イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

ドキが胸ムネ

2010-07-23 15:30:04 | 四季折々

北国でも7月に入ると楽しみは夏物のマークダウンです。先日、久しぶりにショッピングモールで、Tシャツを3枚ゲットして来ました。

…しかし、「今日は気晴らしに何か買っちゃうかっ!」と、所謂ひとつの“自分にご褒美”モード突入したときに、なぜか真っ先に飛びついてしまうのがTシャツ、という購買偏向がこの78年続いているために、そろそろ収納がヤバいことになっているのですが、北国の夏、セールも、着られる日数も短いですからねー。いま買わんでどうする。というわけで、当地の場合、“夏が短い、暑い日が少ない”のが、月河の様な考え無し消費者の消費行動をナチュラルにテコ入れしている部分は大きいと思います。

でね、こういうのが前から欲しかった、臙脂(えんじ)色と、孔雀グリーンと、あとチャコールにデスでゴスなプリントのやつを3枚買ったのですが、帰って着てみるとなんかもひとつ物足りないのね。

どこが物足りないのかずっと考えていて、昨日、電車の中の、女子大生風の集団を見ていてふと気がついたんですよ。

いまのTシャツって、ある程度、かなり、胸があって初めて絵になるように設計されてるのね。

…………………

90年代の、だぼんとアバウトな、体型を表沙汰にしない仕立てのTシャツだとかえって有利だったんですけどね。デスパレートに“胸の無い星人”の月河としては。

…それでも夏になればTシャツ熱が一定期間、必ず襲う。着て格好がつくかつかないかなんてどうでもいいのです。夏だから、たった1ヶ月少々の夏だからこそ、夏しか着られないTシャツを買う。

かくして収納がどんどんますますヤバくなっていくのでした。

『ゲゲゲの女房』村井家のように、裏の方にちょっこし空きスペースでもあるといいのですけどねー。今度は大蔵省からクレームついたりしないかな。『大改造ビフォーアフター』並みにすっきりしました村井家。ついでに冷蔵庫や炊飯器など、昭和40年代の日本の家庭らしいしつらえにもやっとなってきましたぞ。

それでもお勝手には新婚当初からの、布美枝さん(松下奈緒さん)手作りなのだろう青白レース編みのお買い物バッグがかけてあり、卓袱台で藍子ちゃん(篠川桃音さん)がお父ちゃんの漫画を読む居間にはしげるさん直筆の一反木綿の額が。

仕事の合間に好きなだけ珈琲を淹れ、徹夜制作の夜食に蕎麦、洋食、中華と好みの店屋物を頼める家計になっても、「幸洋軒の餃子は小いさいでいけん、まるまると太ってキャベツがたっぷり入っとったほうが」と布美枝さんの手作りをリクエストするしげる(向井理さん)。増築した仕事場でもしげるデスクサイドには結婚一周年の布美枝さんからのプレゼントの手作りペン立てが稼働中だし、やっぱりこの夫婦はいいですね。

昨日(2日)の放送で、「ワタシではお役に立てませんか?」と俄かに乗りだしてきた兄嫁佐知子さん(愛華みれさん)、経理の心得があるのをいいことに、村井家&デビュー浅い水木プロダクションに容喙して来たらウザいな…と思っていたら、結構使えるキビキビさんで、身重の義妹布美枝にも気遣いを忘れない、働き者のいいお義姉さんでした。アップのシーンがやっと来たと思ったら「お役に立てまセンカ!?」の目剥き見得切り顔で、元・宝塚歌劇団花組トップスターさんの愛華さんちょっこし気の毒かなという気もしましたが、歴代の同組の中でもかわいらしさや愛嬌をずっと持ってトップ張ってくれた愛華さんが演じるなら、性悪な人や、こすっからい人であるわけがないかな。

こんだけ大胆に増改築するなら、ローンのほうはもう繰り上げ完済ってことか。富田書房から受け取った手形が唯一の収入源だった頃、えらくにょわにょわ悩ましてくれた不動産屋さん(田中要次さん)のリアクションも見たかったけどね。

