安来から出張の弟・貴司さん(星野源さん)がミシンのメンテしてくれたときには身頃だけ出来て吊るされていた、布美枝お母さん(松下奈緒さん)お手製のちょうちん袖ブラウス、藍子ちゃん(菊池和澄さん)のぶんも、喜子ちゃん(松本春姫さん)のぶんも完成して、お揃いで富士山ピクニックに着て行けたようです(@『ゲゲゲの女房』)。
花火のような、風車のようなピンクと淡ブルーの花柄。あどけない幼女にしか着こなせない、大人なら枕カバーとか、せいぜいパジャマ、浴衣にしかできない柄ゆきです。お母さんの手づくりのおニューを姉妹おそろで着て、日頃忙しいお父さんも一緒に、休日に車で遠出。電気が来てなくて暗闇にローソクでも、夕食がおにぎりに缶詰でも、最高にワクワク楽しい時間なんですよねえ。
ささやかな非日常が、飛びきり楽しく心はずむ体験だった。子供が子供であることの幸せってこういうものでしたね。おカネもブランドも要らなかった。大人になったいまは戻れないけれど、昔そんなこともあった懐かしい気分を、繊細な和澄さんと天真爛漫な春姫さんが実に達者に表現していると思う。
自薦他薦数ある候補者の中から選ばれた優秀子役さんと言っても、まだ自分の演技の引き出しをあれかこれかと選んで出し入れなんかはできない年頃だと思うので、これは“ドンピシャの表情”を“引き出した”演出スタッフの勝利ですね。
特に、小学校4年生、満9歳という、微妙な年頃の“聞き分けいい子ちゃんなだけではない”“さりとて、しょっちゅうキレる問題児でもない”ところを表現した和澄さんは偉いですね。第1週、幼年布美枝さんをも演じた和澄さん、ちょっこし引っ込み思案?なところは一緒だけれど、地方の古い商家育ちの布美枝に比べ、藍子ちゃんのほうは平和日本で飛ぶ鳥落とす勢いの有名人気漫画家の娘、世間からはいわれもなく“おカネ持ち”と好奇とやっかみの目で見られ、家では「お姉ちゃんなんだから」とストレスの多い立場。クラスメートの中でも、“水木しげる”にあまり触れないでいてくれる智美ちゃんぐらいしか気を許せる友達がいないようで、幼時布美枝よりもかなり窮屈な小学生ライフだと思われるのですが、そこらへんのモヤッと加減、“幸せなような、そうでもないような”が、ひしひしと伝わってくる。家族ドラマや学校ものでセリフの多い役を振られる子役さんというと、とかく必要以上に目から鼻に抜けたタイプが多いけれど、和澄さんは自然体、というか自然体“感”が表情の一瞬一瞬にあっていいですね。
それにしても、年の近い女の子ふたりにおそろの洋服を手製するお母さんは気をつかうだろうなあ。どっちが後回しになってもいけない。ほぼ同時に仕上がって、よーいドンで一緒に試着させてあげないと。下の子は「お姉ちゃんばっかり先に新品」と思うだろうし、上のは上ので「妹は甘えさせてもらえていいな、私にはしっかりしなさいとか、我慢ばっかり」とひがみそう。食い物の恨みは一生忘れないと言いますが、女の子の場合、着飾るものの恨みも同じくらいあとを引きますからね。おおコワ。