押しかけ寄り切り居座りアシスタントのスガちゃんこと菅井伸くん(柄本佑さん@『ゲゲゲの女房』)は、結構美味しい役どころですね。実話ベースで、実在モデル人物を下敷きにせざるを得ないことが縛りにも、魅力にもなっているドラマの中で、フリーダムお構いなしに「モデルさんがいて、視聴してたら怒るだろ」と思うようなドジも踏めるし赤っ恥もかける。
23日(土)放送回で、しげる布美枝夫婦(向井理さん松下奈緒さん)と経理担当・兄嫁佐知子さん(愛華みれさん)の会話を立ち聞き(←正確には雑巾がけポジ聞き)、「オレ、クビかぁ…」と茫然と仕事場に戻って、年下の倉田(窪田正孝さん)から“(水木)先生を呼んできてくれと言うたのにどないした”と訊かれて我にかえり「……………あぁいけね…もう一回行ってくる」の「…………」の、1話15分ドラマのサブのそのまたサブ人物には大胆とも思える間合いなど、お父上の柄本明さんをホウフツとさせましたぞ。
「ボクはもう出て行く人間なので」(←誰も訊いてねえし)、いずみ(朝倉えりかさん)が姉からの手紙と写真でアシの顔と名前を予習して来たと聞いて「なんだそうか」(←「彼女、なぜボクの名前を知ってたんだろう」と妄想し過ぎ)など、パパ柄本さんとママ角替和枝さんのDNAを感じるボソッと突き放すセリフ回し。“何でも実話、何でも努力上昇ストーリー”に偏るとドラマとしてつまらなくなりがちになりそうな局面を、うまく救うナイスキャラ配置です。
“別にメインストーリーの原動力にはならないし、メイン人物の美点や主張をフィーチャーする役にも立たないけど、とりあえずおもしろい”キャラも、そろそろ来てよかった。
それでもスガちゃんのおかげで、雄玄社部下の北村(インディゴの夜DJ本気の加治政樹さん)のいずみちゃんLOVEや、倉田の日の丸弁当→布美枝の「アシスタントの皆さんに健康で仕事してもらうのがしげるさんのため♪」昼食味噌汁差し入れなどが浮き彫りにできて、“ただその場の可笑しさ担当”だけではなく、ますます美味しいじゃないですかスガちゃん。画力に秀でた、元はと言えば独り立ち貸本漫画家だった小峰(斎藤工さん)や、看板屋仕込みの技術抜群、実家に仕送りもして努力人一倍の倉田は早晩独立できそうですが、点を打てと言えば点々、渦巻きを描けと言えば一日中こうぐーるぐるぐーるぐるのスガちゃんはアシスタント一代で終わりそう。
でも、なんとなく最終話まであの感じで、水木プロにいてほしいような。
青二才ふたりに思われ中のいずみちゃんは、実は「ああいう人が将来、亭主関白になって、お父さんみたいに家で威張るんだわ」と、ぶっきらぼうで愛想のない倉田のほうに関心がある様子。“結婚後”“亭主としてどうか”を想像してみる時点で、もうその男に持って行かれている証拠ですぜ。
布美枝さんは“漫画家の嫁”のどん底をとことん経験しているから、いずみちゃんの気持ちがわかっても賛成できないだろうなぁ。