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辛口を辛口で

2010-07-22 23:18:08 | 朝ドラマ

昨日(21日)は、東京以西ほどではありませんが当地もスーパー蒸し暑い一日でした。湿度が高いと暑いは暑くてもノドカラッカラという感じにはならないのですけれど、北国の真夏日、貴重ですしね。8月に入ってズドンと冷夏になっちゃった年もある。ここは逃さず、一生懸命汗かいて、泡モノフレンドリーな体調の下地を作って帰宅、寄り道して21日リリースのKIRIN本格〈辛口麦〉を購入、試してみました

……これは、ない。月河としてはずばり、きっぱりとことん、目いっぱいない。

クチに含んだファーストタッチ、ノドを通過するときの刺激感はまずまずなんですが、通過し終わるか終わらないかのところで来る後クチ(後“味”というより、クチ触り、口内触感ぐらいの意味)、どこが“辛口”?ってくらい甘いんですよ。

もうビール系とすら言えない、炭酸甘酸っぱ清涼飲料水にアルコールオンしたみたい。

SAPPORO麦とホップや、リニューアル後のAsahiクリアアサヒに感じるネバ感、重た感とはちょっと違ったベクトルの、でもかなり厳然とお邪魔な“サッパリしなさ”です。暑いときにガーッといってスカーッとする、という世界を、はなから目指してない感じもする。

炭酸由来の舌ピリ感は確かにしっかりあるので、これを以て〈辛口〉を自称したいのかしら。ラガーKIRINにしてはずいぶん“辛口”という概念をナメたものです。“本格”なる冠語も、こうなると皮肉。

昨年春ごろから、新ジャンルが妙に(健康機能系を除いて)コク志向、“重厚”“引っかかり”に軸足を移してきた、これは極北かもしれません。期待の新顔がこれなら、KIRINホップの真実のほうを残してほしかったところ。後くちが甘みや酸味でなく、苦み優勢で残るぶん、爽快さがありましたから。

新ラベルへの期待は、SAPPOROクリーミーホワイトに持ち越しますか。この春、近畿圏限定でリリースされ、好評だったらしく待望の全国発売。でも922日だそうです。夏、終わってるけど。KIRINホップの真実も昨年のこの時期リリースで、いま退場しつつあるわけだけど。大丈夫か。

9月リリースと言えば、『ゲゲゲの女房』オリジナル・サウンドトラック2nd915日リリース決定とのこと。筆まめブロガー谷口(やぐち)統括Pも、公式サイト内スタッフブログ19日付けのエントリで「朝ドラのサントラで第2集が出るのは、朝ドラ史上はじめてとのことです。快挙だ!」と喜んでおられますが、この頃にはドラマも最終週に近づいているのですね。しげる(向井理さん)布美枝さん(松下奈緒さん)夫妻は何歳ぐらいになっているのかしら。

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何か可笑しいですか

2010-07-21 16:05:13 | 朝ドラマ

“一反木綿(もめん)”(@『ゲゲゲの女房』<『ゲゲゲの鬼太郎』)ってどこのローカルの、どんな由来で誕生した妖怪か寡聞にして未知ですが、“布”“反物”に抱く日本人のリスペクト、特別な神聖視的視点が感じられて興趣尽きないですね。なにしろ日本史における最古の国税=律令制による租庸調の“調”は、絹で納税する“調絹(ちょうきぬ)”と、絹以外の布で納める“調布(ちょうふ)”だったというくらい。純白の木綿には、“死者”“納棺”“お清め”“弔い”のイメージも重なります。

…それを図像化、ヴィジュアル化した水木しげるさんが、他ならぬ東京都“調布市”のヌシ的住人だというのもおもしろい。

 城西映画船山P(風間トオルさん)から『墓場の鬼太郎』映像化のオファーを受け「お任せします、映画ではなく(長く稼げる)テレビで」と承諾したしげる(向井理さん)と布美枝さん(松下奈緒さん)、船山の提案が、まだアニメではなく実写映画ですから、「(『三匹のこぶた』の)ブーフーウーみたいに、役者さんが鬼太郎の人形の中に入るんでしょうか」「一反木綿はどげするのかな、フンドシでも飛ばすのか」「フンドシですか」と言われちゃ、茶の間の一反木綿も真っ赤になって怒るわけです(20日放送)。

「オレ、フンドシじゃないし!」みたいな。

夜の暗闇をひらひら飛ぶ白い布のイメージを超自然視、妖怪視する視点は、日本の土俗社会に伝統的にあったのではないかと思います。布って、怖いですもんね。人の怨念を宿してそうで。

ドラマ中の時制は昭和41年春になっていますから、もうTVでは地方でも『鉄腕アトム』のアニメが視聴済みだったし、この前の年ぐらいには映画館で『風のフジ丸』『狼少年ケン』が観られたはず。確かカラー作品でした。『鬼太郎』に「ピーンと来た、これはイケる」と反応した船山さんが“アニメ”を切り出さないのは、やはり昭和41年時点でのコストパフォーマンスとスタッフ集めの問題なのかもしれませんね。

とりあえず19日(月)からの週は、柄本明さんジュニア=柄本佑さん扮する菅井のどヘタ押しかけ干瓢(かんぴょう)アシが席捲。

だって本当に、掛け値なしヘタなのな。

ゼタ新人賞の看板屋出身=倉田(緒方洪庵で本物ゼノの窪田正孝さん)、お堂境内でしげるみずからスカウトした失業貸本漫画家=小峰(オトコマエで不毛地帯息子でチェイスな斎藤工さん)と、態度、語り口、風貌、それぞれのベクトルで濃厚なオトコたちがなぜか村井家に一挙集結しちゃって、プロダクション化で郁子さん(桜田聖子さん)に「奥さんが経理を担当されますか、簿記の知識はお持ちカシラ?」と攻勢かけられて、“どうしよう、役に立つこと何もできない、私の居場所は…”と戸惑い気味な布美枝さんの心理がじわっと描かれていました。

でも第2子妊娠。こればっかりは雇われじゃ代われないからねー。貧乏を脱出、夫の仕事面ではわかりやすく日の目をみる場所に出た、これからが夫婦としての本当の正念場です。頑張れ布美枝。

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「よし、女装で勝負だ!」

2010-07-17 19:29:53 | ニュース

参院選の与党過半数割れや、ねじれ国会になって法案通過・政策の遅滞が起こりそうな見通しよりも、IMFが日本に消費税率上げを提言」ってニュースは直球で来ましたね。

IMF(国際通貨基金)。中学の社会科で暗記しましたねぇ。世界保健機関。国際労働機関。北大西洋条約機構。関税と貿易に関する一般協定。

小室哲哉さんサウンド全盛の頃、TRFなんてのもいましたっけ。小文字だったかな。trf

……それはともかく、IMFって、個別の国の財政運営にもバリバリ容喙するんですね。ギリシャの財政破綻とそのもたらした混乱が、よほどトラウマになっていると見える。

 とにかく庶民から血税搾り上げるだけ搾り上げて無駄遣い放題お手のものの日本の経済官僚が、税率引き上げのアリバイ作り用に、IMFの偉い人に飲まして抱かして握らして言わせてるような気がしないでもないですが、本来、日本の政治家が、日本と日本国民のために考えて施行すべき日本の政策について、国際機関から堂々とダメ出しめいたことを言われるまでになると、つくづく“日本も落ちるところまで落ちたな”と身にしみます。

 さてとっ、上り坂日本が見たいなら『ゲゲゲの女房』です。漫画出版界関係者たちだけではなく、地元商店街の喫茶店“再会”マスター(広戸聡さん)も、質屋ご主人(徳井優さん)も、おなじみすずらん商店街かしまし…じゃなくてキャンディーズ・女将3人衆(東てる美さん棟里佳さん尾上紫さん)も、村井夫婦に優しかったですね。

 14日(水)放送で、しげる(向井理さん)が腐心する『テレビくん』の作画の資料にと、酷暑の中商店街を回って古雑誌を集める布美枝さん(松下奈緒さん)に、寡黙なマスターが「たまにはコーヒーも飲みに来て下さい」とお冷やを差し出す場面が特に良かった。ここのマスター、しげるが紙芝居の音松親方(上條恒彦さん)に、ギリギリコーヒー一杯にケーキ一個だけおごったときも、突然上京したチヨちゃん(平岩紙さん)に布美枝さんが見栄張ったときも見ているんですよね。

とりわけしげるが慣れない少女漫画(←木下ほうかさん扮する春田の嫌味注文)の資料探しにコーヒー一杯で粘って雑誌読み倒した挙句、「使える!」とページ破って飛び出したのも見ていますから、奥さんが「古雑誌をあるだけぜんぶ」と申し出たときに“旦那の資料だな”と訊かずともピンと来たはずです。“たまには”とアタマに付ける辺り、頻繁な喫茶店通いは厳しい家計なのを、ちゃんと見越して言っている。

質屋ご主人などは、汗だくで自転車に古雑誌を積んで運ぶ奥さんのほうから「こんにちは!」と挨拶してくれただけで嬉しかったんじゃないでしょうか。“質屋と顔馴染み”“挨拶交わす仲”ってのは、商店主仲間同士ならともかく、それ以外の一般市民としては近隣の人にあまり見られたくない、知られたくないことだと思う。質屋さんって、“付き合いあるのに愛想良く挨拶してはもらえない”状態に慣れてるから、一層漫画家先生の奥さんの気取りのなさが好感持てたんじゃないかと思います。

ご主人が布美枝さんと直に対面したのは、音松さんが来なかったかとしげるとともに尋ねに来たときだけのような気がしますが、藍子ちゃんがお腹にいるとき、布美枝さんからしげるに申し出て、嫁入りのとき持って来たお母さん手縫いの着物を質入れしていますからね。「これはいい物だね、戦前のいい反物を使ってる(←戦前は布美枝実家は呉服屋です)」「奥さん泣いてるんじゃないの?村井さんなら流したりしないよね」と冗談混じりに言っていたご主人。布美枝さんが相当の家の出の娘さんなのだろうこともわかっている。しげると話すときも、布美枝さんにも最初からタメグチですが、しげるの、変わり者だが基本、正直な人間性や、布美枝さんの(恐らくは実家より大幅にレベルダウンした結婚生活なのだろうにめげない、卑屈にならない)明るさにリスペクトが感じられるから、何かイヤじゃないんですよね。かえって“この人が画面に出てきたらきっと悪いようにはならない”という安心感がある。

今日(17日)の放送で、すっかりしぼんだ貧乏神(片桐仁さん)が名残惜しそうに(?)金色の霧となって消え去った村井家、懐かしい質草もリヤカーで受け出したし(←ほとんど夜逃げ級の物量!)、質屋ご主人の出番はもうないのかな。ドラマ時制は昭和も40年代、無担保のサラリーマン金融の時代になって、質屋さんも商売替えかしら。それともリサイクルショップとしてしぶとく営業続行、水木プロにいろいろ格安機材提供したりするかな。しげるも布美枝さんも贅沢グセや虚栄心が無いし、戦前・戦時中を知る世代なので、中古で足りるモノは中古で済ませそうですしね。

今日もうひとつ特筆すべきは、しげるの雄玄社漫画賞授賞式に駆けつけてくれた深沢(村上弘明さん)と戌井さん(梶原善さん)に対する豊川(眞島秀和さん)の丁重な対応が気持ち良かった。「今日の喜びを、ぜひお2人と分かち合いたいと思っていました」…大手出版社のメジャー誌編集長が零細版元を見下ろすようなふしはいっさいなく、“お2人の尽力のおかげで、水木さんの漫画を知り読み続けることができました、道を作ってくれてありがとう”と、業界後輩から先輩苦労人たちへの感謝と敬意があったと思います。

スカイライダー村上さんと、ウルトラマンコスモス杉浦太陽さんが(おもに後者からの勝手な仮想敵視で)睨み合うのも可笑しかった。マンの圧倒的位(くらい)負け。内心↑↑↑↑タイトルのように思ってたりして。

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電話に出んわ

2010-07-15 20:17:39 | 朝ドラマ

久々に盛大にやらかしてしまいました。腰痛ビリリ

SAPPORO生搾り24缶入りケースを宅配頼んでおいたら、届いたときアレ?なぜ二個口?と思ったのです。遠方の知人経由で、なんといま漁期真っ盛りの北海シマエビがはるばるオホーツクの海からクール宅急便でやってきて、偶然酒類スーパーからの生搾りケース自宅配送と“同じ便”になったのでした。

これは「カモがねぎしょってナベくわえて飛んで来たに等しいではないか!」と躍り上がった時点で、悲劇の幕は既に開いていた(愚)。

宅配のたくましいお兄さんが「(玄関の)中まで運びましょうか?重いすよ」と親切で言ってくれてるのに、「1ケースなら持てます、それ(←シマエビの発泡スチロール)も上に載せてください」せーのっ!と受け取った瞬間は、嬉しさでなんともなかったのですが、台所入口の床まで数歩歩いてドン置いたら………

………置いてかがんだ態勢のまま、伸びない伸びない(悲)。

こういうときは高齢者と同居の強み、それ系のグッズは家捜しすれば必ずひとつやふたつある。生ゴムの腰痛バンド二本立てで腰椎手巻き寿司状態にし日中はしのげましたが、やはり鎮痛剤のお世話になることに。

 しかーし!問題はそんなことではなぁい。

鎮痛剤を服んじゃうと、アルコールが飲めないのだ(最悲)。

 生搾りも届いた、キンキンに冷やした、あまつさえ北海シマエビもあるのに、いまいましい鎮痛剤野郎のおかげで手が出せないという。

いままで241ケースなら余裕で、家の端から端まで運べたのに。最後に食べたのがいつか思い出せない到来モノ・北海シマエビのおかげでアドレナリンが逆流し、ヘンなところにヘンなチカラが入ってしまったに違いない。かがまった状態から伸びなくなってしまったということはまさか、スタイル的にエビさんの呪いではあるまいね。「ノーリスクでオレを食えると思うなよ」みたいな。

……治ったらアタマから食ってやろっと。

さてとっ、気をとりなおして本日の村井家はどうなったでしょうか(@『ゲゲゲの女房』)。大手・雄玄社の豊川(眞島秀和さん)が惚れ込んで、自分が最年少編集長になった『少年ランド』に新作をとオファーくれてから一気に昇り調子になってきました。

昨日~今日(1415日)の放送回は、少し理屈っぽかったけれど、いい漫画、面白い漫画を世に送り出し、多くの人に味読され、楽しまれ、愛されて大きな風を起こすべく、陰ながら努力していた草分け出版人たちの存在を描いた好エピだったと思います。

無名の貸本漫画家時代からしげる(向井理さん)の才能を高く買い、結核が癒えるや新雑誌を創刊して、紛失した分の原稿料まで払ってくれた深沢(村上弘明さん)、自分ももともとは漫画家なのに水木漫画の熱烈なファンとして、零細出版社を興し資金難の中後援を続けてくれた戌井(梶原善さん)とその妻早苗さん(馬渕英俚可さん)、みんな「大手で書かせてもらえてよかったね」と我がことのように喜んでくれて、やっかみとか僻みとか、“おこぼれ、還元カモン”といったさもしい根性が微塵もないのが気持ちいい。戌井さんなんか、「ウチの連作は後回しでいいから、少年ランドでの鬼太郎に集中して下さい」としげるから頼みもしないのに提案してくれました。なんだか、皆“戦友”のようなのです。

今日登場した中では、深沢さん秘書兼『ゼタ』営業の郁子さん(桜田聖子さん)だけが「腑に落ちません」と社長に懸念を表明しました。「『墓場鬼太郎』は社長が手がけていたのに、大手に横取りされたよう」「稿料桁違いの大手で書かれては、もうウチで書いてくれなくなるのでは」「新人を育てても、人気が出た頃に大手にさらわれるのではウチには何も残らず赤字のまま」と、お行儀こそいいがかなりきつい言葉で食ってかかったのに、深沢さんは「水木さんはそんな(高い稿料目当てにウチへの寄稿を断るような)人じゃないよ」「たくさんの人に読んでもらえるのは素晴らしいことじゃないか、優先すべきは、いい漫画を出すことだ」とさわやかヒーロースマイル。

郁子さんは元・大手商社重役秘書ですから、商社マンたちの“前年比アップ”“増収増益”“ライバル社の商材奪った、奪られた”“業界首位の○○社に追いつけ、追い越せ”というたぐいの話題を年中耳にしていたはずです。

自分では何もクリエイトせず、誰かが作ったモノをアッチからコッチへ動かして口銭、手間賃とり、サヤ載せて稼いで、サヤの大きさを競うのが商社の仕事。そんな地合いの中でキャリアを積んできた郁子さんには、「赤字でもいい、大事なのはいいモノに日の目を見せること」という深沢さんの信念は、納得できなくて当たり前。

