昨日(6日)の放送回で、大手からの屈辱的吸収合併話をみずから壊し、バーでヤケ酒大暴れして村井家で介抱されていた深沢さん(村上弘明さん)(@『ゲゲゲの女房』)、嵐星社設立時からのパートナー郁子さん(桜田聖子さん)にも去られて傷心の出直しスタートと思ったら、1年弱後の今日(7日)放送の昭和43年初夏時点でしげるさん(向井理さん)が「(アシスタントのうち2人が辞めることになり)また深沢さんに頼んでゼタに募集広告を出してもらおう」と言っていましたから、気をとりなおして堂々続刊中のようです。まずはよかった。
劇中のゼタのモデルになっている昭和の金字塔的漫画専門誌『ガロ』は、深沢さんのモデルである長井さんという名物社長兼編集長のもと、有望新人漫画家のチャンスの場として1990年代まで刊行が続けられたそうですが、ドラマはまた別ものですからね。
それにしても、プロダクション旗揚げの週から2話ほどにちょっと顔を見せてすぐいなくなったゼタの3人めの社員、ぼれろ渡辺扮する斎藤は何だったんだろうか。
成田出版のヘッドハンター浜野(小木茂光さん)に対しても深沢さん、郁子さんのことは「(合併が成ったら)彼女も一緒にお世話になりますが」と配慮怠りませんでしたが、斎藤にはノータッチ。て言うか、すでに、定位置だった事務所内の階段上がって上の物置スペースみたいなデスクに居ないし。ちゃんとネクタイ締めて、ネーム写植切り貼りしたり、それなりに仕事してる風情はただよわせていたんですけどね。
笑いはいっさい取らなかったし、ぼれろ渡辺である必然性もまったく無い役。ぼれろの所属がサンミュージックだから、もっと重い役の売れっ子さんとのセット販売かな?とも考えましたが、『ゲゲゲ』レギュラーであそこ所属の俳優さんといえば…と、こういうの、ヒマにまかせていちいち調べるにはいま、あまりにも暑すぎるし。
ひょっとしたら、べらぼうに掘り出し物ナイスキャスティングだった同じNHKの『鉄の骨』へのカンニング竹山とのセットという、超ロングパスかな。まさかね。それにしても竹山のあのゼネコン積算マン役は素晴らしかった。
数年前の結核再発で片肺切除の大手術を敢行、2年余の療養所生活を余儀なくされた深沢、ともすれば過ごしがちだった酒もそれなりにつつしんでゼタに専心してきたでしょうに、悪酔いするまで深酒したのは、仕事上の相棒以上の気持ちが互いにあったに違いない郁子の退職がこたえただけではなく、“大手とのおいしい話、意地張って断って、惜しいことをした”と微量残念がっている自分に嫌悪、許せなかったのだと思う。雑誌を大きくし、潤沢な資金を得てスケール大な企画をものにし、いまとは比べものにならないくらい大勢の漫画ファンにゼタを手にとってもらえる状況を、深沢とて夢に見なかったはずはないのです。
「マトモな出版社が漫画の本を出してるなんて、先進国の中で日本だけ」「しょせん、カネ儲け目当てのオモチャ産業」という、漫画の魅力を解さないリーマンたちの、酔いに任せてのウダ話に、“その、マトモな出版社の、カネ儲け目当ての合併話を、断って惜しいことをしたとうじうじ後悔してるオレ”が、深沢には一瞬、途方もなく惨めに思われたに違いありません。合併破談やパートナーとの別離より、自分の中にひそかにあった商業主義への傾斜、信念のぐらつきを思い知らされて、深沢は「飲まなきゃやりきれない」とあの夜、ひととき弱気になったのです。
それにしても、独酌でメートル上がった状態で、ひとりで、3人の大人男性リーマン相手にバー内大立ち回りを演じた深沢、「変身すればいいのに」と思った視聴者は少なくなかったと思います。スカイライダー筑波洋で、必殺仕事人花屋の政で、しかも十番勝負柳生十兵衛でもある。
なんならそのまた10年ぐらい前には、天才外科医財前五郎だったこともある。
あのウダ話リーマン3人組、上等だったじゃないですか。知らないぞ。常緑樹の生垣の近くを通ったら、延髄にぞくっと寒い風が吹くぞ。
なんなら健康診断で引っかかって入院したりしたら、肺への転移ばんばん見逃しちゃうぞ。