有名なそばは各地にあるが、福井県人はやっぱり越前そばが一番おいしいと思っている。
単に食べ慣れ親しんでいるからではなく、それを証明するエピソードがあるのである。
「越前そば」という名称は、昭和天皇があ福井に来られた際に武生でそばを食べられ
皇居に戻ってからも「あの越前のそば」「あの越前のそば」と何度もおっしゃって
その味を懐かしがられたという事から「越前そば」と呼ぶようになったと言われている。
そんなに昔の事ではないので多分本当の話しであろうと思われ、
越前そばは福井県人の数少ない自慢の一つになっている。
ちなみに越前そばとは「おろしそば」であり、辛み大根おろしとカツオブシをかけて食べるものであり、
今では越前だけではなく、おろしそばとしてお品書きにあがっている所も増えていると思われる。
昭和天皇がそばをめしあがられた店は廃業してしまっていたが、数年前に復活している。
復活とはいっても、その店舗を改装して全然別の人間が経営しているだけであり、
昭和天皇が懐かしがられた味を再現しているかというと微妙ではあるが、
そういうエピソードがスパイスとなって、そこでそばを食べる人間にバイアスを掛ける事になるのである。
もとよりそばというものは毎回味が微妙に違ってくるものであり、
越前(福井県)で打たれて越前そばの流儀(おろしそば」で食すればそれが越前そばとなるのであるが、
お蕎麦屋さん、そばを打つ人にそれぞれこだわりがあり、うんちくを語りだすと話の尽きない人を知っている。
錆鉄人は昭和天皇の話しも聞きかじっただけで、そばにもさほどこだわりを持たないが
福井のそばが一番おいしいと思っているのでもう長い間、福井県外でそばを食べようと思った事がない。
なお、「越前そば」は一般名称であるが、商標登録もされていて
「越前そば」の名称を付けて販売出来るのは越前そばの里さんだけ、という話を聞いたような気がするが定かではない。
郵パックの越前そばを販売しているのがこの越前そばの里さんで
長年郵パックの取扱高日本一を独占しているというのもうんちくの一つである。
という事で本題の「そば打ち」であるが、
福井県だけではないと思われるが「田舎人の密かなたしなみ」としてそば打ちがあり、
ことさら福井県には家庭でそばを打つ人が多く、そば道場なるものも何カ所もあり、
「全日本素人そば打ち名人大会」が福井県で開催されているように福井はそば打ちのメッカなのである?
ちなみに2019年の全日本素人そば打ち名人大会は全国12都道府県15会場402名で予選が開催され、
その予選を勝ち抜いた51名が福井に来て技を競い、2019年のそば打ち名人は石川県の女性の方が選ばれている。
天女さんちの集落ではお寺の報恩講や公民館の祭りでそばをふるまわれていて
有志なり当番がそば打ちを担当するので、大抵の者は上手・下手は別としてそばが打てるのである。
が、それらのそば打ちを行う時の道具はお寺や公民館にあり、
さらに有志が大釜やバーナーを持ち寄って実施されているので、
個人としてそば打ち道具を持っている人は少なく、持っていても滅多にそば打ちを行ってはいないようである。
天女さんちにもそば打ち道具はなく、農家民宿の方がそば打ち体験をしたい時は農楽園で行ってもらっていましたが
上述のように福井はそば処、
自慢の越前そばを農家民宿に来られた方に味わってもらおうと考え、
道具を揃えそば粉を買ってさあやるぞという時に手にけがをしてしまった訳で・・・
まだ左手は「ゴッドハンド」には程遠いのですが、
先日、買ったそば粉が賞味期限を越えてしまう前にそば打ちをしました。
上記のような催し物の場合は1回で500g打ち、大体そば6~7杯分になるのですが
お客様もなく錆鉄人と天女の2人だけなので350gほどで打ちました。
割合は二八そば、つまりそば8割につなぎ2割、
重量は正確に測定しなくても良いと思われますが、水の量が微妙に変わるので5g単位の台秤(アナログ)で正確に測定します。
いよいよそば打ちの開始です。
そば粉とつなぎををこね鉢に入れて、均等にかき混ぜます。
そばは熱を嫌うので(味が落ちる)出来るだけ指先でかき混ぜます。
水は「そば粉+つなぎ」の45%なので350gなら水は157.5g、
台秤をゆすって出来るだけ正確に計量しておきます。
そば粉とつなぎを混ぜ終わったら、水を1/3程度、出来るだけ全体に振りかけて混ぜます。
指先と言っておきながら、手のひらでこするようにして均等に水分を行き渡らせます。
また1/3ほど水をふりかけ、混ぜます。
残った水をふりかけ混ぜていると、だんだんとそば粉が小さな塊になってきます。
こんなのでちゃんと玉になるの?という感じですが、捏ねているとちゃんと玉になってきます。
玉を作る時はへそ出しと言って上におへそが出来るようにこねるのがコツですが、
亀裂がないように捏ねられればさほどこだわる事はないでしょう。
いよいよ「手延べ」
台の上に打ち粉を広げ、そば玉を乗せて手で押しつぶします。
台はベニヤ板を半分に切ったもの、つまり90cm✖90cmです。(経費削減)
続いて延べ棒に巻き付け、手のひらで軽くたたきながら伸ばします。
2~3回回転させたら拡げ、90度方向を変えてまた同じように伸ばします。(適度に打ち粉を撒きながら)
その作業を繰り返して生地の厚さが1~2mmになるまで伸ばします。
あまり伸ばし過ぎると穴が出来たり裂け目が出来るので適度な所で終わります。
それを2つに畳み、さらに3つに畳みます。
まな板の上で駒板を当ててそばを切ります。
台所の包丁は刃が反っているのでうまく切れない部分が出来やすいので、やはりそば切り包丁がベスト
駒板に沿って刃を下したら、包丁を少し傾けて駒板を後退させ、刃を下し・・・を繰り返しながら切ります。
包丁を傾けすぎるとそばが太くなるので、一定の太さ(細さ)になるように切るのがコツですが
不ぞろいも味のうち!
そばは太くて硬いのが通という人もいますが、錆鉄人的には細めで適度な腰のあるそばが好きです。
ある程度切ったら取り分けて切って行きます。
そばは「挽きたて、打ちたて、湯がきたて」がおいしさの三原則
出汁や大根おろし等を準備して・・・
あららっ、茹でる所の写真を撮り忘れました!
出来るだけ大きな鍋でお湯を沸かし、沸騰したらそばを入れます。
一旦温度が下がり、再度沸騰してきたら火力を弱くして吹きこぼれないようにします。
(過料調整が出来ない場合は打ち水を行う)
1分程度茹でたら(茹で加減は好みがあるので、麺を齧ってみたりしながら程度に)
ザルに取って冷水で麺をさらし引き締めます。
という事で・・・
あららっ、カツオブシを掛けるのを忘れていた!
味は?
「自分で打ったそばが一番美味い!」
と日記には書いておこう。