“いいモノ”と言っても、漫画は大量生産品ではなく、作品です。おもしろい漫画、受ける漫画が、初めから完成品で店先に正札つけて陳列してあるわけではない。

結局は“人育て”に尽きるのだということを、深沢さんも戌井さんも、豊川さんもわかっている。みずから描く、クリエイトするわけではない自分たち編集・出版者は、とにかくいい漫画を描ける人、描く才能のある人を見出して、発表する場と評価と、報酬を与えて、次にもっといい漫画を描ける状況を作ってあげるのが仕事。

ドラマ時制は昭和40年。約50年後の現在も、媒体こそ紙のコミック誌からゲームソフト、オンライン動画、iPadへと変遷しましたが、クリエイターとエディター、パブリッシャーの関係は基本、変わっていないのだろうと思うし、思いたい。

ただ、当時は漫画誌そのものが無人の野を行く新興産業で、すべてが生々しく若々しく、初夏の緑の草原のように、ピュアにキラキラハツラツとしていただろうと思う。最終的には営利が目的、“恐怖の人気投票”(←byイタチ)が実態だったにしても、基盤の“人育て”に血がかよい、人の呼吸や拍動のリズムで丁々発止していたような気がします。劇中の戌井さんや深沢さんの、現代視点からは「ほんとかぁ?あり得ない」と思うようなフトコロの広さ深さや人のよさ、遅咲きの描き手しげるを見守る視線の温かさ、NHKの朝ドラマだからこそとわかっていても「これもアリ、でいいだろう」と思ってしまうのですね。

今日はアバンタイトルで豊川から「電話を引く予定はありませんか?」とソフトにリクエストされた布美枝さん(松下奈緒さん)が、見送り後、家に戻って来たときの「電話かぁ…」となんとなく微笑みになるリアクションがよかったですね。“また出費、どげしよう”という困惑ではなく、“大手の人がお父ちゃんの漫画を買ってくれて、これから頻繁に仕事を頼みたい気満々なんだわ”という誇らしさが勝っている。

もとより豊川も、“我が社の稿料が振り込まれれば、電話敷設ぐらいの余裕はすぐできるし、仕事も増えるのだからお釣りが来ますよ”と奥さんを力づけてあげたい気持ちがあるからこそのリクエスト。貧乏漬けの売れない作家を、上から札束で顔引っぱたくのではなく、“才能のある人に、もっといい環境で描かせてあげたい、あげられてうれしい”という、大手編集者としての度量と自負が豊川にあるからいいシーンになりました。

貸本専業時代は、仕事の受注はもっぱらしげるみずからゲタをすり減らしての注文取り、完成原稿もみずからか、布美枝がお使いで版元に届けていました。依頼に足を運んでくれた戌井も、復帰後の深沢も、「駅から遠くて不便」なんてことはクチの端にものぼせませんでした。“遠い”を託つ発言をしたのは実は豊川が初めてなのですが、布美枝さんの立場になって聞いて、少しもカチンと来ないのは、彼のしげるへの敬意と、一生懸命にかつ明るく支えるその妻への、人としての思いやりが、ちゃんと感じられるように描写されているからでしょう。

今日のエピは電話が主役でもありましたね。藍子ちゃん(篠川桃音さん)と正座して電話を待つ布美枝さんもだけど、間違い電話への応対、隣で聞いてて「よしっ、冷し中華!」とヒザたたいてスタンバろうとするしげるに抱腹。何なんだ。何しようとしたんだ。“妖怪冷し中華”でも描こうとしたのかな。

昭和40年なら、月河実家は県庁所在地の結構人口密度高いところに住んでいましたが、電話は自宅にはまだなく、長屋方式の社宅の、管理人室からの呼び出しだったような。41年にはもう自宅固定電話があり、幼児月河も一生懸命自宅番号書いて覚えました。

今週に入ってから、劇中曲も新作増えました。猛暑の中の豊川の二度めの来訪場面(12日)でのプチ勇壮な出陣風の曲や、今日の電話待ちシーンでの口笛入りピアノエチュード風の明るい曲など、先月16日リリースただいま月河絶賛ヘビロテ中のオリジナル・サウンドトラックCDに未収録の新曲が、これからも増えそう。サントラ第2弾、やはり期待したいですね。

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