演じるのに、こういうアプローチもあったか」と驚嘆したものです。もちろんエピソードごとの演出や脚本に拠るところも大きいでしょうけれどね。

「この俳優さんが、東海制作の昼帯に来演するとは思わなかった」と思える人を、主役であれ脇であれどれだけ連れて来られるかに、あらかじめかなり勝負がかかっている最近のこの枠です。最終的な出来栄えが、「篠田さんがヒロイン父に扮しただけのことはあった」と思えるものにきっとなる筈です。なってもらわなければ困る。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする