放送開始早々に「要らない」「やっぱり要らない」「返す返すも要らない」としつこく決めつけたNHK『あさイチ』ですが、気がつけばここで結構、触れているんですよね。昨日(11日)放送のプレミアムトークセレクション再放送、気がつけば「見た見た」「確かこんなこと言ってた」「ホラ言った」のノリで、ゲスト3人(向井理さん坂本冬美さん福山雅治さん)ぶん観てしてしまいました。
なんだかんだでTVってのは“習慣の海”に浮かぶ小舟みたいなもので、朝の8:15なんていう生きるか死ぬかの時間帯に、多少、要らないからといって、能動的にもっと有用なチャンネルを探して換えるという手間ヒマは、人間おそろしく惜しむものです。
結局は、4月から『ゲゲゲの女房』がそれだけ強力だということに尽きるのですけどね。
それにしても“スーパー主婦による家事のお悩み一挙解決”みたいなテーマは、有用でないことはないのでしょうけれど、どうなのかなあ。家事のある分野に、あるいは全般に、ちょっと世間一般よりひいでた知恵を持っているからといって、お地味な、そこらにいるようなおばちゃんがスーパー店内での買い物手順を、アドヴァイス求め側の、これまたお地味なおばちゃんについて回って駄目出ししたり、お宅に上がり込んで冷蔵庫開けて収納の仕方をチェックしたりしている絵と声をTVで見せられ聞かされるのは、朝から気持ちのいいものではありません。
家事というのはリミットを切られたプロジェクトではなく、ある時点で評価や達成感が得られ、その先はきれいさっぱり解放されるということは一生望めないジャンルなので、詰まるところ、“やらざるを得ないことを、片っ端からやりながら、どうやったらうまく進むか考える”“考えついたら、とにかくやってみる”の無限繰り返しでしかお悩み解決はあり得ません。あるお悩みが、未解決のまま長く残存しているとしたら、それは“考えていない”か“やってみていない”かのどちらかです。
考えてみても考えつかないとしたら、アイディア、ヒント不足。考えついた通りやってみても、その通りいかないとしたら、手先の技量や、グッズ、ツールが不足なだけです。
グッズやツールなら、売っている、入手できるところを教えてくれればいい。技量なら、達者な人を見て死ぬほど真似しまくる。アイディア、ヒントならひとこと示唆してくれれば、そこから閃き、枝葉を伸ばして事足りる。
こっちの家の事情何も知らないお地味なおばちゃんに買い物の順路や冷蔵庫の中にまでずかずか踏み込まれてあだこだ言われる筋合いは無い。いや、番組内で、アドヴァイス求め側のおばちゃんが何とも思ってない、むしろ歓迎ありがたモードなら番組としては何の問題もなく成立するのでしょうが、そのやりとりを観てる側としてはどうも、“頼みもしないのに土足で踏み込まれてる”感を、自分自身がそうされてる感をおぼえてしまうんですよね。
考えれば、あるいはやってみれば、あるいはツール、ヒント少々で打開できるに決まっている状況に、知恵と技量においてちょっとばかり先んじてるだけのおばちゃんの容喙なんぞいれてなるものか。容喙したかったら、旦那の学歴勤務先年収、自分の学歴実家の資産、子供の学校名偏差値学年席次フリップに書いて首に掛けながら指南役ヅラしてみろおばちゃん、ってなもんです。
………ぶわははははははは、不快指数にまかせて、どうだこの、アリ一匹這い出る隙もない心の狭さは。
場所もあろうにネットで惜しみなく公開してスカッとした(したのか)ところで、気を取りなおして(なおるのか)『ゲゲゲの女房』行きましょう。
先週の妹いずみちゃん(朝倉えりかさん)に続いて、4年後=昭和47年の春に時制を進めた今週は、10歳小4になった長女藍子ちゃん(再登場菊池和澄さん)が、“ヒロイン布美枝(松下奈緒さん)間接フィーチャー照射役”をつとめます。家族クロニクルとしても、結婚10年前後のこの時期は、夫婦間より、一にも二にも子供次第な時期。
頑是ない幼児から、ちょっと人見知り、自意識が芽生える微妙な年頃の少女。お父さん(向井理さん)が有名漫画家、しかもTVアニメでもおなじみ不気味な妖怪漫画の先生とクラス仲間に知られて心穏やかならない藍子と、「お父さんはお仕事がないときも、一生懸命漫画に打ち込んで、苦労して藍子を育ててくれたんだから、胸を張って“お父さんは漫画家”と言ってほしい」布美枝。
お仕事部屋に籠もる時間が長くてあんまり話してくれなくても、藍子もお父さんは大好きだし、漫画家であることを恥ずかしいと思っているわけじゃないのです。でも、できれば何でも一緒、似たようでいたいクラス仲間から、珍しがられる、からかわれる、やっかみ混じりの好奇の視線にさらされる、「お父さんが漫画家だから、藍子ちゃん絵が上手いのは当たり前」式の文脈で論評される。これは子供にはやりきれないことで、大人の社会とは違う、子供同士だけに流れる空気感を肌で知らない布美枝お母さんには理解まで距離があり過ぎるようです。ましてお父ちゃんの仕事の邪魔を気づかってか、藍子は幼稚園の頃から同年代のお友達を自宅に呼んで、お母さんの目の届くところで一緒に遊ぶ習慣が無いようだし、商店街の店主妻や団地のリーマン妻と違って、布美枝さん自身も、同じ年頃の子供を持ち子供ぐるみのお付き合いをするママ友が皆無のよう。
布美枝さんも、安来での子供時代「ノッポ」「電信柱」と悪ガキにからかわれていた頃を思い出せば少しわかりそうなものなのにね。布美枝さんの子供への目配り、怠慢ではないけれどもあまりに天然過ぎて子供の痛みが視野に入らないじれったさは、ちょっと辛いものがある。今週はどアタマから、大人視聴者でも、布美枝さんより藍子ちゃんの身になって見るような構成になっていますからね。
布美枝役松下さんは、以前インタヴューでも「子供とどう接していいかわからないほうなので、子役さんとすぐ仲良くなってなつかれる向井(理)さんにちょっとジェラシー」と語っておられた通り、実年齢や未婚であることを別にしても“いかにも母親らしい風情”を漂わせる演技は不得手のようです。新婚貧乏時代、素人アシ時代の、いちばん主要にからむ相手が子供さんでない頃はそれなりにはまっていましたから。髪を横まとめから後ろまとめのワンテールにしたり、リボンを紺ドットに変えたり、眉も娘時代から徐々に細くしたり、ヘアメイクさんもがんばっているんですけどね。
松下さん、女優さんだけど、持ち前キャラがオットコマエなんだろうな。想像ですけど、いつか実生活でお子さんをもうけられても、こまごま世話を焼いてお小言したりするタイプのお母さんではなく、スポーツも音楽も一緒に汗かいて学んで教え、生き方の指針はクチじゃなく背中で見せるみたいな“お父さん的”なお母さんになるのではないでしょうか。これは悪いことじゃない。女優一代!という大物さんには、外見ははんなり色っぽくても、セクシーむんむんでも、血中オトコ濃度のほうが濃厚な人、多いですからね。
家庭訪問で「学校が居心地悪そう」と心配していた担任の畑野先生(堀内敬子さん)にご披露するためかのように、偶然繰り広げられたしげるお父さんの締切り前修羅場は、菅ちゃん(柄本佑さん)がわざわざ廊下に出てきてぶっ倒れたのを合図に、目覚ましは鳴る、「来るぞ!」と仕事に集中してる振りする、「落ちるーー!」と編集者は背後霊になる、イトツじいちゃん(風間杜夫さん)は美人編集者目当てに一張羅にネクタイで覗きに来る(←空振り)、「あーなたッ、掃除の途中!」とイカルばあちゃん(竹下景子さん)も追ってくる、全員期せずして仕事部屋に集結して、戻れば喜子ちゃん(松本春姫さん)がアダルト誌広げてる…と、いちいちギャグ漫画のシークエンスっぽかったですな。
「あーー奥さんの顔も点描画に見えてきた」で、ワンカット、CGでいいから点描画の布美枝さんポートレートが、実写布美枝さんとダブってインサートされれば完璧でした。