華麗な表現力

2010年03月26日 | 人物 -

橋大輔さん、「世界選手権」の初優勝、おめでとう!  


怪我をして、苦労した時間を克服してから、彼の氷上の“表現力”は群を抜いた。
ある“心根の強さ”みたいなものが感じられて、今まで感じていなかった彼の存在が
突然(より一層)輝きを増して、魅力的に思うようになっていった。


私自身としては・・・・「フィギュアスケート」が、子供の頃から大好きだったので、
ずいぶん前から彼の演技をテレビ観戦してきたのだが・・・・
正確には、モロゾフコーチから離れた理由に、彼の男気を感じ、着実に気になり始めた。
その理由が非常に男らしく、潔く感じられ、「橋大輔」を注目するきっかけになった。
(大変な決断だったことは、離れた後の“彼の落胆ぶり”からも、容易に予想される)

その後の怪我で彼の選手生命が危ぶまれ、余計に応援したい気持ちが芽生えて来ていた。
プロレスラーじゃあるまいし、「膝のじん帯断裂」などという怪我は、大変なことである。
事実、こんな大怪我をして、手術をした後に、現役に復帰したスケーターはいないらしい。
            (それも、こんな短期間の間にだ。驚くべき事実である!)

ひそかに、私はずっと、テレビ中継やニュースで、彼の動向を、常にチェックしていた。
というよりも、「ひそかに、応援し続けてきた」というのが適切かもしれない。
それまでの活躍を観ていたからこそ、「再び復活してほしい」という気持ちが強くなり、
(現役離脱の時に)より一層「応援する姿勢が強くなってしまった」ようだ。


だから、復活してくれたときは、とてもうれしかった。
バンクーバーオリンピックの前後は、特に注目していたのだが・・・・
五輪では(すばらしいことに期待通り)銅メダルを獲得してくれた。
※当時、仕事で地方に滞在していて、リアルに集中して演技を観ることができず、
 周りのスタッフには、かなり「タカハシ話」をしていたものである(笑)。


だから、今回の優勝は、本当に嬉しい。
快挙である。
彼の名前は、歴史に残ることになった。

イタリアのトリノで行われているフィギュアスケートの「世界選手権」!
第3日(現地時間)25日、橋大輔さん(関大大学院)が、
ショートプログラム首位に続いて、フリーでも1位となった。
昨夜は帰宅するなり、ショートプログラムの録画映像にふけり、
深夜から今朝にかけての現地でのフリーの生放送に興じた!

結果として、彼は、「日本男子では初優勝」という快挙!
ショートプログラム「Eye」も、フリー「道」も、楽曲(選曲)と振付が素晴しくて、
彼の長所を(いかんなく)引き出しているように感じた。
指の先まで気を遣った“なめらかな身体の動き”と、華麗な自慢のステップ、
表情も豊かで柔らかく、リズムを刻みながら、身体全体で楽曲の世界を表現していた。
スケーターではなく、エンターティナーのような存在感がある。
本当に、素晴しかったと思う。

そして、何よりも、あのような大怪我からの短時間での復帰は、本当に考えられない。
賞賛する言葉が見つからない。

実際、モロゾフコーチによって引き出され、開花した彼の才能かもしれないが・・・
プログラムの振付などは、今年の方が彼にあっていたというのが、私個人の感想である。
明るく、華やかで、快活なイメージもあり・・・それでいて、美しいジャンプ!
身長の低さなどを感じさせない壮大な表現力! 柔軟な手足に、素晴しいリズム感!
音楽を身体でとらえた滑らかなスケーティングは、海外の硬い演技構成をしている選手を
はるかに飛び越えて、(彼自身が)全く違う次元へ行っている。


フリーでは、これまで誰も成功していない4回転フリップにも果敢に挑戦した。
 (両足着氷で完全成功ではなかったが、手もつかず、転倒もなかったし・・・)
やはり、男気のある精神力の強いスケーターである。

引退など絶対に考えないで、もっともっと競技生活をしてほしい人物である。
まだまだ伸びそうな才能と個性を持っているし、あの華麗なステップと、
素晴しい表現力は、他の人には出せない華やかさである。
今しばらく注目して、密かに追いかけながら、見ていたい人だ。

今回は、彼から“清清しい勇気のようなもの”をもらえた! ありがとう!!
だから、身体は寝不足だが・・・気持ちは晴れやかである。




 今期のショートプログラム「Eye」は、私が大好きなプログラムだ。
 ラテン系の音楽(コパ)に、華麗なステップが、非常に絡み合って、とても素晴しい。
 世界選手権では、表情も、演技も、なめらかで・・・総合的に見事だったと思う。

 たった一つ残念だったのは、トリノのTV映像のスイッチングが気に入らず・・・・
 私は彼の全身が観たいのに、エッジや半身のアップに(すぐ)スイッチされて、
 ものすごく不完全燃焼だった。たとえば、音楽に乗って、全身でリズムを刻んで
 いるような(何気ないけれど)素晴しいテクニックが垣間見えるシーンなどで・・・
 下半身の足元アップが続くと、もう「悔しい~。全身が観たいのに」と思ってしまった!
 同様に、肝心なところで、上半身のアップが続いて、納得のできない映像構成だった。
 基本的には、映像を撮影して世界に発信した(トリノの)スタッフがいて、彼らとの
 感性の違いだけはあるが・・・私は、相対的に演技全体(全身)を観たかったのだった。
 愚痴みたいで恐縮だけど・・・・そういう映像構成に頻繁になってしまったために、
 私個人としては、ほんの少し残念だった。 
 私は、ただ、全身で表現する彼の演技を、満喫したかっただけなのだぁ~。




●世界選手権 2010  SP 「Eye」 (ロシア版+イタリア版)







●世界選手権 2010  FP 「道」 (ロシア版+イタリア版+ドイツ版)







 ※今回の彼の総合得点は、バンクーバーオリンピックの金メダル受賞者よりも
   高い得点だった。

 ※また、バンクーバーオリンピックで、プルシェンコが意義を唱えた現在の採点方法!
  トリプルアクセルを「スーパーダブルアクセル」と解説しているように、採点では
  三回転という価値を評価されていない。選手達のためにも、難易度の高いジャンプは
  それ相当の評価をしていただけるように、世界基準を改定していただきたいと思う。



バンクーバーオリンピックのフリー演技「道」も、最初の4回転が失敗しなければ、
確実に「メダルの色は変わっていた」と言われた。4回転以外は、心のこもった演技で、
ジャンプも素晴しく・・・専門家や世界中の記者に、そう言われた理由は理解できる。
(事実、オリンピックでは、4回転を回避した選手が、金色のメダルを持ち帰った)
だからと言って、4回転を回避するような人ではないのだ、「橋大輔」という人は・・・
世界選手権では、その経緯を受けて、誰もが成し得ていなかった4回転フリップに挑戦!


芯の通った男気と、それに反比例するような優しい滑りが、彼の真骨頂だ。
大怪我からの復活と、これだけの結果・・・・・数々の困難を乗り越えてきた精神力!
完全に、魅せられている私がいる。